異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
58 / 161
第四章 伝承の おもちゃとちゃちゃっと パーティを

第55話 魔力には個人差があり、威力を保証するものではありません

しおりを挟む
「それで、次に行きたい場所とか、やりたいことはあるか?」

「うーん、そうね……。あっ、そうだ! それなら、ハクトと最初に会ったお店に行きたいかも。あのお店には、わたしが開発に関わったものとか、目利きして入荷しているものとか、色々と紹介したいものがあるのよね。苦労話や魅力的な商品に出合った経緯とかも含めてね。もちろん、気に入ったら買ってくれてもいいのよ?」

「それはちょっと気になるかも。まあ買うかどうかはアキナの紹介次第、なんてな」

「ふふふっ。ハクトこそ、買い過ぎて財布が軽くならないようにね! それじゃ、行きましょ!」



 ということで、今井商会の娯楽ごらく用品店に来た。

「そうね、まずはこれを紹介しようかしら。この手袋状の商品なんだけど、手の甲の部分に魔石がついているの。手に魔法を込めると、手のひらにある魔法陣から威力の低いウォーターボールが出るのよ」

 俺のいた世界でいう、水鉄砲みたいなものなのかな?
 ただ、使える魔法も単純そうだし、これがすごい商品には見えてこないなぁ。

 俺がそう思っていたのが表情に出たのか、

「なんだか微妙な表情をしているわね。全然すごい商品に見えない、って思ったかしら?」

 なんて、思っていたことを当てられてしまった。

「ふふっ。まあ実際、この商品は昔からあるものだから、そう思うのが普通ね。子供たちが魔法の練習をしたり、水をぶつけあって遊んだりするのに使われているわ」

「なんだ、そうなのか。……それじゃ、その商品を俺に紹介した理由は何かあるのか?」

「もちよんよ! 商品を開発したというより、この商品を使った遊びを発明したって感じね。まずこの手袋なんだけど、誰が使っても同じ威力のウォーターボールが出るの。つまりこれを使えば、魔法の得意不得意が関係なくなるってことなの。そこでピンッときたのよね。これを使えば、多くの人が楽しめるような、魔法を使ったスポーツが作れそうって」

 こっちの世界に来てから色々な話を聞いた感じ、人によって魔力の大きさにはかなり違いがあるみたいだからな。
 もし魔法を使ったスポーツを何か考えるとしたら、その辺りが結構難しそうだ。

「まずは、建物を使ったものを考えたわ。簡単に説明すると、壁に隠れて待ち伏せしたり窓越しに魔法を撃ったりして、相手に魔法をぶつけたほうが勝ち、っていうルールね。何人かでチームを組んでやってみたんだけど、結構楽しかったわ」

 いわゆるサバゲ―みたいな感じかな?
 それと、アキナも参加者としてやってみたのね。

「ただ、遊ぶためには広い建物が必要だったりして、気軽には遊べないのよね。だから、次はもう少し手軽に遊べる方法を考えることにしたわ。とはいえ、わたしも他の参加者も楽しかったって感想だったから、これはこれで採用することにしたの。壁とか窓を再現した場所を何種類か作って、時間を決めて貸し出しすことで遊べるようにしてみたわ」

 そこでも商売に繋げるとは、流石はアキナだな。

「次は、わたしが生まれた東方のスポーツを参考に考えてみたの。冬にやるスポーツで、お互いが雪玉を投げ合うものなんだけど、雪で作った壁で雪玉をやり過ごしつつ雪玉を作ったり、そうしている相手を山なりに投げた雪玉で狙ったり、みたいに結構面白いスポーツよ」

 それって、もしかしなくても雪合戦てやつだな。

「俺のいたとこでも同じようなスポーツがあったな。俺が住んでいたところはそんなに雪が積もらなかったこともあって、実際にやったことはないけど」

「やっぱり、どこでも似たようなことを考える人はいるのね。それで、それを参考にしたスポーツを作ってみたの。壁は結界魔法の魔道具で作って、ウォーターボールを撃てる魔道具には、一度発射した後何秒か撃てなくなる機能を追加したの。それと、これね」

 アキナは、手袋の横に置いてあった、箱テッシュくらいの大きさをした箱を手に取った。

「これは、結界魔法を使って壁を作る魔道具ね。威力が弱いウォーターボールを防ぐだけだから、結界魔法の魔道具も小型で安く作れたの。それで、これらを実際に売り出してみたら、そこそこな人気商品になったわ。特に夏にはぴったりってなって、今の時期は主力商品の一つなのよ」

