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作戦失敗
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「ところでお客さん、その黒い袋はなんですか?」
メーターが800円を超えた頃、運転手は沈黙に耐えかね、俺にそう聞いてきた。
うむむ・・・なんと答えるか? まさか「AVです!」とは言えないぞ。
「・・・(人に見られたらまずい)危険物です」
「えぇ!?」
――――キキィィィィィィ!
運転手さんは慌ててブレーキを踏む。そして後部座席に座る俺を、身を乗り出して見てきた。
「ちょ、どういうことです!?」
おっと、どうやら誤解を招いてしまったようだ。訂正せねば。
「大丈夫ですよ。何かあっても俺が(社会的に)死ぬだけで、運転手さんは痛くもかゆくもありませんから」
「死ぬ!? 車内で死なれたら迷惑だよ!」
運転手さんは、震えながら俺に尋ねる。
「ま、まさか爆弾じゃないだろうね!?」
「まあ、俺にとっては(人生を終わらせかねない)爆弾も同然ですけど・・・」
「降りてくれ!」
運転手さんはレバーを引いてドアを開けた。
「そんな危険な仕事は勘弁してくれ! 俺には養っていかなきゃならない妻と娘が居るんだ! こんなことに巻き込まれてクビになるわけにはいかないんだよ!」
「だから違いますって・・・」
話がどうしてもかみ合わない。うーむ・・・どうしたものか?
いっそ、中身を見せてしまうか? ・・・いや、いくら見ず知らずの相手とは言え、自分の性癖をさらけ出すのはちょっとなあ。
タクシーに取り付けられたカーナビで現在位置を確認してみる。どうやら家まで残り800メートル。この距離なら、歩いていても見つからないか?
「なあ! 早く800円払って降りてくれよ!」
運転手さんは俺にそう迫る。わかったわかった。わかったよ。降りれば良いんでしょ。
俺は1000円札を運転手さんに渡した。そして、お釣りも受け取らずに車を降りる。
「ちょっとお釣りは!?」
運転手さんは、車を出て歩き出そうとする俺に尋ねた。ふっ、そんなこと言わせんなよ。
「迷惑を掛けたわびに、釣りはくれてやるさ。奥さんと娘さんと、それで何か良い物でも食べな」
「200円でか!?」
200円でだ。悪いが、AVを買ったせいで万札をくれてやる余裕はないもんでな。まあ、3人でカップラーメンくらいは食えるだろ。
――――キキィィィィィィ!
俺が降りたあとすぐ、タクシーは逃げるように走り去っていった。やれやれ、あの”勘違いしい”の運転手さんの家庭が、ずっと幸せである事を願っているぜ。アディオス!
<<<< >>>>
タクシーから降りて、俺は800メートルの道のりを隠れながら進んだ。途中で、買い物に行く母さんとすれ違ったが、なんとかバレずに済んだ。
そしてついに、俺は家の前に到着した。しかし、まだ油断はならない。最後まで気を抜かない。それが重要だ。
――――キョロキョロ
念入りに辺りを見回す。よし、敵はいないな。ここまで来たらもう、隠れたりなんかしないぞ。一気に家の中に飛び込んでやる!
「・・・ふぅ・・・・・・うおおおおおおおおおおおお!」
俺は叫びながら、家の玄関に突進した。
あと5歩・・・4歩・・・3歩・・・2歩・・・1歩!
「たっだいまあああああ!」
俺は扉を開け、家の中に飛び込んだ。
やった・・・ついに俺はやり遂げたのだ・・・人生初の最高難度ミッションを。AVの購入という、人生を賭けた挑戦を。
ああ・・・家の中だというのに気のせいか、小鳥たちが祝福のコーラスを歌っているように聞こえる。
――――ピーヒョロヒョロ・・・ピーヒョロヒョロ・・・
ああ・・・家の中だというのに、そんな鳴き声が・・・
――――ピピッ・・・ピーヒョロ・・・
・・・ちょっと待て。なんかほんとに聞こえてないか?
俺は慌てて辺りを見まわす。
「・・・は?」
俺の目に映る光景、それは近代家屋の素晴らしい間取りではなかった。そこにあったのは、これでもかと言うほどの”自然”だった。
いやいや、おかしいだろ。俺は確かに家の中に飛び込んだはずだ。なのになんで、こんな森の中に居るんだ? なんで外に居るんだ? というか、ここはどこだ?
「・・・あの」
「ん?」
俺はようやく、目の前にいる少女に気がついた。その少女はとても小柄で、声を掛けられるまで気がつかなかったのだ。
そして彼女は、見たこともないような服を着ていた。・・・いや、正確に言えば彼女の服装には見覚えがある。彼女の服装は・・・そう、マンガとかに出てくるローブの様なものを着た魔法使いそのものだった。
「・・・コスプレ?」
状況がつかめず、俺はそんなことを尋ねる。まさか、コスプレ会場にでもきちまったのか? じゃなきゃ、こんな◯リー・ポッターに出てくるような魔法使いの格好をしているやつがいるわけない。
しかし、彼女の答えは俺の斜め上、そしてある意味ではテンプレートな物だった。
「僕はペルペチカ・テラフォート。この世界を救ってもらうために、君を異世界から転送した魔法使いです」
メーターが800円を超えた頃、運転手は沈黙に耐えかね、俺にそう聞いてきた。
うむむ・・・なんと答えるか? まさか「AVです!」とは言えないぞ。
「・・・(人に見られたらまずい)危険物です」
「えぇ!?」
――――キキィィィィィィ!
