異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第二章 魔道具と 魔族とけいきの いい話

第26話 説明しよう! 魔道具とは……

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「うん、資料の作成はこれでいいかな。後は工房に帰ってからの作業だね」

 パティオさんにさっき聞きたそうにしていた、フードプロセッサなどの道具、ローストビーフなどの料理について教えていたが、アオイの作業が終わったようだ。

「アオイさん、この後の予定は空いているかしら? 折角せっかくの機会ですわ。もっとお話ししたいのですわ!」

「もちろんかまわないよ。むしろ、こちらからお願いしたいくらいかな。人間界の人たちとも仲良くしたいからね」

「でしたら気軽にクレア、と呼んでいただきたいのですわ! それと、わたくしはこれが口癖なのですわ!」

 俺の時もそうだったな。最初にアオイとクレアが会った時は、ですわ、がなくなってたし、あれが余所行きの口調ってことかな?

「私も、魔族の方から魔界ならではの料理を聞きたいと常々思っていたんだ! ……それに、今日アオイさんと話して、魔族の方ともっと交流してみたいと思えたよ。やっぱり実際に話してみるってのは大事なんだね」

 パティオさんは緊張がとれたみたいだし、魔族への苦手意識もなくなったみたいで良かった。

「パティオさん、夕食の準備は大丈夫でしょうか?」

 とメアリさんがパティオさんに話しかけていた。
 壁にある時計を見ると四時前で、昼食からは大分時間が経っていた。

「え!? ああ、本当じゃないか! 今日はスープを仕込む予定だったんだ! アオイさん、ハクト君、ソフィアさん。今日は色々な話ができて良かったよ。また是非とも話をしたいね。そして王女様、このような機会を設けていただきありがとうございます。それでは、失礼!」

 と、時計を確認したパティオさんが急いで去っていった。
 ……ショートケーキも初めてであんなにおいしく作れるし、そもそも王城でシェフをやっているすごい人なはずなんだけれど、何というかそれを感じさせない人だったな。

「……こほん、ですわ。アオイさんはどうして魔道具がそんなに好きになったのか、聞いてもいいのですわ?」

「もちろん! でも、何から話そうか。そうだね、そもそも魔道具っていうのは、昔は魔界に存在していなかったんだ」

「そうなのですわ?」

「魔界っていうのは魔力に満ちていて、そのために魔族は魔法が得意な者が多い、っていうのは知っているかな? それで、何か困ったことがあれば魔法で解決してきたんだ。……それと、力で他人を支配する魔族がいた頃は、誰かに魔法を使わせることで生活を楽にする、ってことが当たり前に行われていたんだ。そういった状況から、道具を作って生活を快適にしよう、って発想が出てこなかったんだと、私は思っているよ」

 アオイは、力で他人を支配する、って話の時は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 ……そういえばホムラも言っていたな。昔は力の強いやつが無理やり弱者を従えてて、今でも人間界ではこのイメージが残っている、って。

「そんな環境だったから、人間界と交流が始まり、魔道具という存在を知った時は衝撃を受けたよ。……私はそれまで色々と魔法を研究していたんだけど、それを道具にできるなんてすごい! ってね」

「……もしかしてアオイさんは、魔界の状況を変えたくて魔法を研究していたのですわ?」

「実はそうなんだ。それに、私だけじゃなくて、魔皇全員が魔界の状況を何とかしたいとずっと思っていたんだ」

「そうだったのですわ……」

 アオイやホムラだけじゃなくて、六人全員がそう思っていたのか……。

「それじゃ、話を元に戻すね。それで、魔道具について知った後、色々な本を読んで勉強していくうちに魔道具の魅力を知ったんだ。魔力を流すだけで、いや、魔石を使えばそれすら必要とせずに、誰でも魔法を再現できること、魔法陣を調整することでその魔法を細かく制御できること、魔法陣を組み合わせて様々な効果の魔道具を作り出せることと、魔道具に無限の可能性を感じたんだ!」

 いかん! アオイが暴走し始めてる!

