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第一章 知り合いが どんどん増える 一週間
第18話 別に膝に矢を受けたわけではない
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次の日。
朝食等を済ませ教会に行くと、既にソフィアが待っていた。
「おはようございます、ハクトさん。さっそくですがこちらの服に着替えてください」
「え? 急にどうして?」
混乱しつつもソフィアから服を受け取ったが、俺でもわかるくらい上質な生地が使われているようだった。
「本日はこの国の王城に行きますので、可能であれば質の良い服を着ていくことが推奨されます」
「ちょっ!? 聞いてないよ!? 王城って王様がいる城のことだよね? なんで急に!?」
「異世界人が教会に来た際には、教会が存在する国にそれを報告する義務があります。その報告を行ったところ、可能であれば一度王城を訪れて王自ら話を聞きたい、という旨の書状が一昨日届いておりました。ハクトさんの予定を確認し報告した結果、先方の予定も空いており、本日来城することになりました」
「そういう問題じゃなくてね!? ってもう行くって返事しちゃったのか! というか王様に会うの!? 俺マナーとかも全然知らないよ!?」
「謁見ではなく私的に会いたいとのことで、多少の無礼があっても問題ないと書状にありました。この国の王は国民にも気さくに接される方であると言われていますので大丈夫だと思われます。また、私が同行して案内しますので、道順を覚える必要もありませんので、そちらも安心してください」
安心してください、気さくですよ! と言われても全然安心できない。
「いや、でも一般市民が国王に会うってかなりの大事のはずだよ!」
「ハクトさんはこの国の国民ではないので大丈夫ですね」
「ああもう、そういうことじゃなくて!」
なんてやり取りをしたが、既に行くと返事をして行かないという方が確実に失礼だ。
……うん、こうなったのはソフィアが原因だ。
全部ソフィアのせいだ、の精神で行こう。
◇
というわけで転移門を使って王都にやってまいりました。
いやー、この国の首都らしくとっても栄えていますね~、なんて適当な事を考えて気をまぎらわせていたが、やっぱり緊張するな。
そんな俺をよそに、ソフィアは転移門近くにある受付のようなカウンターがある建物に近づくと、何かアクセサリーのような物を取り出し受付っぽい人に見せていた。
そして、数回のやり取りをすると、
「確認がとれました。こちらの建物の中に王城に向かう転移門がありますので行きましょうか」
と言われ、ソフィアと一緒に建物の中に入った。
中には人がぎりぎり二人通れるくらいの大きさで、起動していない転移門があり、別の入口から兵士のような恰好をした男性が入ってきた。
王城に向かう転移門だし、セキュリティの為にいるのだろう。
兵士は転移門を起動すると門に入るようこちらに促した。
ソフィアはこちらに向き直り、
「では行きましょうか。私の後に付いてきてください」
と言われたので、おとなしくついて行った。
兵士にスタァァァップ! されたくないからな。
いや、罪人とかじゃないからさせる理由は全くないけどさ。
◇
転移門を通った先は円形の広いホールだった。
周りを見回すと、他にも同じような転移門があり、街の色んな場所から王城に来れるようになっているのだろう。
その中に両開きの扉があり、両脇には兵士が立っていた。
ソフィアと一緒にその扉まで行くと、ソフィアは兵士にまた例の物を見せていた。
すると片方の兵士が中に入り、少し待つとメイドさんが出てきた。
本物のメイドである。
コスプレとかなんちゃってではない、ヴィクトリアンなメイド服を着た、正真正銘本物のメイドさんである。
思わずさん、をつけてしまうほどメイドさんである。
……落ち着け俺。
「ソフィア様、ハクト様でいらっしゃいますね。待合室までご案内いたします。準備が整うまでそちらでお待ちください」
と言われ、表面上は大人しくついて行った。
◇
待合室まで案内されるまでの間、最後には綺麗なお辞儀をして去っていたメイドさんに、部屋の扉を開ける仕草からお辞儀に至るまで、本物はすごいなぁ、と感動しきりだった。
部屋に入り着席すると、気になっていたことをソフィアに聞いてみることにした。
