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第九章
第144話 リューナとマオ
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何度目かの衝撃の事実を知った後、善は急げということで、すぐにマオに連絡をした。
リューナが仲直りしたい、ということは言わず、今後の方針とかを決める為話し合いをしたい、その場にはリューナも同行する、といった内容を送った。
……リューナ曰く、本当の事を言うと彼女は空回りしそうですので、とのことだったからな。
すると、リンフォンに音声モードでマオから掛かって来た。
すぐに出ると、
「ハクトの兄貴、さっきの内容本当っすか!? リューナの方は、私と会って大丈夫なんすか!?」
と、かなりの大声で言われた。
「ちょ、ちょっと落ち着け! もちろん、リューナには相談したよ。それに、マオに俺の試練を手伝ってもらうなら、一度もリューナと顔を合わせない、ってのは無理だしな」
「それは、確かにそうっすけど……。リューナの方は、何か言ってたっすか?」
「うーん。……秘密、ってことにしてもいいか?」
リューナは仲直りしたいと思っている、とは伝えられないし、いい感じの嘘も思いつかなかった。
「ちょ、それはひどいっす!? 秘密にされると、余計に気になるっすよ!」
うん、気持ちはわかる。
……けど、言わないのはマオのためでもあるので、許してほしい。
「まあまあ。それで、マオの予定はどうだ?」
「それなら、いつでも大丈夫っす! 何なら今からでもいいっよ! 何か予定があっても大丈夫にするっす!」
とのことだったので、明日にした。
あんまり遅いと、リューナも落ち着かないだろうし、気が変わってしまう可能性もあるしな。
……とはいえ、さすがに今から、ってのはやめておいた。
場所は、転移で移動できるから当日の直前でいい、とのことだった。
場所を伝えられると、今すぐにその場所に行ってしまいそう、という理由だった。
……一晩中待っていられると、こっちも落ち着かないし、そうしておこう。
そして、マオとの通話を終えると、
「聞いていたと思うけど、明日マオと会うことにしたよ。リューナの予定は大丈夫だったよな?」
と伝えた。
予定がある時には、いつも一週間前までには言ってくれるからな。
「ええ。……それにしても、久々に、彼女の声を聴きました。元気そうでよかったです」
「そうだな。……ちょっと元気すぎるくらいだ」
それを聞いたリューナは、くすっ、と笑い、
「そうですね。……明日、本当に彼女と会うんですね」
と言った後で、少し不安そうな表情になった。
「お互い、喧嘩したいわけじゃないし、何も心配はいらないさ」
「……そう、ですよね」
リューナにはそう言ったけど、逆に俺の方がちょっと不安なってきてしまった。
……念のため、ホムラにも相談しておこうかな。
◇
マオとの予定があるため、昨晩も魔皇の城に泊まった。
念のため、ソフィアには連絡しておいたし、大丈夫だろう。
今日の朝食は、気もそぞろなリューナに代わって俺が作ってみた。
リューナは、ハクト様に作らせるなんてとんでもない、という感じだったが、今日はリューナにとって重要な日だからと無理やり納得させた。
それに、焼く関係はホムラにも手伝ってもらったしな。
……うん、今日は朝からホムラも来ていた。
昨日ホムラに相談したところ、それならオレの土地にするのがいい、と言われた。
俺としては、この城の空き部屋を借りようかと思っていたんだけど……、
「それだと、マオの奴が落ち着かないかもな。マオとはそんなに交流のない魔皇もいるし、自分で言うのも難だが、ここは一応魔界の頂点が集まる城だしな」
と言われた。
……そうだった。
城に自室があって、昨日もそこで寝泊まりしてたから、感覚がおかしくなっていた。
部屋を借りたので来て欲しい、と言われた場所が王城の一室。
……うん、俺だったら行きたくないし、落ち着かなさそうだ。
ということで、ホムラの土地を使わせてもらうことにした。
◇
というわけで、ホムラの土地に来たのだが……、
「うっし。リューナの方は椅子と机を準備できたな。そんじゃ、ハクト。マオに連絡だ」
と、何故かホムラも同行していた。
本人曰く、オレの土地だから持ち主も同行するのが普通、とのことたっだ。
……この場所をすぐに勧めたのは、それが理由か。
さっそくマオに連絡すると、待ってましたと言わんばかりに、姉貴の土地っすね! すぐ行くっす! と言われた、のだが……。
「……あれ?」
一分ほど経っても、姿が見えなかった。
あの話し方であれば、通話が切れてすぐに現れると思っていたんだけどな。
ちょっと、肩透かしを食らった気分だ。
「あっ、あそこにいました! ……ゆっくりと、こちらに歩いてきているようですね」
と、リューナが遠くの方を指さした。
……あの、豆粒みたいな人影が、マオ、なのか?