「アオイ! アオイ! ちょっと暴走しかかってる。落ち着いて!」

「……ふう。ありがとうハクト君。魔道具について語るうちに、どうやら興奮してしまったようだね。元から魔法を研究してたこともあって、すっかり魔道具に夢中になってしまったって感じだね」

「そうだったんですの。それで、今は魔界でも魔道具は使われているんですの?」

「そうだね。……あまりにも私が夢中になるものだから、皆が興味を持ってね。切っ掛けがどうあれ、魔道具が普及することになって良かったよ」

 ……アオイの暴走がいい結果に繋がったってことか。

「そういえば俺、魔道具についての仕組みとかは全然知らないな」

 とつぶやくと、クレアがはっ! となり

「私《わたくし》も、普段からお世話になっているのに、どんな風になっているのか知らないのですわ!」

「魔界でも知らない人は多いんじゃないかな。ただ、私が説明しようとすると、何故か皆どこかへ行ってしまうんだよね」

 ……多分、説明中にアオイが止まらなくなるんだろう。
 うーん、魔道具についてはもっと知りたいと思ったけど、止まらなくなっちゃったらどうしよう?

「ご歓談中失礼します。お飲み物やお茶請けなどはいかがいたしましょうか?」

 話が途切れたタイミングでメアリさんが飲み物の提案をしてきた。
 あっ! 飲み物や食べ物を飲みながら会話すれば、アオイも少しは冷静になって話をしてくれるかな?

 ……メアリさんはそれを考えて提案してくれたのかもしれないな。
 流石だ。

「ありがとうございます。いただきます」

 そしてソフィアが即答していた。



「ふぅ。それじゃ魔道具の仕組みについて簡単に説明しようか」

 用意してくれた紅茶と焼き菓子をいただきながら、アオイに魔道具について簡単に説明してもらうことにした。
 うん、詳しく、ではなく簡単に、だ。

「とはいっても一般に使われているものはそんなに複雑じゃないんだけどね」

「そうなのか? 俺のいた世界の家電とかは、結構複雑になっているみたいだけど」

 家電は色々な回路が入っていたりするけど、知識がないと理解できる気がしない。

「うーん、そうだね。例えば空間の温度を調整するための魔道具は、風属性と火属性の魔法陣を組み合わせているんだ。魔道具の中にある空気を温めたり、冷やしたり、ってするのが火属性の魔法陣、それを部屋中に送るのが風属性の魔法陣、って感じかな。どちらも魔法で再現するのは簡単だし、それは魔法陣でも同じことなんだ」

 あっ、そうか。元の世界では冷やす、温める、風を起こすのには魔法みたいに行かないもんな。
 それは複雑化しそうだ。
 それと、火属性の魔法は冷やす、ってこともできるのか。今度ホムラとかに詳しく聞いてみよう。

「それと、魔石や使用者からの魔力を流すライン、これを魔力回路って言うんだけど、この途中に流す魔力量を制御する機構を入れて、温度や風量を調整できるようにしているんだ」

「なるほどですわ! もっと何か複雑なことをしていると思っていたのですわ。けれど、魔力の量を変えることで、強さを制御していたのですわね!」

「そうだね。ただ、簡単な魔法で再現できない物、例えばリンフォンはやっぱり複雑になるんだ。……今回は簡単な説明ってことだし、詳しい説明は今はやめておいたほうがいいね。まあともかく、中の魔法陣を開発するのには苦労してね。異世界の知識が無かったら作ることはできなかったよ」

 簡単に説明して、と言っておいてよかった。

 それと、悪いがアオイ。
 詳しく説明されても理解できる気がしないし、アオイが止まらなそうだし、詳しく聞くことは無いと思う。

「ハクトさんの元いた世界の知識ですわね。この国でも様々な知識の恩恵を受けているのですわ」

「そうだね。この前もハクト君から少し知識を貸してもらったけれど、新しい魔道具が作れそうなんだ」

わたくしも本日はショートケーキのレシピをシェフに伝授してもらえたのですわ! ハクトさん、改めて、ありがとうなのですわ!」

「俺も、おいしいショートケーキを食べることができたし、伝えられて良かったよ。それと、ちゃんと伝えられたのはソフィアのおかげでもあるんだ」

「そうなんですの? ソフィアさんも、ありがとうなのですわ!」

 焼き菓子をじっくり味わっていたソフィアは、その状態のままでこくん、とうなずいた。

 ……食べるのを一旦やめて返事をする、とかはしないのね。
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