異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第九章

第143話 Schloss(シュロス)は日本語で城っす

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 アオイと別れた後、元の部屋に戻ってみると、ハヤテとホムラが残っていた。
 二人は、人間界で新しく見つけた飲食店の話をしていた。

 俺も話に混ぜてもらい、眠たくなるまで色々な情報を仕入れた。
 ……近くにある店もあったし、今度行ってみようかな。



 目が覚めると、すでに日がそこそこ高く登っていた。
 ……昨日一日だったけど、ちょっとだけ時差ボケがあったのかな?

 それにしても、この部屋で朝を迎えるのも、段々と慣れてきた気がする。
 魔皇の城が、段々と別荘みたいになってきているな。

 他の皆も俺と同じように、少し遅めの起床だったようだ。
 ……ベイラは、別なことが影響している気もするけど。

 と思ったら、ディニエルの方もだった。
 昨日はリューナと夜遅くまで話していたようで、どことなくリューナも反省気味である。

 まあ、そのリューナはきちんと起きて、俺たちの朝食を作ってくれていたみたいだけどな。

 そして、いつも通りおいしい朝食を食べ終え、本日の予定である魔皇の城ツアーが始まった。

「魔界の頂点が集まる城、って聞くと、もっと威厳のある感じかと思ってたけど、意外と普通の雰囲気じゃんか。……広さだけは、尋常じゃあないけどな」

「自分たちが生活する空間だからね。使いやすさが第一さ」

「便利なのはいいこと」

「確かにそうだな。……いや、さすがにこの広さは使いにくくねぇか?」

「まあ、魔皇だけで五人もいるからね。他にも、リューナの部屋とか、私たちの手伝いをしてくれる魔族用の部屋もあるんだ。それに、いざとなったら転移の魔法を使えばいい、というのもあるね」

「やっぱり、その魔法は便利だよなー。あたしは使えないから羨ましかったぜ。けど、昨日アオイから転移の魔道具をもらえたから、これから便利に活用させてもらうけどな!」

「私ももらった。リューナに感謝。リューナの部屋に遊びに行ける」

 いや、リューナも転移を使えるし、その目的なら本人に送ってもらえばいいんじゃないかな……。
 まあそれよりも、気になる事があったけど。

「ベイラは、転移の魔道具を持ってなかったんだな。便利な魔道具ならほとんど持ってると思ってたけど」

「まあな。ほら、人間界って転移できる場所にかなり制限があるじゃんか。んで、あたしの店は転移門からそんなに離れてねぇし、高い金を出す価値が感じられなくてな。中身も、転移の魔法陣があるだけだしな」

 うん、構造が複雑なら、高い魔道具でも解体していそうだな。
 まあ、ベイラなら解体しても自分で元に戻せそうだし、問題はないんだろうけどさ。

 それと、アオイ。
 この城が広い理由を上手く誤魔化したな。
 ……まあ、魔皇たちが、とりあえず部屋はいっぱいがいい、みたいな感じだったとは言いづらいか。

 ちなみにその話題の時にリューナを見たら、こちらを見て苦笑していた。
 やっぱり、リューナも本当の理由を知っていたみたいだな。

 そんな感じで城を案内していたが、

「さて、次はこの扉の先にある区画を案内するよ。この区画は招待客が利用する場所だね。……とはいえ、未だに使われたことはないのだけれど」

 こっちの区画は初めて入るな。
 いや、誰かに案内してもらえば見学できたんだろうけど、場所が場所だから、ちょっと気軽には入りづらいんだよなぁ。

 アオイが扉に触れると何かの音がして、扉が開いた。
 扉をくぐり、ここからならよく見える、と言われた場所まで進むと、そこには……

「すごい。きれい」

「おお……。あたしは建築とかには詳しくねぇけど、それでもかなりすごいことだけはわかるぜ……」

「これは、大理石とかなのか? 色々な模様や色が組み合わさってるけど、何というか統一感があるな。本当にすごい……」

「久々に入りましたが、やはりこの場所は綺麗て、それでいて壮厳な雰囲気があります」

 扉の先はから見下ろすと、巨大なエントランスホールが広がっていた。

 床は、白い大理石と思われる石が敷き詰められ、上にカーペットが敷かれていた。
 下り階段には薄い縞模様っぽい横線が入っており、壁や天井には模様や絵が描かれていた。
 ……模様はわからないけど、絵はハヤテ作っぽい魔物の絵だな。