「あんのバカめ。……ハクト、リューナ。ちょっと行ってくる」
そう言うと、ホムラは転移の魔法を使った。
そしてすぐに、遠くに見えている人影が二つになった。
と思ったら、その人影が消え、マオの首根っこを摑まえて、ホムラが戻って来た。
「ふぅ。こいつ、転移の直前になって急に緊張してきたようでな。無意識に、ちょっと離れた場所に転移したらしい。んで、緊張を紛らわすように、ゆっくりとこっちに歩いてきたそうだ」
本当に直前だな!
……いや、元から無意識に緊張していて、直前になって自覚した、って感じかもな。
「ううっ、ホムラの姉貴、ひどいっす……」
「……久しぶりですね、****。いえ、今はマオ、と言った方がいいでしょうか?」
「……そうっすね。そっちは、リューナ、だったっすよね?」
「ええ。……あの、マオ」
「あ、ちょっと待ってほしいっす。まずは、先に言わせてもらいたいことがあるっす」
「……ええ、わかりました」
マオは一度深呼吸をし、普段の様子とは打って変わって、おもむろに話し始めた。
「我、いや、私は、リューナと喧嘩した後、ホムラの姉御から仕事を与えられたっす。その内容というのが、人間界から観光に来た人たちの案内役、なんすよ。人間界で悪さをした私にそんな仕事をやらせるなんて、ホムラの姉貴はおかしいっすよね? けど、その仕事をしていくうちに……」
マオは、ホムラにサポートされながらも仕事をしていくことで、人間界について色々と理解したこと、そして改めて、自分がやらかしてしまったことを理解したこと、そして、誰かの役に立つために色々な技術等を学んだことを、リューナに語った。
「そして、自分の罪を理解したことで、きちんとリューナに謝りたいと思ったっす。あの時は、本当に申し訳なかったっす。……本当はもっと早く謝りたいと思っていたっす。けど、合わせる顔がなかったし、ただ謝りたかっただけで、許してほしいと思っていたわけでもなかったんす」
「……マオ。あなたが行ってきたことは、ホムラさんや、他の魔族から色々と聞いてきました。そして、十分に反省していることも。……それでも、あなたに合わなかったのは、マオ自身ではなく、私の方に問題があったと、ハクト様と行動していて気づかされました。私は……」
リューナは、自分ではなくマオが人間界に一番乗りした、という事実に嫉妬していた事、そして、マオではなく自分なら上手くやっていた、と無意識に考えていた。
けれど、俺と一緒に行動することで、その考えを自覚したこと。
そして、マオを許せない自分自身が、器が小さいと思えたことを語った。
「ですので、謝るのは私の方です。本当に、申し訳ありませんでした」
「……私の方が謝りに来たのに、何故か謝られてしまったっす」
と、マオは苦笑しながら言った。
リューナが仲直りしたい、ということは言わず、今後の方針とかを決める為話し合いをしたい、その場にはリューナも同行する、といった内容を送った。
……リューナ曰く、本当の事を言うと彼女は空回りしそうですので、とのことだったからな。
すると、リンフォンに音声モードでマオから掛かって来た。
すぐに出ると、
「ハクトの兄貴、さっきの内容本当っすか!? リューナの方は、私と会って大丈夫なんすか!?」
と、かなりの大声で言われた。
「ちょ、ちょっと落ち着け! もちろん、リューナには相談したよ。それに、マオに俺の試練を手伝ってもらうなら、一度もリューナと顔を合わせない、ってのは無理だしな」
「それは、確かにそうっすけど……。リューナの方は、何か言ってたっすか?」
「うーん。……秘密、ってことにしてもいいか?」
リューナは仲直りしたいと思っている、とは伝えられないし、いい感じの嘘も思いつかなかった。
「ちょ、それはひどいっす!? 秘密にされると、余計に気になるっすよ!」
うん、気持ちはわかる。
……けど、言わないのはマオのためでもあるので、許してほしい。
「まあまあ。それで、マオの予定はどうだ?」
「それなら、いつでも大丈夫っす! 何なら今からでもいいっよ! 何か予定があっても大丈夫にするっす!」
とのことだったので、明日にした。
あんまり遅いと、リューナも落ち着かないだろうし、気が変わってしまう可能性もあるしな。
……とはいえ、さすがに今から、ってのはやめておいた。
場所は、転移で移動できるから当日の直前でいい、とのことだった。
場所を伝えられると、今すぐにその場所に行ってしまいそう、という理由だった。
……一晩中待っていられると、こっちも落ち着かないし、そうしておこう。
そして、マオとの通話を終えると、
「聞いていたと思うけど、明日マオと会うことにしたよ。リューナの予定は大丈夫だったよな?」
と伝えた。
予定がある時には、いつも一週間前までには言ってくれるからな。
「ええ。……それにしても、久々に、彼女の声を聴きました。元気そうでよかったです」
「そうだな。……ちょっと元気すぎるくらいだ」
それを聞いたリューナは、くすっ、と笑い、
「そうですね。……明日、本当に彼女と会うんですね」
と言った後で、少し不安そうな表情になった。