「なあソフィア、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」
「大丈夫です。メイドについてですが、基本的に雇うことは難しいですね。この世界のメイドは、貴族などの高い身分に仕える職業となっています。そのために様々な技術を身につけており、平民に雇われることはほとんどありません。一般の家庭では、家事や掃除などを依頼する時には通いの家政婦を雇っていますね」
「そうじゃなくって! いや、本物のメイドってものを見たことがなかったから、つい注目しちゃったけどさ。……こほん。えっと、さっき色んな人に見せていたやつって何なんだ?」
「これですか? こちらは教会に所属する巫女であることを証明する物ですね。本日は王城からの招待でしたので、それを証明するために提示しました」
「なるほど。やっぱりそういったものもあるのか。あ、あと一応聞いておきたいことがあったんだ。多少の無礼は問題ないとはいえ、王様と今のような形で会う時のマナーとかを……」
なんてソフィアとの会話をしながら、呼ばれるまでしばらく待った。
それと、メイドさんに気を取られて気づくのが遅れたけど、王城というだけあって調度品から何からすごかった。
◇
呼びに来たメイドさん(さっきと違う人だった)に会談用の部屋まで案内された。
楽にしていて大丈夫です、と言われてもなかなかそうもいかず、緊張しながら待っていると
「む。少し待たせたかな。私がこの国の王、アウルと言う。異世界からの客人ハクトよ、歓迎するぞ。教会の巫女、ソフィアもな」
「は、はい。ハクトと申します。よろしくお願いいたします」
一人だけ護衛を付けたこの国の王、アウル王が入室してきた。
国のトップだからか、オーラが違う。
というかソフィアに年齢を確認したところ50代だと聞いていたが、まだ20代だと言われても信じてしまうような、ブロンドな髪色をした若々しい見た目の男性だった。
おそらく魔力が多いために若く見えるのだろう。
魔力が多いと長命になるらしいので、年を取るまでの時間も長いのだろうな。
俺は王様が入ってきたことを確認するとすぐ席を立ち、着席を促されるのを待っていたが、なぜかソフィアはそのまま座っていた。
「え!? さっき聞いたマナーだと、目上の人が入ってくるときは立ち上がって、着席を促されるまで待つって言ってなかった!?」
王様がいる前にもかかわらず、思わずつっこんでしまった。
「はははっ! なに、ソフィア殿は神に創られし天使。公ではない場では、一国の王を目上の存在と扱うことはできまい」
ああ、そう言われるとそうか。
というか、一国の王様には天使であることは知られているんだな。
「いえ、今回は巫女と言う立場で来ています。普段そういった習慣をしていませんでしたので、思わず忘れてしまいました。申し訳ございません」
俺はずっこけた。
さっき説明した本人が忘れるってどういうこと!?
それを聞いた王様も、なんというかバツの悪そうな顔をしているし。
王様は直ぐに表情を元に戻すと
「ああハクトよ。そちらも座って構わんよ」
「はい。……あ、えっと。急に叫んで申し訳ありませんでした」
俺は席に着くと、先ほどのつっこみを謝罪した。
……多少の無礼は大丈夫だって書いてあったし、不敬罪とかにされないよね?
「なに、構わんよ。しかし聞いてはいたが、天使というのは独特の感覚? を持っているのだな」
いえ、多分ソフィアだけです。
……いや、話を聞いた限り他の天使も怪しい気がして来た。
まあともかく、簡単に許してもらえてよかった。
「さて、本日招待した理由なのだが、数日間こちらの国で過ごした印象を聞きたいと思ってな。異世界から来た人の目線では、この世界がどのように見えているのかを知りたくてな。それとここ数日どのように過ごしたのかも興味がある。王としても、一人の個人としても、な」
◇
最初こそ緊張していたが、会話をしている内に話がはずんでいった。
気さくな王様という話も本当のようだ。
王様の話術がすごいってのもあるだろうけど。
魔族の話をしていたとき、「高位の魔族か……」とのつぶやきが聞こえた気がしたけど、何かまずかったのだろうか。
それ以上何も聞かれなかったし、大丈夫だよね?
「なるほどな、参考になった。さて、昼時に合わせて私的な会食の準備がしてある。是非とも参加して貰いたいのだがどうかね?」
会食かぁ。
私的な、といっていたし参加者は俺とソフィア、そして王様って感じだろうか?
