異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第九章

第147話 これが彼女の全力全開

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「あー、もう食べれないっす……。やっぱり、本気を出したヒカリさんの料理は絶品っすね」

「そうですね。……いつまでも、この領域に行ける気がしないです」

「これが、ヒカリの本気なのか。もちろん、平時の料理もおいしかったけど、今回の料理はなんというか、格が違う感じだったな」

 うん、今回の料理は本当に別格だった。
 おかげで、お腹がはちきれそうなほど食べてしまった。

 おそらく皆もそうだったのだろうか、いつもより大量に用意してあった料理たちが、綺麗さっぱり消え去っていた。

 味は……、なんと表現したらいいのだろうか。

 前に食べたことのある料理もあったのだが、味に旨味や深みがより出ていたとは思う。
 ……うーむ、どうもうまく表現できないな。

「それはね、ハクト君。ヒカリが本気、いや、全力で料理を作る時には、料理に魔力が入るからなんだ」

 料理に、魔力が?
 ……なるほどな。

 魔界の食材が美味しい理由の一つが、魔力が多くこもっている、だったな。
 って、あれ?

「そういえば、ヒカリはどこにいるんだ?」

「ああ、ヒカリの奴なら少し休んでるぜ。流石のヒカリでも、今回みたいな料理の後には、三十分くらいは休む必要があるみたいだからな」

「だから、手伝いはボクしか呼ばれなかったんだよ~。この時のヒカリは誰も手伝えないからね~。ボクも、お皿を用意したり、料理を運ぶくらいしかしてないんだ~」

 ……言葉通り、本当に全力だな。
 そういう意味でも、本当に特別な時だけの料理、って感じだな。



 そんな状態だったので、食後はしばらくはぼーっとしていた。
 少し周りを見てみると、他の皆も多かれ少なかれ、同じような状態だった。
 ……俺よりも確実に食べなれているであろう皆でも、こうなるのか。

 少し時間がたって多少お腹がこなれてきたな、と思ったところで、ヒカリが休憩から戻って来た。
 ヒカリに料理の感想とお礼を言ったところで、ここにある料理は食べ尽くされてしまったことに思い至った。

 俺の視線から察したヒカリが、本気の時のヒカリは料理の量自体も多く作ってしまうようで、休憩しながらその残りの一部を食べた、と説明してくれた。
 また、料理はまだまだ大量にあるようだ。

 ……ということは、あの料理も、あの料理も、まだ残っている、ってことか。
 それなら、ヒカリ、……と他の魔皇が良ければ、後で少し包んでもらおうかな。

 それにもし今日会えれば、ソフィアにおすそ分けもしたいしな。



 皆も復活しだし、自然とまた談笑が始まった。
 マオはヒカリとも自然体で話しているみたいだし、アオイの説明通り、怖がるのはヒカリが怒っている時だけみたいだな。

 のんびりとした雰囲気の中で色々な話をしていたら、あっという間に時間が経っていた。

 そして当初の予定通り、帰る際に料理をもらうことにしたのだが、少し、とは言えない量を包んでもらった。
 ……まあ、ソフィアなら大丈夫だろう。

 そして、最近では当たり前になりつつある、俺の家にある転移門に移動し、すぐ横にある教会へと向かった。
 教会に入るとモニカが居るのを確認したので、ソフィアがいるかを聞いてみた。

 すると、いつもの部屋にいるとのことだったので、料理のおすそ分けを渡してからソフィアに会いに行ったのだが、

「こんにちは、ハクトさん。……いえ、この時間ですと、こんばんは、がいいのでしょうか? ハクトさんはどう思いますか?」

 と、唐突に疑問を投げかけられた。

「あー、えっと。……まだ明るい内はこんにちは、で、暗くなったらこんばんは、でいいんじゃないか? まあ、そもそもただの挨拶なんだし、そんなに深く考えなくてもいいと思う」

