悪役もライバルもお断り

おばあ

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悪役もライバルもお断り

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 ええ、そうよ。あなたは?何の御用かしら?

 ……本当に唐突ね……。
 そうね、こことは違う世界の記憶があるわ。その前世というものなのかもね。

 まあ、乙女ゲームとやらの世界なの、ここ?

 で、私がどうしたの?あなたのライバルなの?何のライバル?勉強?部活?

 は?恋?邪魔をするの?悪役?いやよ、面倒くさいわ。あなた一人で頑張りなさいな。

 それであなたは何を目指すの?おうじひ?何の費用?ああ、王子のお妃ね。

 私、恋愛に興味ないの。せっかく魔法がある世界に転生したのだもの魔法使いになるつもりよ。そしてかぼちゃで馬車を作る研究するの。あれ結構難しいと思うのよね。

 え~、ゲームクリアにならないって……。ゲームの世界とやらみたいかもしれないけど私達生きてるでしょう。これ現実よ?
 だから無理にゲームの内容をなぞる必要はないと思うわ。あなたはあなたで好きな人にアプローチすればよいのではないかしら。

 止めはしないわ。私には関係ないもの。

 婚約者じゃないわよ私。だってお茶会に行かなかったもの。

 そう、それ、ちびっこお茶会。いいえ、私が今勝手に命名したの。

 人見知りが激しかったのよ。知らない子ばっかりの所へ行って知らない人に挨拶なんてハードル高すぎて無理だったの。嫌すぎて当日腹痛を起こしたのよね。
 だから王子様にしろ王家の方には一度も会った事はないわ。
 分かったでしょう?無理なのよ。

 今あなたと話せているのはね、あなたから話しかけてきたから。私から知らない人には絶対話しかけないわよ。話しかけられないの。

 丁度いいわよね、どうせ身分が下の者から上の者に話しかけてはいけないんだから。

 ――――ねえ、男爵令嬢?お喋りはもうお終いよ。




■■■■■

 久しぶりに出かけた公園で花壇の花を見ている時だった。

 見た事もない令嬢が声をかけてきた。
 身なりは貴族だけど所作がどうにも貴族らしくはなかった。

 その令嬢を排除しようとする護衛を手振りで制し用件を聞く事にした。
 ただの気まぐれ。面白い事になるかと期待したのだけど。
 
 その令嬢は、いきなりですが、と前置きして前世の記憶があるかと訊いてきた。

 彼女の話によれば、私達が生きているこの世界はゲームの世界で、ゲームの中での彼女は王子と恋仲になり、幼い頃から王子の許婚の私は二人の仲を邪魔する悪役令嬢なのだそうだ。


 私が知っているゲームとは違っていると思った。
 
 私が知っているのは、攻略対象が五、六人居て、ライバルがいた。そのライバルよりも早くミッションクリアしたり、攻略対象の好感度上げていって、一番好感度が高くなったキャラと結婚だったかな。

 あとは、あるウェブサイトの記事で知ったの。人頭馬体の無駄にイケメンな彼氏との恋愛ゲーム。外国人が吃驚していたのを覚えてるわ。


 それはともかく実際の所、私は王家に限らず誰とも婚約していない。両親も兄も姉もそれでいいと言ってくれている。甘やかしてくれる家族最高である。

 そして、私と彼女は同じ学園に通っていない。私は魔法学園、彼女はどうやら貴族学園に通っている。接点は全くない。

 彼女の言う通りここがゲームの世界であろうと私が彼女の恋路を邪魔するのは不可能なのだ。

 どうしてもゲームの内容をなぞりたいらしい彼女は私に悪役令嬢をやらせたくて食い下がろうとしたが、バカバカしいので話を打ち切った。

 未来の王妃の命令を聞けだの頭の中を疑いたくなる事を言い出したので、不審者を排除すべく待っていた護衛に、彼女を家まで送るよう指示をした。


 彼女の家に着いた護衛は家の者に事情を話すはず。
 私が公爵令嬢だと分かっていて自分から話しかけた事、自分の為に悪役になれと迫った事、自分の事を未来の王妃と口にした事。

 特に最後のはダメだわ。まともな親御さんなら放ってはおけない事だわ。
 彼女が何番目かの王子と本当に交際しているかどうかは知らないけど、現在は男爵令嬢に過ぎないのだ。
 王子の誰かが男爵令嬢と婚約したという話も、公爵家か侯爵家のどこかが男爵令嬢を養女にしたという話も聞かないしね。

 
 ――――その後。
 どこぞの男爵家の娘が病気療養の為領地に引っ込んだという噂を聞いた。

 裏を取ったらあの男爵令嬢だった。病気というのも表向きの理由だった。
 まあ、そうでしょう。妄想を口にしたにしてもあれは危険すぎる。

 前世の記憶が出てきてから、身分制度面倒くさいと思っていたけど、この時ばかりは有難いと思ったわ。
 安心してかぼちゃの馬車の研究に打ち込めるもの。
 
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