 それと、高そうな鎧や剣も何点か飾られているな。
 こっちはレイの担当だろう。

 それにしても、まさかこんなにすごい光景が広がっているとは思わなかった。
 ……入りづらいとか言わずに、誰かに案内してもらえばよかったな。

「ふふっ、驚いてくれたようだね。ちなみに、ここに使われている石は、私が厳選したんだ」

 魔道具のイメージが強いけど、アオイは地属性の魔族でもあるんだもんな。
 ホムラが、火の扱いが得意なように、鉱物の見極めとかが得意、ってことなんだろうな。

 それから、エントランスホールを始めとして、会議室や謁見の為の部屋、招待客が宿泊する場所などを案内してもらった。
 ……こっちの区画も、すごく広いな。

「どうかな? この区画は、人間で見て来た、色々なお城を参考にしているんだ」

「あたしは、この前招待してもらった城しか知らないけど、かなり立派な城に見えるぜ」

「そうだな。俺はゲーム、いや、絵とかで色々な種類の城を見たことがあるけど、それと比較しても、引けを取らない、いやそれ以上かもしれない、と思う」

「とってもお城」

 ……まあ、なんとなく言いたいことはわかる。

「うん。そう言ってもらえてよかったよ」

「それにしても、こんなにすごいなら、一度入口から入ってみたいかも」

「残念だけど、それはお断りさせてほしいな。初めて入口から入ってくるのは、魔界の代表が正式に招待した賓客にしたいと皆で決めているんだ。それとも、ハクト君が最初の賓客になってみるかい?」

「いやいやいや」

 それは、流石に勘弁してほしい……。
 それはともかく、入口から初めて入ってもらう人は、確かにその方がいいよな。

 本来の目的は、国の代表者とかを招く場所なんだし。



 そして、昼食はホムラが狩ってきてくれた、魔物の肉だった。
 うん、相変わらず、シンプルな味付けでもおいしいな。

 ディニエルはもちろん、食事に関してはそこまで大きなリアクションをしないベイラも、かなり驚いていたな。

 そして食後、城の感想や魔道具の街の話などで盛り上がっていたら、いつの間にか夕暮れが近づき、今日は解散となった。
 俺は帰る前に、この城の自室を軽く整理しておくかな、とリューナと部屋に向かった。

 そして、部屋に入ったところで、

「あの、ハクト様。相談があるのですが、よろしいでしょうか?」

 と、リューナから話しかけられた。
 ……まあ、そうだろうと思った。

 今日のリューナは、ぱっと見はいつも通りだったけど、何となくそわそわしていそうな雰囲気が感じ取れたからな。
 もしかしたら、昨日の夜更かしと関係があるのかな?

「ああ、もちろん」

「前回、ハクト様が旅行から帰宅した後、元魔王と、いえ、マオとの仲直りに同行して欲しい、とお願いしましたが、近々それを実行しようと考えています。……昨日さくじつ、ディニエルさんに相談し、決心がつきました」

 なるほどな。
 ……それなら、夜更かしも仕方がない、か。

「そっか。それなら、もちろん同行させてもらうよ。それにしてもディニエルには、夜遅くまで相談にのってもらえてよかったな」

「ああ、いえ、それは、えっと、その……。私の集めていたコレクションの話で、盛り上がってしまいまして……」

 いや、違ったんかい!

「そ、そうか。……まあでも、ディニエルと短時間でそんなに仲良くなれたのは、よっぽど相性がよかったんだな。ええと、こう言うとあれだけど、ディニエルはまだ若いだろうし、長く生きたリューナとこんなに早く打ち解けられるのは、すごいなって」

「……そうですね。何といいますか、あまり裏表がなく、魔族的な考え方をする部分もあったりと、不思議と抵抗なく話ができますね。それと、確かに年齢差はあるのですが……。その、具体的な数字を言うのは避けますが、ベイラさんもディニエルさんも、ハクト様よりも何倍も長く生きていますよ?」

「ええー!!」

 衝撃の事実に、俺の叫び声が部屋に響き渡った。
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