まあ今までの会話を通じて緊張もしなくなったし、大丈夫かな。
ソフィアの方を見るとうなずいたため、参加する旨を伝えた。
ソフィアがうなずいた理由って、もしかして、お腹は空いています、とかじゃないかと考えてしまった。
……まあ、どっちでも参加する事には変わらないし、いいか。
朝食等を済ませ教会に行くと、既にソフィアが待っていた。
「おはようございます、ハクトさん。さっそくですがこちらの服に着替えてください」
「え? 急にどうして?」
混乱しつつもソフィアから服を受け取ったが、俺でもわかるくらい上質な生地が使われているようだった。
「本日はこの国の王城に行きますので、可能であれば質の良い服を着ていくことが推奨されます」
「ちょっ!? 聞いてないよ!? 王城って王様がいる城のことだよね? なんで急に!?」
「異世界人が教会に来た際には、教会が存在する国にそれを報告する義務があります。その報告を行ったところ、可能であれば一度王城を訪れて王自ら話を聞きたい、という旨の書状が一昨日届いておりました。ハクトさんの予定を確認し報告した結果、先方の予定も空いており、本日来城することになりました」
「そういう問題じゃなくてね!? ってもう行くって返事しちゃったのか! というか王様に会うの!? 俺マナーとかも全然知らないよ!?」
「謁見ではなく私的に会いたいとのことで、多少の無礼があっても問題ないと書状にありました。この国の王は国民にも気さくに接される方であると言われていますので大丈夫だと思われます。また、私が同行して案内しますので、道順を覚える必要もありませんので、そちらも安心してください」
安心してください、気さくですよ! と言われても全然安心できない。
「いや、でも一般市民が国王に会うってかなりの大事のはずだよ!」
「ハクトさんはこの国の国民ではないので大丈夫ですね」
「ああもう、そういうことじゃなくて!」
なんてやり取りをしたが、既に行くと返事をして行かないという方が確実に失礼だ。
……うん、こうなったのはソフィアが原因だ。
全部ソフィアのせいだ、の精神で行こう。
◇
というわけで転移門を使って王都にやってまいりました。
いやー、この国の首都らしくとっても栄えていますね~、なんて適当な事を考えて気をまぎらわせていたが、やっぱり緊張するな。
そんな俺をよそに、ソフィアは転移門近くにある受付のようなカウンターがある建物に近づくと、何かアクセサリーのような物を取り出し受付っぽい人に見せていた。
そして、数回のやり取りをすると、
「確認がとれました。こちらの建物の中に王城に向かう転移門がありますので行きましょうか」
と言われ、ソフィアと一緒に建物の中に入った。
中には人がぎりぎり二人通れるくらいの大きさで、起動していない転移門があり、別の入口から兵士のような恰好をした男性が入ってきた。
王城に向かう転移門だし、セキュリティの為にいるのだろう。
兵士は転移門を起動すると門に入るようこちらに促した。
ソフィアはこちらに向き直り、
「では行きましょうか。私の後に付いてきてください」
と言われたので、おとなしくついて行った。
兵士にスタァァァップ! されたくないからな。
いや、罪人とかじゃないからさせる理由は全くないけどさ。
◇
転移門を通った先は円形の広いホールだった。
周りを見回すと、他にも同じような転移門があり、街の色んな場所から王城に来れるようになっているのだろう。
その中に両開きの扉があり、両脇には兵士が立っていた。
ソフィアと一緒にその扉まで行くと、ソフィアは兵士にまた例の物を見せていた。
すると片方の兵士が中に入り、少し待つとメイドさんが出てきた。
本物のメイドである。
コスプレとかなんちゃってではない、ヴィクトリアンなメイド服を着た、正真正銘本物のメイドさんである。
思わずさん、をつけてしまうほどメイドさんである。
……落ち着け俺。
「ソフィア様、ハクト様でいらっしゃいますね。待合室までご案内いたします。準備が整うまでそちらでお待ちください」
と言われ、表面上は大人しくついて行った。
◇
待合室まで案内されるまでの間、最後には綺麗なお辞儀をして去っていたメイドさんに、部屋の扉を開ける仕草からお辞儀に至るまで、本物はすごいなぁ、と感動しきりだった。
部屋に入り着席すると、気になっていたことをソフィアに聞いてみることにした。
「なあソフィア、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」
