異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
153 / 161
第九章

第144話 リューナとマオ

しおりを挟む
 何度目かの衝撃の事実を知った後、善は急げということで、すぐにマオに連絡をした。

 リューナが仲直りしたい、ということは言わず、今後の方針とかを決める為話し合いをしたい、その場にはリューナも同行する、といった内容を送った。
 ……リューナ曰く、本当の事を言うと彼女は空回りしそうですので、とのことだったからな。

 すると、リンフォンに音声モードでマオから掛かって来た。
 すぐに出ると、

「ハクトの兄貴、さっきの内容本当っすか!? リューナの方は、私と会って大丈夫なんすか!?」

 と、かなりの大声で言われた。

「ちょ、ちょっと落ち着け! もちろん、リューナには相談したよ。それに、マオに俺の試練を手伝ってもらうなら、一度もリューナと顔を合わせない、ってのは無理だしな」

「それは、確かにそうっすけど……。リューナの方は、何か言ってたっすか?」

「うーん。……秘密、ってことにしてもいいか?」

 リューナは仲直りしたいと思っている、とは伝えられないし、いい感じの嘘も思いつかなかった。
 
「ちょ、それはひどいっす!? 秘密にされると、余計に気になるっすよ!」

 うん、気持ちはわかる。
 ……けど、言わないのはマオのためでもあるので、許してほしい。

「まあまあ。それで、マオの予定はどうだ?」

「それなら、いつでも大丈夫っす! 何なら今からでもいいっよ! 何か予定があっても大丈夫にするっす!」

 とのことだったので、明日にした。
 あんまり遅いと、リューナも落ち着かないだろうし、気が変わってしまう可能性もあるしな。
 ……とはいえ、さすがに今から、ってのはやめておいた。

 場所は、転移で移動できるから当日の直前でいい、とのことだった。
 場所を伝えられると、今すぐにその場所に行ってしまいそう、という理由だった。
 ……一晩中待っていられると、こっちも落ち着かないし、そうしておこう。

 そして、マオとの通話を終えると、

「聞いていたと思うけど、明日マオと会うことにしたよ。リューナの予定は大丈夫だったよな?」

 と伝えた。
 予定がある時には、いつも一週間前までには言ってくれるからな。

「ええ。……それにしても、久々に、彼女の声を聴きました。元気そうでよかったです」

「そうだな。……ちょっと元気すぎるくらいだ」

 それを聞いたリューナは、くすっ、と笑い、

「そうですね。……明日、本当に彼女と会うんですね」

 と言った後で、少し不安そうな表情になった。

「お互い、喧嘩したいわけじゃないし、何も心配はいらないさ」

「……そう、ですよね」

 リューナにはそう言ったけど、逆に俺の方がちょっと不安なってきてしまった。
 ……念のため、ホムラにも相談しておこうかな。

◇ 

 マオとの予定があるため、昨晩も魔皇の城に泊まった。
 念のため、ソフィアには連絡しておいたし、大丈夫だろう。

 今日の朝食は、気もそぞろなリューナに代わって俺が作ってみた。
 リューナは、ハクト様に作らせるなんてとんでもない、という感じだったが、今日はリューナにとって重要な日だからと無理やり納得させた。

