異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第九章

第142話 技術発展の先

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 食事を終えると、ベイラはアオイと一緒に部屋から出ていった。
 ……この城にある魔道具を見せに行ったんだろうな。

 リューナもその様子をちらっと見ていたので、あんまり熱中しているとリューナ鬼が出現しそうだ。

 そしてヒカリは、片づけを終えるとまたどこかへと行ってしまった。
 うーむ、相変わらず忙しそうだな。

 他の皆はのんびりタイム、といった感じで、自然と雑談が始まった。

 特にディニエルは、昨日今日とで見た魔族の服について、色々と聞いてた。
 それと、レイには、マーフォークの服事情についてリューナ経由で聞いたこと、私なら対処できる、といった話もしていた。



 そうして色々と、本当に雑談と言っていい話をしていると、部屋の扉からアオイが顔を出した。
 どうしたんだろう?

「あれ? アオイ、何かあったのか?」

「いいや、ハクト君に用事があってね。ハクト君、少し時間をもらってもいいかい?」

「ああ、わかった」

 まあ、魔道具関係の話だろうな。
 さっきまでベイラと魔道具を見たりしていただろうし、そこで俺に聞きたいことができた、って感じだろう。

 ベイラのいる場所にアオイと一緒に向かうため、部屋から出たのだが、

「立ち話、というのもあれだし、軽く歩きながら話そうか」

 と、言われた。
 ……あれ?

「ええと、ベイラと合流するんじゃないのか? てっきり、魔道具について話をするんだと思ったけど……」

「うん、確かにそれも話したいけれど、今日は違う話なんだ」
 
 ……魔道具以外の話って、なんだろうか?
 
「ああいや、一応魔道具に関わる話ではあるね。……ハクト君。昨日、今日と行った街だけれど、なぜあんなに時差があると思う?」

「へっ? ……単純に、この場所からかなり離れてるから、ってことじゃないのか? 後は……、あの場所が魔道具とかの街を作るのに優れていたから、とか?」

「そうした理由もあるけれど、もっと大きな理由があるんだ。……あの場所はね、魔族の生活圏からとても離れた場所で、周囲は強力な魔物が闊歩している。だから、あの街は巨大な壁に囲まれているんだ。それと、あの場所は地下にまで街が広がっているだろう? それは研究のため、というのもあるのだけれど、万が一の時に避難できるようにしているんだ」

 ……言われてみれば、周囲は壁で囲まれていたかも。
 初日は、本を読んだ影響だったり、色々な魔道具に夢中になったりして、そっちは全然気にしていなかったな。

 けど、それよりも

「どうして、そんな過酷な場所に街を作ったんだ? 魔物から取れる素材のため、ってわけでもないよな?」

「そうだね。そもそも、あの街には出入口がないから、基本的に街の外には出られないんだ」

 あの街には転移で直接来たけれど、そういった理由もあったのか。

「あっ。もしかして、弱い魔族のためか? 前に、人間界との交流が始まってすぐは、魔道具を歓迎する魔族はほとんといなかった、って言っていたよな? それは、弱い魔族から役割を奪われるかもしれない、ってことで」

「うん、あの街を作った当初は、それも目的の一つだったね。それと、魔道具作りに向いている魔族や、私以外にも色々な研究をしている魔族を保護するためというのもある。そうしたことを行っている魔族は、各地で異端者いたんしゃ扱いされていたからね。もちろん、危ない研究をしそうな魔族を除いてね。とはいえ、今は魔道具も魔界中に普及しているし、あんなに過酷な場所でなくても大丈夫なんだ」

「それなら、もっといい場所に街を移してもいいんじゃないか? 技術の流出とかも、魔道具で防げる気もするし。……あ、もしかして、魔道具に反対な魔族から襲われる、とか?」

「ハクト君が言ったように、技術の流出は魔道具で防げるね。それに、そういった悪意ある魔族からの襲撃も、魔道具で対策できるんだ。今も、魔物からの攻撃はそうして防いでるからね」

 ああ、そうだよな。
 魔族からの襲撃はなくても、強い魔物から襲撃される可能性が、十分にある場所だもんな。

「それなら、何で今でもあの場所に街があって、そこで研究をしているんだ?」

「……一応の表向きの理由としては、転移の魔法や魔道具があるし、今のあの街を再現するのは大変だから、ということになっているよ。……実際、実験の為に色々な施設が増設されているから、それも本当のことではあるんだけどね。けど、本当の理由は……」

 そう言ったアオイは少し言い淀み、一度深呼吸をすると、再度話し始めた。

「私が、不安だからなんだ」

「不安?」

 ……どういう、ことだろう?

