異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第六章 初めての 異世界旅行は エルフ村

第98話 どこぞの錬金術師

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 店を出ると、あれがおいしかった、また食べたい、みたいな話になった。
 ちなみに、茶葉の購入ができないか聞いたところ、お土産屋さんにあるみたいだった。

 ただ、世界樹ということで、保存用の入れ物も購入する必要があるそうだ。
 しかも、それを使っても一ヶ月ほどしか持たないらしく、観光客は帰り際に購入していくらしい。

 あたしたちもそうすっか、というベイラの意見に賛同し、ディニエルに次のおすすめスポットへと案内してもらうことにした。



 さて、続きましてやって来たのは……、

「……エルフの狩猟体験?」

 店の上にかかげられた看板に、そう書かれていた。

「そう。弓の体験。一度やってみるべき」

 エルフといえば弓、ってイメージがあるけど、こっちの世界でもそうなんだな。

「って、そういえばエルフって、こっちの世界でも草食ってイメージがあるんだよな? なのに狩猟、つまり、肉を確保していたのか?」

「食べてたのは少数。後は害獣駆除」

 なるほどな。
 食べるエルフもいたし、それとは別に害獣を駆除する目的でも弓を使っていたのか。

 ……逆に、どうして草食なんだろうか。

「そもそも、どうしてエルフは草食だったんだ?」

「周囲の魔力。植物に蓄えられる。健康にいい」

「……もしかして、ここのような特殊な魔力によって、植物だけを食べても栄養が取れる、ってことか? 魔族もそんな感じだったしな」

「そう。魔族と同じ。驚いた」

 なるほどな。
 魔族は肉、エルフは植物っていうのが、ちょっと面白いかも。
 
「けど、魔力なら動物も取り込んでると思うけど。あ、もしかして、あんまり狩猟をすると森がけがれるか、とか?」

「……? ちゃんと処理する」

 ……血で森が、みたいなことはないのね。

「家も周囲も木。火魔法で加熱。けど面倒」
 
 ええと、森とか家が燃えるとまずいので、直火が使えない。
 だから、火魔法で水とかを加熱して調理を行う、ってことかな?
 前に聞いたけど、火魔法っていうよりは、温度操作みたいな感じだったもんな。

 そして、面倒ってことは、食材が煮えるまで加熱の魔法を使い続けないといけない、ってことか。
 植物なら半煮えとかでも大丈夫だけど、肉はそうもいかないから、煮込む時間もかなり必要なのだろう。
 だから、調理が面倒な肉はあまり食べようとしなかった、ってことかな?