「そうですね。それで、ハクトさんは何か御用でしょうか? 私の方はハクトさんに用がありますので、来ていただいてちょうどよかったです」

 用って何だろう?
 ……変なことじゃなければいいんだけど。

「俺の方は、料理のおすそ分けだな。今日はな……」

 と、簡単に今日の出来事を説明した。

「ヒカリさんが、全力で作った料理ですか。それは、とても興味深いですね。ハクトさん、ありがとうございます」

「このおいしさを、色んな人に共有したくてな。さっきモニカに会ったから、教会の人にも配ってほしいとお願いしたんだ」

「それは重要ですね」

「だな。そんで、ソフィアの用ってのは何なんだ?」

 そう尋ねると、ソフィアは

「ハクトさんの家のことです。ハクトさんから意見を伺った後で、漫画を読みつつ私なりに色々と考えてみました」

 漫画を読みつつ、ってのがソフィアらしいな。

「そして、さきほど設計図が完成しました。ですので、ハクトさんの確認していただきたいと思いまして」

「それはもちろん。というか俺の家の話だからな」

 うん。
 そもそも、俺ではなくソフィアが設計図を作っている時点であれなんだけどな。

 まあともかく、まずは確認してみるか。



 ……うん。
 俺は、なんの設計図を見ていたんだっけ?

「なあソフィア。この設計図なんだが、ショッピングモールの案内板みたいな見た目をしてるんだが……」

 俺が行ったことのあるモールと比べると、そもそものスケールが小さかったり、通路が狭かったりしているが、区画がわかれていたり、中央に吹き抜けがあったりと、ぱっと見はそんな感じに見えた。
 流石に、エスカレータではなく階段だったけど。
 
 ……ただ、気のせいだろうか。
 ちょうどエレベータが配置されていそうな、四角い部分があるように見える。

「よくわかりましたね。まさに、ショッピングモールを参考に設計してみました。ハクトさんからアイディアをいただいた後、色々と考えていはみたのですが、各建物に階段を設置すると、スペースが無駄になってしまうことに思い至りました」

 前に、こんなに広いなら小屋を建てたくなる、って俺が言ったやつだな。
 確かにそれだと、各スペースに階段を設置することになるし、階段の数が無駄に多くなってしまうな。

「そんな時、漫画でショッピングモールに買い物に行く場面が登場し、この構造がよいのでは、と考えました。そして、他の漫画なども参考にして区画を分け、魔道エレベータや階段を設置することで、スペースをより広く確保できたと思います」

 ……今、魔道エレベータとか言ったよな。
 やっぱり、気のせいじゃないのね。
 
「……とりあえず、設計図の見た目がこうなっている理由はわかった。それじゃあ、この一番奥にある、大きなエリアはなんだ? ここだけ、かなり細かく書かれているみたいだけど。それと、魔道エレベータはどこに配置されているんだ?」

 この部分はさらに、一階から三階まで移動できるような階段が配置されており、また、近くに魔道エレベータと思しきものが書かれていた。

「ここは、私の図書館を配置するスペースですね。そして、この部分が魔道エレベータです。図書館の近くにあると便利ですので」

 設計者特権を発揮してやがる。
 それ、本当は俺が持っている権利な気がするんだけど……。

 いや、何もかもが今更だったな。

「……とりあえず、わかった。それじゃ、他のスペースはどんな配置を考えているんだ?」

「それなのですが、こちらを利用したい方の希望が多く、私の方でまとめるのが難しいと判断しました。そのため、当人同士て話し合っていただこうと思っています。そういった意味でも、この方式はいいですね。広いスペースが欲しい場合は、二つ以上の区画を繋げることもでき、自由度もありますので」

 ……もしかして、自分のスペースを作ったことで満足した、とかじゃないよな?

「もちろん、まずはハクトさんが自身のスペースなどを確保するのが先ですが」

 そう言っているソフィアは、ちゃっかりと自分のスペースを確保してるけどな。
 ……いやまあ、そもそもこの土地も建物も俺が買ったとかじゃないし、いいんだけどさ。
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