運転手さんは慌ててブレーキを踏む。そして後部座席に座る俺を、身を乗り出して見てきた。
「ちょ、どういうことです!?」
おっと、どうやら誤解を招いてしまったようだ。訂正せねば。
「大丈夫ですよ。何かあっても俺が(社会的に)死ぬだけで、運転手さんは痛くもかゆくもありませんから」
「死ぬ!? 車内で死なれたら迷惑だよ!」
運転手さんは、震えながら俺に尋ねる。
「ま、まさか爆弾じゃないだろうね!?」
「まあ、俺にとっては(人生を終わらせかねない)爆弾も同然ですけど・・・」
「降りてくれ!」
運転手さんはレバーを引いてドアを開けた。
「そんな危険な仕事は勘弁してくれ! 俺には養っていかなきゃならない妻と娘が居るんだ! こんなことに巻き込まれてクビになるわけにはいかないんだよ!」
「だから違いますって・・・」
話がどうしてもかみ合わない。うーむ・・・どうしたものか?
いっそ、中身を見せてしまうか? ・・・いや、いくら見ず知らずの相手とは言え、自分の性癖をさらけ出すのはちょっとなあ。
タクシーに取り付けられたカーナビで現在位置を確認してみる。どうやら家まで残り800メートル。この距離なら、歩いていても見つからないか?
「なあ! 早く800円払って降りてくれよ!」
運転手さんは俺にそう迫る。わかったわかった。わかったよ。降りれば良いんでしょ。
俺は1000円札を運転手さんに渡した。そして、お釣りも受け取らずに車を降りる。
「ちょっとお釣りは!?」
運転手さんは、車を出て歩き出そうとする俺に尋ねた。ふっ、そんなこと言わせんなよ。
「迷惑を掛けたわびに、釣りはくれてやるさ。奥さんと娘さんと、それで何か良い物でも食べな」
「200円でか!?」
200円でだ。悪いが、AVを買ったせいで万札をくれてやる余裕はないもんでな。まあ、3人でカップラーメンくらいは食えるだろ。
――――キキィィィィィィ!
俺が降りたあとすぐ、タクシーは逃げるように走り去っていった。やれやれ、あの”勘違いしい”の運転手さんの家庭が、ずっと幸せである事を願っているぜ。アディオス!
<<<< >>>>
タクシーから降りて、俺は800メートルの道のりを隠れながら進んだ。途中で、買い物に行く母さんとすれ違ったが、なんとかバレずに済んだ。
そしてついに、俺は家の前に到着した。しかし、まだ油断はならない。最後まで気を抜かない。それが重要だ。
――――キョロキョロ
念入りに辺りを見回す。よし、敵はいないな。ここまで来たらもう、隠れたりなんかしないぞ。一気に家の中に飛び込んでやる!
「・・・ふぅ・・・・・・うおおおおおおおおおおおお!」
俺は叫びながら、家の玄関に突進した。
あと5歩・・・4歩・・・3歩・・・2歩・・・1歩!
「たっだいまあああああ!」
俺は扉を開け、家の中に飛び込んだ。
やった・・・ついに俺はやり遂げたのだ・・・人生初の最高難度ミッションを。AVの購入という、人生を賭けた挑戦を。
ああ・・・家の中だというのに気のせいか、小鳥たちが祝福のコーラスを歌っているように聞こえる。
――――ピーヒョロヒョロ・・・ピーヒョロヒョロ・・・
ああ・・・家の中だというのに、そんな鳴き声が・・・
――――ピピッ・・・ピーヒョロ・・・
・・・ちょっと待て。なんかほんとに聞こえてないか?
俺は慌てて辺りを見まわす。
「・・・は?」
俺の目に映る光景、それは近代家屋の素晴らしい間取りではなかった。そこにあったのは、これでもかと言うほどの”自然”だった。
いやいや、おかしいだろ。俺は確かに家の中に飛び込んだはずだ。なのになんで、こんな森の中に居るんだ? なんで外に居るんだ? というか、ここはどこだ?
「・・・あの」
「ん?」
俺はようやく、目の前にいる少女に気がついた。その少女はとても小柄で、声を掛けられるまで気がつかなかったのだ。
そして彼女は、見たこともないような服を着ていた。・・・いや、正確に言えば彼女の服装には見覚えがある。彼女の服装は・・・そう、マンガとかに出てくるローブの様なものを着た魔法使いそのものだった。
「・・・コスプレ?」
状況がつかめず、俺はそんなことを尋ねる。まさか、コスプレ会場にでもきちまったのか? じゃなきゃ、こんな◯リー・ポッターに出てくるような魔法使いの格好をしているやつがいるわけない。
しかし、彼女の答えは俺の斜め上、そしてある意味ではテンプレートな物だった。
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