異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第三章 要するに この章ほとんど デートかい

第48話 風とともに食べる

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「ということで、到着~!」

 ハヤテに案内されて着いたお店は転移門にほど近い場所にあり、和風で高級そうなたたずまいだった。

「なあ、ハヤテ。このお店、高級そうな見た目なんだけど……」

「う、うん。私そんなに持ち合わせがないんだけど、大丈夫かな……」

「大丈夫、大丈夫~。それじゃ、早く入ろう!」

 と、ハヤテが我先われさきにとお店に入っていったので、俺たちは慌ててついて行った。

 お店に入ると、やっぱり内装も高級な感じだった。
 中にいた店員さんに人数をげ、案内されたのだが……、

「このお店は個室なのか……。やっぱり高級なお店なんじゃないか?」

「う、うん」

 と、二人して戸惑っていたが、その間にもハヤテが

「店員さん。注文は白焼き、うな重の上、それと肝吸きもすいを三人分お願いね~」

 と注文を終えてしまった。
 ……って今うな重って言った!?

「ハ、ハヤテ。このお店って、うなぎのお店なの?」

「うなぎ!? それって、東方で食べられている高級魚じゃないかな!?」

 うなぎはこっちの世界にもあって、同じように高級なんだな。
 ……俺は大丈夫だけど、ユズは大丈夫だろうか?

「大丈夫! 今日はハヤテとユズが出会った日だから、ボクが払うつもりだったもん! それよりも、早く席に着こうよ~」

 ……ハヤテが合わせた本人なんだけどなぁ。
 まあでも、ユズはその方がよさそうかな?

 とりあえず正面にハヤテ、左にユズという配置で座った。

「で、でも、ハヤテちゃん? そんなにお金持ってるの?」

「このお店に案内したのはボクだもん。ちゃんと全部わかってるよ! それに、もう注文しちゃったから逃げられないよ!」

 ……おごられる方が逃げるって、変な構図だ。

「まあ、ハヤテが大丈夫って言っているし、大丈夫じゃないか?」

「……そうだね。ここは素直にお礼を言っておこうかな。ハヤテちゃん、ありがとうね!」

「うん! どういたしまして!」

 とりあえず、この話は収まったみたいだな。

「それじゃ、のんびりお話しようよ! 料理が出てくるまで、一時間くらいかかるからね~」

 注文してからうなぎの調理をするから、結構時間がかかるんだな。
 まあそれなら、料理を待っている間に色々話せそうだ。

「それじゃせっかくだし、ハクトについて色々教えてもらおうかな? ハヤテちゃんと、どう出合ったとかも聞きたいな」

「あっ、えっと、その前にね。ちょっと、言いたいことがあるんだ~」

 ん? なんだか急に歯切れが悪くなったけど、どうしたんだ?
 そんな様子のハヤテを見ていると、ハヤテがこちらをちらりと見てきて、一瞬目が合った。

「……うん。……あのね、実はユズにね、教えてないことがあるんだ~」

「そうなの?」

「えっとね。びっくりするだろうけどね、落ち着いてね?」

「う、うん」

 ……もしかしてハヤテは、ユズに正体を明かそうとしているのか。
 ただ、ハヤテは緊張しているみたいだし、ユズもその雰囲気に釣られちゃってるけど、大丈夫だろうか?

 そして、ハヤテは魔法を解いて元の姿に戻り

「実はね、ボクは魔族なんだ。それでね、普段は風魔皇ふうまこうって呼ばれているんだ」

「えっ? って、その顔は! 前にパレードで見たことがあるよ! そ、それじゃ、ハヤテちゃんは、いや、ハヤテさん、でもなくて、風魔皇さま? えっと、……、きゅぅ」

 あっ! あまりの衝撃に気絶しちゃったよ。
 背もたれのある椅子だったし、倒れるってことはなかったけど。

 ハヤテの方を見ると、すごくうろたえていて、

「ハ、ハクト! ど、どうしよ~。ユズが気絶しちゃったよ!」

「とりあえず落ち着こう。ほら、深呼吸してー」

 と、ハヤテに深呼吸をうながした。

 ハヤテはすー、はー、と何度か繰り返して。

「……うん、何とか落ち着いたよ~。ハクト、ありがとね~」

「それならよかった。……それで、気絶した人を起こす魔法とかはあるの?」

「もちろんあるよ~。……でもね、その前にハクトにお願いしたいことがあるんだ。また魔法を使ってさっきの見た目に戻るから、ボクのいたずらだったってことにしてほしいんだ~。起きた後も、またびっくりさせちゃうからね~」

