この胸の高鳴りを

兼穂しい

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この胸の高鳴りを

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電車の座席でスマホに夢中になりすぎて、隣に座ってきた乗客の様子にまったく気づいていなかった。

なんと魅惑的な太腿か。

まるで触ってくれと言わんばかりのムチムチした生足。

神は時々、このような粋な計らいをしてくださる。

空席が目立つ車両の中、よくぞこの乗客を隣に遣わしてくれた。

神様グッジョブ!

スマホを眺めるフリで視線を悟られぬよう太腿をチラ見し続ける。

イヤホンから流れる原田〇世の「ロマンス」が心地良い。

触れたい。

撫でたい。

頬ずりしたい。

意を決してさりげなく太腿から足のつけ根までガン見する。

生足と思い込んでいたソレはピッチピチのベージュのチノパンだった。

困惑しつつも勇気を振り絞って履き主の御尊顔を拝する。

薄汚いヒゲ面のオッサンだった。

鳴り止め「ロマンス」。


~ Fin ~
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