 それに、焼く関係はホムラにも手伝ってもらったしな。
 ……うん、今日は朝からホムラも来ていた。

 昨日ホムラに相談したところ、それならオレの土地にするのがいい、と言われた。
 俺としては、この城の空き部屋を借りようかと思っていたんだけど……、

「それだと、マオの奴が落ち着かないかもな。マオとはそんなに交流のない魔皇もいるし、自分で言うのも難だが、ここは一応魔界の頂点が集まる城だしな」

 と言われた。

 ……そうだった。
 城に自室があって、昨日もそこで寝泊まりしてたから、感覚がおかしくなっていた。

 部屋を借りたので来て欲しい、と言われた場所が王城の一室。
 ……うん、俺だったら行きたくないし、落ち着かなさそうだ。

 ということで、ホムラの土地を使わせてもらうことにした。



 というわけで、ホムラの土地に来たのだが……、

「うっし。リューナの方は椅子と机を準備できたな。そんじゃ、ハクト。マオに連絡だ」

 と、何故かホムラも同行していた。

 本人曰く、オレの土地だから持ち主も同行するのが普通、とのことたっだ。
 ……この場所をすぐに勧めたのは、それが理由か。

 さっそくマオに連絡すると、待ってましたと言わんばかりに、姉貴の土地っすね! すぐ行くっす! と言われた、のだが……。

「……あれ?」

 一分ほど経っても、姿が見えなかった。
 あの話し方であれば、通話が切れてすぐに現れると思っていたんだけどな。
 ちょっと、肩透かしを食らった気分だ。

「あっ、あそこにいました! ……ゆっくりと、こちらに歩いてきているようですね」

 と、リューナが遠くの方を指さした。

 ……あの、豆粒みたいな人影が、マオ、なのか?

「あんのバカめ。……ハクト、リューナ。ちょっと行ってくる」

 そう言うと、ホムラは転移の魔法を使った。
 そしてすぐに、遠くに見えている人影が二つになった。

 と思ったら、その人影が消え、マオの首根っこを摑まえて、ホムラが戻って来た。

「ふぅ。こいつ、転移の直前になって急に緊張してきたようでな。無意識に、ちょっと離れた場所に転移したらしい。んで、緊張を紛らわすように、ゆっくりとこっちに歩いてきたそうだ」

 本当に直前だな!
 ……いや、元から無意識に緊張していて、直前になって自覚した、って感じかもな。

「ううっ、ホムラの姉貴、ひどいっす……」

「……久しぶりですね、****。いえ、今はマオ、と言った方がいいでしょうか?」

「……そうっすね。そっちは、リューナ、だったっすよね?」

「ええ。……あの、マオ」

「あ、ちょっと待ってほしいっす。まずは、先に言わせてもらいたいことがあるっす」

「……ええ、わかりました」

 マオは一度深呼吸をし、普段の様子とは打って変わって、おもむろに話し始めた。

「我、いや、私は、リューナと喧嘩した後、ホムラの姉御から仕事を与えられたっす。その内容というのが、人間界から観光に来た人たちの案内役、なんすよ。人間界で悪さをした私にそんな仕事をやらせるなんて、ホムラの姉貴はおかしいっすよね? けど、その仕事をしていくうちに……」

 マオは、ホムラにサポートされながらも仕事をしていくことで、人間界について色々と理解したこと、そして改めて、自分がやらかしてしまったことを理解したこと、そして、誰かの役に立つために色々な技術等を学んだことを、リューナに語った。

「そして、自分の罪を理解したことで、きちんとリューナに謝りたいと思ったっす。あの時は、本当に申し訳なかったっす。……本当はもっと早く謝りたいと思っていたっす。けど、合わせる顔がなかったし、ただ謝りたかっただけで、許してほしいと思っていたわけでもなかったんす」

「……マオ。あなたが行ってきたことは、ホムラさんや、他の魔族から色々と聞いてきました。そして、十分に反省していることも。……それでも、あなたに合わなかったのは、マオ自身ではなく、私の方に問題があったと、ハクト様と行動していて気づかされました。私は……」

 リューナは、自分ではなくマオが人間界に一番乗りした、という事実に嫉妬していた事、そして、マオではなく自分なら上手くやっていた、と無意識に考えていた。
 けれど、俺と一緒に行動することで、その考えを自覚したこと。
 そして、マオを許せない自分自身が、器が小さいと思えたことを語った。

「ですので、謝るのは私の方です。本当に、申し訳ありませんでした」

「……私の方が謝りに来たのに、何故か謝られてしまったっす」

 と、マオは苦笑しながら言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...