「大丈夫です。メイドについてですが、基本的に雇うことは難しいですね。この世界のメイドは、貴族などの高い身分に仕える職業となっています。そのために様々な技術を身につけており、平民に雇われることはほとんどありません。一般の家庭では、家事や掃除などを依頼する時には通いの家政婦を雇っていますね」
「そうじゃなくって! いや、本物のメイドってものを見たことがなかったから、つい注目しちゃったけどさ。……こほん。えっと、さっき色んな人に見せていたやつって何なんだ?」
「これですか? こちらは教会に所属する巫女であることを証明する物ですね。本日は王城からの招待でしたので、それを証明するために提示しました」
「なるほど。やっぱりそういったものもあるのか。あ、あと一応聞いておきたいことがあったんだ。多少の無礼は問題ないとはいえ、王様と今のような形で会う時のマナーとかを……」
なんてソフィアとの会話をしながら、呼ばれるまでしばらく待った。
それと、メイドさんに気を取られて気づくのが遅れたけど、王城というだけあって調度品から何からすごかった。
◇
呼びに来たメイドさん(さっきと違う人だった)に会談用の部屋まで案内された。
楽にしていて大丈夫です、と言われてもなかなかそうもいかず、緊張しながら待っていると
「む。少し待たせたかな。私がこの国の王、アウルと言う。異世界からの客人ハクトよ、歓迎するぞ。教会の巫女、ソフィアもな」
「は、はい。ハクトと申します。よろしくお願いいたします」
一人だけ護衛を付けたこの国の王、アウル王が入室してきた。
国のトップだからか、オーラが違う。
というかソフィアに年齢を確認したところ50代だと聞いていたが、まだ20代だと言われても信じてしまうような、ブロンドな髪色をした若々しい見た目の男性だった。
おそらく魔力が多いために若く見えるのだろう。
魔力が多いと長命になるらしいので、年を取るまでの時間も長いのだろうな。
俺は王様が入ってきたことを確認するとすぐ席を立ち、着席を促されるのを待っていたが、なぜかソフィアはそのまま座っていた。
「え!? さっき聞いたマナーだと、目上の人が入ってくるときは立ち上がって、着席を促されるまで待つって言ってなかった!?」
王様がいる前にもかかわらず、思わずつっこんでしまった。
「はははっ! なに、ソフィア殿は神に創られし天使。公ではない場では、一国の王を目上の存在と扱うことはできまい」
ああ、そう言われるとそうか。
というか、一国の王様には天使であることは知られているんだな。
「いえ、今回は巫女と言う立場で来ています。普段そういった習慣をしていませんでしたので、思わず忘れてしまいました。申し訳ございません」
俺はずっこけた。
さっき説明した本人が忘れるってどういうこと!?
それを聞いた王様も、なんというかバツの悪そうな顔をしているし。
王様は直ぐに表情を元に戻すと
「ああハクトよ。そちらも座って構わんよ」
「はい。……あ、えっと。急に叫んで申し訳ありませんでした」
俺は席に着くと、先ほどのつっこみを謝罪した。
……多少の無礼は大丈夫だって書いてあったし、不敬罪とかにされないよね?
「なに、構わんよ。しかし聞いてはいたが、天使というのは独特の感覚? を持っているのだな」
いえ、多分ソフィアだけです。
……いや、話を聞いた限り他の天使も怪しい気がして来た。
まあともかく、簡単に許してもらえてよかった。
「さて、本日招待した理由なのだが、数日間こちらの国で過ごした印象を聞きたいと思ってな。異世界から来た人の目線では、この世界がどのように見えているのかを知りたくてな。それとここ数日どのように過ごしたのかも興味がある。王としても、一人の個人としても、な」
◇
最初こそ緊張していたが、会話をしている内に話がはずんでいった。
気さくな王様という話も本当のようだ。
王様の話術がすごいってのもあるだろうけど。
魔族の話をしていたとき、「高位の魔族か……」とのつぶやきが聞こえた気がしたけど、何かまずかったのだろうか。
それ以上何も聞かれなかったし、大丈夫だよね?
「なるほどな、参考になった。さて、昼時に合わせて私的な会食の準備がしてある。是非とも参加して貰いたいのだがどうかね?」
会食かぁ。
私的な、といっていたし参加者は俺とソフィア、そして王様って感じだろうか?
まあ今までの会話を通じて緊張もしなくなったし、大丈夫かな。
ソフィアの方を見るとうなずいたため、参加する旨を伝えた。
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