勇者×魔王×宇宙人×未来人×転生者 ~何の因果か宇宙人に支配されたファンタジー世界でSFするはめに~

taka1gou

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――――ゴロゴロゴロゴロ・・・ドサッ


俺は崖を転げ落ち、ついに一番下までたどり着いた。やれやれ、ここまで来ればアイツも追っては来れまい。


なんとも運の良いことに、骨は折れていないようだ。枝やらなんやらが体中に突き刺さって、死ぬほど痛いけど・・・



「さてと、これからどうするか」


あのクレイジーガールから逃げ切れたのは良いが、状況は最悪のままだ。

・・・いや、最悪はアイツに捕まってゴミのように使い捨てられることなわけだから、今は最悪の一歩手前と言ったところか。


それでも、悪いことに変わりはない。なにせ俺はこの世界のことについて『勇者と魔王が宇宙人に拉致られた』という事しか知らないわけだからな。

元の世界に帰る方法どころか、この世界でどうやって生きていくかすらもわからない。もちろん、一般人の俺はサバイバルなんて出来ない。


もし今、クマにでも会えば、その時点で詰みだ。まったく、何が『宇宙人を倒して人類を救ってくれ』だ。自分の命だけで手一杯だっての。


しかしやはり、一番最初に目指すべきは人間がいる町へと向かうことだろう。とりあえず、あんなクレイジーガールじゃなくて、もっとまともな人間から情報を得なければ。


・・・まてよ。この世界って今、宇宙人に攻められているんだよな? まさか人間の町は全部、宇宙人に攻撃されている真っ最中ってことはないだろうな?

そんなところに飛び込むなんて、それこそ自殺行為だ。宇宙人に攻められている町よりも、まだクマが出る森の方が安全だ。



となると俺がするべきは

①人間の町を探す
②もしそこが宇宙人に攻められていなかったらそこで情報収集
③攻められていたら森の中でクマと戯れる

という感じか。

うむむ・・・先が思いやられるな。




<<<<   >>>>


――――ゴウン・・・ゴウン・・・

「!」


俺がようやく、これからどうするかを決めたときだった。突如として、頭上にそれが現れた。それは俺に向かってライトを当て、俺の姿が暗い闇夜の中ではっきりと照らされた。


――――ゴウン・・・ゴウン・・・


それは高度を下げ近づいてきていた。

お皿をひっくり返したような形。不気味なエンジン音。“フヨフヨ”とロケット噴射も無しに浮遊する様。“それ”とはすなわち、宇宙人の乗ったUFOだった。



「なっ・・・」


嘘だろ!? もうですか!? もう宇宙人と戯れないといけないんですか!?


俺はすぐさま、スポットライトの中から飛び出る。そして、走り出した。しかしライトは俺を見失うまいと頑なに追ってきた。そして、UFOもまた、俺を追ってくる。




「ぬああああああああ!」


なんでだ!? 俺まだこっちに来たばっかりだぞ!? なのになんでもう、宇宙人にアブダクションされそうになってんの!?



――――ウィィィィン


空中でUFOの入り口が開き、そして数匹のムキムキのトカゲ型宇宙人が飛び降りてきた。どうやら、直接俺を捕まえる気らしい。


「ちょ、マジで勘弁しろよ!」

俺は思わず叫ぶ。

いや、だってさあ! 普通宇宙人って、銀色でヒョロヒョロの弱そうなイメージじゃん!?

それなのになんで、あんなムキムキの大トカゲなわけ!? 「銀色の奴ならワンチャンいけるかも?」とか思ってたのに! あんなのに勝てるかあ!


トカゲたちはどうやら銃のような物を持っていた。そして、それを俺に向けてきた。


「ちょ、撃つな撃つな! フリーズプリーズ!」


俺のそんな懇願も虚しく、ヤツらは俺に向けて引き金を引こうとした。





しかし「もう駄目か!」と思ったそのときだった。不可思議なことが起きた。


『左に前転した場合:90%の確率で回避 10%の確率で3発以下が命中』

「!?」


突然、頭の中にそんな声のような、メッセージのようなモノが現れた。いや、それは声と言うよりも・・・意識。自分の意識が、教えてくれているような気がした。


「・・・っ!」

――――ゴロンッ!


俺は前転した。前転なんて中学生以来にしたのでかなり不格好だったが、それでも左側に前転した。そして・・・


――――ピュピュピュピュピュン!


数発のレーザーが、俺の頭上を通過していった。


「・・・っ、あっぶな!」


前転から立ち上がると、俺は再び走り出した。



なんだったんだ今のは!? 突然のことに思わず従っちまったけど、さっき助かったのはあの声のおかげなのか!?

・・・いや、それよりも今はここを逃げるのが先だ! とにかくこのUFOとトカゲたちから逃げるのが――――


――――ピュン

「・・・っ!!」

俺の胸を、レーザーが貫いた。

(なっ・・・)


倒れつつ、俺を撃ったトカゲの姿を見る。どうやら、そのトカゲは体に包帯を巻いているようだった。そして他のトカゲ逹と違って、なんというか階級が高そうな格好をしていた。


(なん・・・で・・・)


激痛が体中を走る中、ある疑問が浮かぶ。

『なぜこの攻撃には、さっきみたいに“声”が聞こえなかったのか?』

俺は薄々、先ほどの声がクレイジーガールの言っていた『俺に与えられたスキル』であるということに気がついていた。

たぶん、未来を確率的に教えてくれる能力とかだろう。


しかし、だからこそ疑問だった。なぜ今回は、能力が発動しなかったのかが。


もしかして、発動条件でもあるのか? “声”が聞こえたとき、俺は自分を撃とうとしていたトカゲたちの事を見ていた。しかし、さっき撃たれたときは撃ったトカゲの姿を見ていなかった。

もしかして“見る”ことが発動の条件? だから、スキルが発動しなかった?

もし未来を推測する系の能力なら、推測するために『目視による情報』が必要なのだという可能性がある。それなら、死角から撃たれたレーザーを予測できなかったのも頷ける。


(・・・どうでも・・・いいか)


薄れゆく意識の中で、俺はそんなことを考える。いまさら、スキルがどんなモノだろうが関係ない。


俺の胸を貫いたレーザーは、完全に致命傷だ。出血量が尋常じゃないからな。たぶん、すぐに出血多量で死ぬだろう。

手術でもして傷を塞げば、あるいは助かるかも知れないが、目の前のトカゲたちが俺を助けてくれるとは到底思えない。間違いなく、俺はここで死ぬ。



(あーあ・・・童貞・・・卒業したかったなあ・・・)


情けないことを考えながら、俺は意識を失った。






<<<<   >>>>


――――ウィィィィン


「大佐、捕獲した人間の治療が完了しました」

「わかった。ご苦労だったな」

「しかし、なんのために治療など? 医療器具も無限にあるわけではないのに・・・」

「人間の実験体はまだまだ少ないからな。一体でも多く確保しておくに越したことはない」

「なるほど・・・思慮がたりませんでした」

「それより、さっきのエネルギー反応の方はどうだ? 何かわかったか?」

「いえ・・・時空振動の発生源を調査しましたが、なにも見つからず・・・」

「・・・そうか」

「いかがなさいますか?」

「・・・上にデータだけは送っておいてくれ。まあ、上でも観測済みだろうがな。一応だ」

「了解です。では、失礼します」


――――ウィィィィン
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