「なるほどな。俺のいた世界でも水を飛ばす道具はあったけど、壁の方は手軽に持ち運べなさそうだな。夏のスポーツといえば、海辺で遊べる道具が色々あったなぁ」

 浮き輪とかビーチバレーの道具とか、サーフボードとか、考えれば色々出てくるな。

「ハクトのいた世界での娯楽用品も、色々聞いてみたくなるわね……。まあそれは後の楽しみにして、まずは商品の紹介を続けるわね!」

 あっ、やっぱり後で色々聞かれるんですね。 



 他にも、釣りに使う道具として、魔力を加えると魚そっくりに動くルアーや、キャンプ用品として、テント専用に小さく作った空調用の魔道具など、趣味に使う色々なものについて紹介してもらった。

 特にキャンプ用品なんかは、冒険者にも結構売れているとか。
 
 ……そういえば、異世界っぽい施設の冒険者ギルドには一回も行った事がないな。
 まあ、用がないのに行くってのもあれだけどさ。
 とはいえせっかくの異世界だし、一度は行ってみようかな。

 それにしても、こうして案内してもらうと、おもちゃ以外にも色々な娯楽用品を扱っているんだって知ることができたな。

 ……何かわからないものが多くて、そっちのコーナーを全然見てなかったからなんだけどさ。

 次に、アキナとボードゲームが置いてあるコーナーに移動した。
 アキナは一つの商品を手に取ると、説明を始めた。

「わたしが見つけた中で、一番ピン、ときたのはこれ! 人生双六っていうボードゲームよ! この街で散歩していた時に見つけたおもちゃ屋さんが、自分の所で制作して売っていたの。他にも色々面白そうなおもちゃを売っていて、そこの店主さんにうちの商会でここの商品を扱わせてほしい、ってお願いしたのよね。その時はまだ責任者じゃなかったから、わたしのお父さんから許可をもらってお願いしたのよね。許可を貰う時は、我ながらかなりの熱弁《ねつべん》をしたわね……」

 ユズのお店のことだな。
 ということは、アキナはユズと面識がありそうだな。

「まあでも、それくらい、いい商品だと思ったってことか」

「そうなのよ! それで話を戻すとね、店主さんからは、売るよりも色々なおもちゃを作る方が好きだから是非ぜひお願いしたい! って言われたの。それとね、もし人気が出た場合はうちの商会で量産してほしい、とも言われたわね。個人で作っているから、製作が間に合わないし、何より買えなかった子供たちに申し訳ない、ってね」

 確かに、今井商会みたいに大きな規模のお店で人気が出たら、個人生産では到底間に合わないだろう。
 それと、量産をお願いする理由が子供たちに申し訳ないから、っていう理由もいいな。

「なるほどなぁ。多分だけど、子供たちが喜ぶ顔が見たくておもちゃ屋をやっているのかもな」

「子供たちが楽しそうにおもちゃを選んでるのを見た店主さんが顔をほころばせていたから、絶対そうね。それで、今は週に二回くらいしかお店を開けてないみたいね。他の日はほとんどおもちゃ製作の時間にあてていたり、このお店に顔を出したりしているみたいよ。それと、最近では新作はお孫さんと一緒に作っているみたいね」

「みたい、ってことは、アキナは会ったことがないのか? 俺はこの前、ハヤテの紹介であったことがあるんだけど……」

 と、前にユズに会った時の経緯をアキナに説明した。

「そんなことがあったのね……。そのユズって子には会ったことが無いわね。それに、公園で新作の発表会もしてたのね。こちらとしては、宣伝してくれてる感じになっててありがたいわね」

「あれ? 公園で新作を紹介しているのも知らなかったのか」

「うちの商会で量産と販売をするってだけで、それ以外はほとんどあちらの自由に任せてるの。それもあったから、今まで会う機会がなかったのよね。それにしても異世界人に反応を示したってことは、もしかしたら店主さんは異世界人だったりするのかしら? いや、会ったことがあって、おもちゃに関するヒントを貰ったって感じかしらね」

「少なくともヒントは貰ったことがあるんじゃないかな。この人生双六ってボードゲームに似た商品が俺の世界にはあるんだ」

「なるほど……。うん、そうね。ハクト、次の目的地が決まったわ! そのおもちゃ屋にいくわよ!」

 ということで、次の目的地が決まった。

 そういえば、前にユズと会った時は色々聞きたいことがあるって言ってたな。
 これは、アキナとユズの両方からの質問攻めってパターンになるかもしれない。

 ……すまんがユズ、今日は出かけていてくれ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...