「今もあの街で、魔法や魔道具、他にも色々な研究が行われ、技術が発展している。けれど、その発展の先では、この世界に何か致命的な問題を引き起こしてしまうのではないか、と考えてしまうんだ。私の考えすぎ、と言われたら、そうなのかもしれないけれのだけれど、ね」

「俺は、あんまり難しい話はわからないけど、そう考えるのは不思議なことじゃないと思う。例えば、俺のいた世界ではな……」

 と、俺の覚えている範囲で、アインシュタインやノーベルの話をした。彼らも、自身の発見や研究が想定とは違う使われ方をし、後悔にさいなまれた人たちだと思うからだ。

「……やっぱり、そういった話があるんだね。そうなると、私の研究の行きつく先は……」

「ああいや、ちょっと待ってくれ。これは創作の話なんだけど、そういった技術とかが発展し、人が神に近づきすぎると、神からの裁きが下る、みたいな物語が結構あるんだ。そして、この世界には実際に神様がいるから、……あー、えっと。まあ、そんな感じだから、大丈夫なんじゃないかな?」

 アオイの考えをなんとか否定したかったけど、ちょっと変な感じになってしまった。
 ……これじゃ、アオイが裁きを受けるから大丈夫、って言ってるみたいだ。

「はははっ! そうだね。もしそうなったら、神様が私を止めてくれるだろうし、安心だね」

「いや、別にアオイが酷い目にあって欲しいわけじゃないからな? えっと、ただ、神様がいるからアオイの心配する事態は起こならいだろう、って言いたかったんだ。……あっ、そうだ! 今度、神様に会った時に言っておくよ。そうなる前に警告とかを出してあげて、ってな」

「ああ、もちろんわかっているよ。……ハクト君、ありがとう。少し気楽になれたよ」

「それならよかったよ。それに、いざとなったら神様に願いを叶えてもらえば大丈夫かもしれないし」

 うん、困った時の神頼みってやつだ。
 あの神様なら、きっと大丈夫だろう。

「そうだね。……それにしても、神様に会った時に言っておく、なんて気軽に言えるところが、流石はハクト君だね」

「……あー。何というか、巡り合わせというか、俺がこの世界の人間じゃないから、というか」

「ふふっ。困らせてすまないね。……でも、それが不思議じゃないと思えるハクト君だから、色々と話したくなったり、何かと頼りたくなったりするんだろうね」

「まあ、俺も皆には色々と頼っているからな。だから、俺ができることであれば任せてくれ、とも思っているよ。……あ、あんまり大変なのは、なるべく遠慮してもらいたいけど」

「うん、考慮するとしよう」

 と、さっきまでの不安そうな表情から笑顔になったアオイから、そう言われた。



 そうして会話をしている内に、気づけば結構な距離を歩いていた。
 ……これは、引き返すよりもぐるっと一周したほうが、確実に近いな。

「さて、気づけば結構な時間が経ってしまったし、ベイラのところに戻ろうかな。あ、ハクト君も来るかい? 何か。面白い意見をもらえそうだからね」

「……いや、今日は遠慮しておくよ。それと、夜遅くなるとリューナが出るから、あまり熱中しないようにな」

「ああ、気をつけるとしよう。神様から怒られるのも怖いけど、リューナからでも怖いからね。それじゃあハクト君、ありがとう。また明日」

「おう、また明日だな」

 と、ちょうど階段に差し掛かったあたりで、アオイと別れた。
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