「お互い、喧嘩したいわけじゃないし、何も心配はいらないさ」
「……そう、ですよね」
リューナにはそう言ったけど、逆に俺の方がちょっと不安なってきてしまった。
……念のため、ホムラにも相談しておこうかな。
◇
マオとの予定があるため、昨晩も魔皇の城に泊まった。
念のため、ソフィアには連絡しておいたし、大丈夫だろう。
今日の朝食は、気もそぞろなリューナに代わって俺が作ってみた。
リューナは、ハクト様に作らせるなんてとんでもない、という感じだったが、今日はリューナにとって重要な日だからと無理やり納得させた。
それに、焼く関係はホムラにも手伝ってもらったしな。
……うん、今日は朝からホムラも来ていた。
昨日ホムラに相談したところ、それならオレの土地にするのがいい、と言われた。
俺としては、この城の空き部屋を借りようかと思っていたんだけど……、
「それだと、マオの奴が落ち着かないかもな。マオとはそんなに交流のない魔皇もいるし、自分で言うのも難だが、ここは一応魔界の頂点が集まる城だしな」
と言われた。
……そうだった。
城に自室があって、昨日もそこで寝泊まりしてたから、感覚がおかしくなっていた。
部屋を借りたので来て欲しい、と言われた場所が王城の一室。
……うん、俺だったら行きたくないし、落ち着かなさそうだ。
ということで、ホムラの土地を使わせてもらうことにした。
◇
というわけで、ホムラの土地に来たのだが……、
「うっし。リューナの方は椅子と机を準備できたな。そんじゃ、ハクト。マオに連絡だ」
と、何故かホムラも同行していた。
本人曰く、オレの土地だから持ち主も同行するのが普通、とのことたっだ。
……この場所をすぐに勧めたのは、それが理由か。
さっそくマオに連絡すると、待ってましたと言わんばかりに、姉貴の土地っすね! すぐ行くっす! と言われた、のだが……。
「……あれ?」
一分ほど経っても、姿が見えなかった。
あの話し方であれば、通話が切れてすぐに現れると思っていたんだけどな。
ちょっと、肩透かしを食らった気分だ。
「あっ、あそこにいました! ……ゆっくりと、こちらに歩いてきているようですね」
と、リューナが遠くの方を指さした。
……あの、豆粒みたいな人影が、マオ、なのか?
「あんのバカめ。……ハクト、リューナ。ちょっと行ってくる」
そう言うと、ホムラは転移の魔法を使った。
そしてすぐに、遠くに見えている人影が二つになった。
と思ったら、その人影が消え、マオの首根っこを摑まえて、ホムラが戻って来た。
「ふぅ。こいつ、転移の直前になって急に緊張してきたようでな。無意識に、ちょっと離れた場所に転移したらしい。んで、緊張を紛らわすように、ゆっくりとこっちに歩いてきたそうだ」
本当に直前だな!
……いや、元から無意識に緊張していて、直前になって自覚した、って感じかもな。
「ううっ、ホムラの姉貴、ひどいっす……」
「……久しぶりですね、****。いえ、今はマオ、と言った方がいいでしょうか?」
「……そうっすね。そっちは、リューナ、だったっすよね?」
「ええ。……あの、マオ」
「あ、ちょっと待ってほしいっす。まずは、先に言わせてもらいたいことがあるっす」
「……ええ、わかりました」
マオは一度深呼吸をし、普段の様子とは打って変わって、おもむろに話し始めた。
「我、いや、私は、リューナと喧嘩した後、ホムラの姉御から仕事を与えられたっす。その内容というのが、人間界から観光に来た人たちの案内役、なんすよ。人間界で悪さをした私にそんな仕事をやらせるなんて、ホムラの姉貴はおかしいっすよね? けど、その仕事をしていくうちに……」
マオは、ホムラにサポートされながらも仕事をしていくことで、人間界について色々と理解したこと、そして改めて、自分がやらかしてしまったことを理解したこと、そして、誰かの役に立つために色々な技術等を学んだことを、リューナに語った。
「そして、自分の罪を理解したことで、きちんとリューナに謝りたいと思ったっす。あの時は、本当に申し訳なかったっす。……本当はもっと早く謝りたいと思っていたっす。けど、合わせる顔がなかったし、ただ謝りたかっただけで、許してほしいと思っていたわけでもなかったんす」
「……マオ。あなたが行ってきたことは、ホムラさんや、他の魔族から色々と聞いてきました。そして、十分に反省していることも。……それでも、あなたに合わなかったのは、マオ自身ではなく、私の方に問題があったと、ハクト様と行動していて気づかされました。私は……」
リューナは、自分ではなくマオが人間界に一番乗りした、という事実に嫉妬していた事、そして、マオではなく自分なら上手くやっていた、と無意識に考えていた。
けれど、俺と一緒に行動することで、その考えを自覚したこと。
そして、マオを許せない自分自身が、器が小さいと思えたことを語った。
「ですので、謝るのは私の方です。本当に、申し訳ありませんでした」
「……私の方が謝りに来たのに、何故か謝られてしまったっす」
と、マオは苦笑しながら言った。
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