「それなら、さっき言ったお店も大変そうだな」

「魔道具がある。とっても便利。どこの村でも使ってる」
 
 ……文明の利器は偉大だな。
 まあ俺のいた世界でも、先住民族もスマホとかを使ってるみたいだしな。

 それにしても、ディニエルの言っていることが、ある程度理解できるようになった気がする。

「んじゃ、ハクトの疑問も解けたことだし、早く入ろうぜ。……弓は扱ったことがないし、ちょっと楽しみだぜ」

 あ、そうだった。

「俺も、弓はほぼ初めてだな。ちゃんと飛ばせるといいけど」

 おもちゃみたいなやつで遊んだことはあるけど、本格的なのは一度もないからな。

「ハクトは得意」

 ……やっぱり、何を言ってるかわからないっす。

「えっと、どういうこと?」

「ハクト様は魔法が得意だと、ディニエルさんに教えましたので。風魔法により矢を操ることで、遠くの的を狙えますので、ハクト様は得意だと言っているんだと思います」

 ああ、そういうことか。
 確かに、チートのおかげで魔法は得意になっているからな。
 
 それと、すでに”さん”づけになるくらい仲良くなったのね。
 ……色々とウマが合ったんだろうな。
 


 というわけで店に入り、まずは簡単なレクチャーを受けた。
 エルフが使う弓は精度重視で、打ち出した後で風により矢を加速させて遠くに飛ばすようだ。

 実際にやってみると、今まで色々と魔法を練習したためか、簡単に遠くまで飛ばすことができた。
 俺の他には、リューナも簡単に扱っているように見えた。 

 最後は遠くにある動く的に当てる、というチャレンジがあり、成功するとちょっとした記念品が貰えた。

 俺とリューナ、そして何度か経験があるディニエルが成功させていた。
 ……ベイラだけが失敗だったため、ちょっと拗ねていた。



 さて、それじゃあ次のおすすめスポットに行こう、となったとことで、ディニエルに誰かが近づいてきた。

「やっぱり、ディニエルじゃない。またこっちに来ていたの?」

「そう。今日は案内」

 ディニエルに話しかけた彼女の見た目は、どう考えても……、

「……ダークエルフ?」

 と、思わず口から出てしまうくらい、物語でみたダークエルフのイメージだった。
 身長は俺より少し低いくらい、肌の色は褐色で髪は赤みがかった銀色。
 体系はグラマーな感じだった。

「ダークエルフ? 海エルフとか砂漠エルフ、なんて言われたことはあるけど、その呼ばれ方は初めてねぇ」

「あ、初対面の人にすまない。……えっと、ディニエル、この方は?」

「ダークエルフ。かっこいい」

 しまった。
 ディニエルのかっこいいセンサーが反応してしまって、聞いていない。

「あー……。私の名前はメレス。世間一般で言うところの、錬金術師ってのをやっているわ。そこのディニエルとは付き合いは長いんだけど、やれこんな色の染料がほしいだの、こんな素材で染料を作ってだの、無茶振りをされることが多いのよねぇ」

 おお、錬金術師か!
 初めて見たな。

 前に、本屋で錬金術について書かれた本を見たけど、ようやく実物を拝めたな。

 ……ちょっと、色々と聞いてみたくなるかも。
 
「助かってる」

 あ、ディニエルが正常に戻った。

「あたしも、ディニエルを通じて何度か依頼したことがったな。あん時は助かったぜ」

「やっぱり、あなたがディニエルの言っていたドワーフのお嬢ちゃんなのね。そういえばあなたの依頼も、ディニエルに劣らず結構な無茶振りだったわねぇ……」

「お、お嬢ちゃんか……。ま、まあ、最初に依頼した時はかなり困っててなぁ。ポロっとディニエルにこんな素材があったらなぁって話したら、任せて、って言われてな。んで、次に会った時に、これ、って渡されてな。それ以来、困った時にディニエル経由でお願いしていたんだ」

「まあ私としては、正当な報酬さえもらえれば別にいいんだけどねぇ」

「それならよかったぜ。なら、また何かあった時には依頼させてもらうな」

「ええ。まあ、私が可能なものであれば、ね。……それと、残りの二人もディニエルのお友達かしら? 彼の出身地では、私のようなエルフをダークエルフと呼んでいるのかしら?」

「あー、えっと」

 ……基本的に、出身地を聞かれた時には、東方出身っぽく思われるように説明してるんだけどな。
 ○○とかが有名なとこ出身です、みたいに。

 けど、今回はどうしよう。

「異世界」

「い、異世界、かい? ……ディニエルも、たまには冗談を言うんだねぇ」

「あー、えっと。信じなくてもいいんだけど、一応本当なんだ」

「……本当かい? ふーむ……」

 あ、ちょっと考え込んでしまった。

「ここで長話ってのもなんだし、どっかの店にでも入らないか? そろそろ昼時だしな。ゆっくり話せそうな店で、食事でもしながら話そうじゃんか」

「ああ、それもそうだねぇ。……それなら、丁度いいお店があるわ。ここの名物料理も食べれるし、どうかしら?」

 名物料理か。
 せっかく観光地に来たし、それがいいかも。

 他の三人も賛成したため、彼女、メレスの案内でそのお店に行くことにした。

 道中、

「それにしても、ダークエルフ、ね。……今度、試しに名乗ってみようかねぇ」

「賛成。私も広める」

 なんて二人で話していたけど、ディニエルはどうやって広めるつもりだろうか。
 まあ、メレスみたいなエルフに会った時に、ダークエルフって名前を提案するくらいだろうか。

 ……数年後、その呼び名が定着してしまうなんて、この時の俺は知る由もなかった。
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