 ハヤテは、自分の正体をまたいつわろうとしてるのか。
 
 ただ、普通の調子でしゃべろうとしてるけど、表情が寂しそうに見えるのは気のせいじゃないだろう。

 ……そういえばわざわざクジに細工をしていたけど、これが理由だったのかもしれないな。
 この機会を利用して正体を明かしたいけど、そうしたら今の関係がどうなるかわからない。
 だから、ギリギリまで予定を確定しなくてもいいように、って感じで。

「……多分だけどさ、ハヤテは今日までずっと、正体を明かすかを悩んでいたんじゃないか?」

「……うん、そうだよ~。アキナやイズレに正体を明かしても大丈夫だったし、ベイラに元の姿で会っても大丈夫だったよね? ……あの時、実はちょっと緊張していたんだよ~。……だから、今回も大丈夫かも、って思ったんだ。でも、今回は気絶させちゃったからね。失敗しちゃったよ~、てへへ」

 なんとか茶化ちゃかそうとしているけど、やっぱり無理をしているように見えるな。

 短い時間だったけど、二人の雰囲気は似ていて気が合っていると思ったし、何より短いやり取りからでも、かなり仲が良さそうに見えた。
 ……だから、

「ハヤテ。やっぱりその姿のまま、ユズを起こそう。……ハヤテは、アオイから聞いているか? アオイと王女が仲良くできる切っ掛けを作ったのは俺だって。それに、前回のアキナやイズレの時も俺が切っ掛けだしな。……だから、大丈夫だ」

 ……あえて、どっちも俺の功績こうせきだと大げさに言ってみた。
 ハヤテへの、勇気のひと押しになるように。

「……今日正体を明かそうと思ったのはね、ハクトがいるからなんだよ。ハクトはそう思っていない事をわざと言ってくれたけど、ボクたち魔族と人間たちが仲良くできたのは、ハクトのおかげだと思っているんだよ。……ハクト、ありがとね。この姿のまま、ユズを起こしてみるよ~」

 あ、やっぱりバレてた。
 でも、ハヤテが正体を偽らないと決心してくれてよかった。

「ただね。魔法を使った後は一度魔法で隠れさせてほしいな~。起きてすぐにボクを見たら、また気絶しちゃうかもしれないからね~。……あれ? それもちょっと面白そうかも?」

「いやいやいや……」

 よかった。
 ハヤテの調子が戻ってきたな。

「ということで、起こすよ~」

 ハヤテがユズに手をかざし魔力を流すと、ほどなくしてユズが目覚めた。

「ううーん。……あれ? ここは……」

「大丈夫か? 少しの間、気絶していたみたいだけど」

「う、うん。……あれ? ハヤテちゃんは? ……そういえば確か、ハヤテちゃんが風魔皇さまになった記憶が……」

 ハヤテがいたはずの席を見た後で、ユズは気絶する直前の出来事を思い出したみたいだ。

「ボクの姿を見ただけで気絶しちゃうなんて、失礼しちゃうよ~。ボクはこんなに可愛い見た目をしてるのにさ!」

 姿を消した状態のハヤテが、ユズに話しかけた。

「この声はハヤテちゃん!? でも、どこにいるの?」

「ユズがまた気絶しないように、気を使ってるんだよ~」

「え、あ、えっと、ありがとう? ……って、そうだ! えっと、ハヤテ……ちゃんは、本当に、風魔皇さま、なの?」

「そうだよ~。……今まで黙っていて、ごめんね。……でも、ユズはボクに感謝してほしいな! ボクがいたずらをした時は正体を現して逃げずに、毎回ちゃんと怒られたもんね~」

 ……いや、それはちゃんと怒られるべきだ。

「そもそも、いたずらをしなければ怒らないよ! 全く、ハヤテちゃんはいつもそうなんだから! ……でも、うん、そうだよね。ハヤテちゃんがどんな存在だろうと、立場だろうと、ハヤテちゃんはハヤテちゃんだよね!」

 それを聞いたハヤテは、魔法を解除して姿をあらわした。

「うん! ……これからも、よろしくね~」

「こちらこそ!」

 これにて一件落着、って感じだな。
 ……大丈夫だと思っていたけど、二人の仲が変わらなくてよかった。
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