異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第七章 妖精と 夜空彩る そのきせき

第105話 やっと出発! 魔界旅行

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 スパイスフルな昼食を食べた後は、全員は揃ったということで、皆がおすすめする旅行先について聞こう、と思ったんだけど……。

「ハクトがエルフの村に行った時みたいに、ボクたちも当日まで秘密にしようよ~」

 というハヤテの言葉にレイとホムラが乗ったことで、今回も俺は何も知らず旅行に行くことになった。
 ……エルフの村での旅行の説明をした時、その部分は言わなきゃよかった。

 そうなると、準備はもちろんリューナ任せになるのだが……。

「……俺、このままだと、リューナなしでは何もできなくなりそうなんだけど」

 なんてポロっと言うと、

「私はそれでも問題ありませんが……。むしろ、正式にお仕えする形でも問題ありませんよ?」

 という返答が返ってきた。

 正直、リューナが近くにいるのが当たり前になりつつあるし、いなくなるとちょっと寂しそうかも、いや、でも……、なんて思っていると

「なら、オレの時はリューナなしで旅行、ってのはどうだ? 必要なものは事前に連絡しとくぜ」

 とホムラから提案された。

 うん、リューナと一緒に旅行に行けないのはすこし寂しいけど、それもありかもな。
 一度くらいはリューナに頼らず旅行、ってのをやってみた方がいいだろうし。

 それを聞いたリューナはちょっと悩んでいたけど、ホムラから、

「仕えるって言うのは、ただ相手の世話をすればいい、ってわけじゃねぇと思うしな。色々やりすぎると、本人が成長する機会とかも奪っちまうしな」

 と言われた。
 色々な魔族を指導してきたホムラだし、だからこそ、こういった意見が出るんだろうな。

 それを聞いたリューナは、はっとした後、

「そうでした。……ハクト様の下で様々な補佐ができる、ということに少々浮かれていたようです。ハクト様、申し訳ございません」

 と俺に謝罪してきた。

「え? ああ、まあ、俺は気にしてないから、その謝罪を受け入れるよ」

 俺が頼りないから色々とサポートしてくれてる、なんて思っていたけど、違ったみたいだな。
 ……違うよね?

「それとな。俺の方も、リューナがいるってことで、必要以上に頼りすぎてた気がするんだ。だから、これからはお互い、いい落としどころを探っていこうぜ」

「……そうですね。ハクト様、ありがとうございます」

 うん。
 雇い続けるかは別として、リューナとは今後も仲良くやっていきたいしな。



 その後は、リューナとディニエルが仲良くなったという話を聞いた魔皇の皆が、ディニエルについて俺やリューナに色々と……。
 うん、本当に色々と質問してきた。
 
 ……なあホムラ。
 さっきリューナに言ったこと、すっかり忘れてないか?

 とりあえず俺からは、リューナが元ドラゴンであることを聞いて、かっこいいと言っていたし、かなり好意的な印象だと思う、と伝えておいた。  
 リューナからは、ディニエルは服飾関係の仕事をしていること、今度服を作ってくれると言っていたことを話した。
 そして、その服の出来栄えを見て判断するのはどうでしょう? と提案していた。
 
 それに対し、皆はそうするか、みたいな感じになり、今回の質問攻めは終わった。

 ……なるほど。
 一旦保留、って形にすることで、事態の収拾をはかったんだな。

 長い事一緒にいるみたいだし、こういったことが何度もあったんだろうなぁ。


 
 さてさて、それから一週間が経過し、ハヤテの案内で魔界旅行に行く日になった。
 
 この一週間は、俺の家について考えたり、ゴーレムファイトについていい案が無いか考えていた。
 ゴーレムに関してはいくつかアイディアが浮かんだので、今度アオイとかホムラに話を聞いてみようかな。

 まあそれは置いておいて、あの話の後、旅行はいつ行くのかって話になったんだけど、案の定ハヤテがごねた。
 ……ので、ホムラが強制的に一週間後に決めていた。
 もし行かなかったら、ハヤテの順番は飛ばす、という条件も追加して。

 そういうわけで現在、俺はリューナと一緒にハヤテを待っている。
 ……ただし、教会の前で。

 何故、魔皇の城を待ち合わせ場所にしないのか、と聞いたら、人間界から転移したほうがより魔界を楽しめるよ~! なんて、ちょっとよくわからない理由を言われた。
 まあどうせ、ハヤテが何か企んでいるんだろうけどな。

 なんて思っていると、遠くから誰かが近づいてきた。

 ハヤテにしては大きく見えるけど……。
 あ、もしかして、ハヤテがまた変身しているのかな?

 なんて思っていたけど、人影がはっきりしてくるとユズだとわかった。

 ……こっちの方に、用事てもあるのかな?
 いや、まさかな……。

 なんて考えている間も、ユズが段々とこちらに近づいてきて

「ハクト、リューナ、おはよー! 今日は絶好の旅行日和だね!」

 と話しかけて来た。
 旅行までの期間が短かったし、ハヤテの時は誰も来ないかな、って思ってたけど、ユズが来れたんだな。

「おはよう、ユズ。多分急に誘われたと思うんだけど、お店の方は大丈夫だったのか?」

「うん! ハヤテちゃんから急に、ハクトが誰かと旅行にいってずるいから、ボクもハクトと旅行に行くんだ~。ユズも来ない? なんて連絡が来たの。……この前、ハクトたちがエルフの村に旅行に行く、っていう話をしていた時、ちょっとついて行きたいかも、って思ったんだ。けど、流石に明後日っていうのはね……」

 うん。
 やっぱり、普通はそうだよな。
 ……ちょっとだけ、異世界はそれが普通、なんて思ってたかも。

「それでね。ハヤテちゃんから連絡があった後、友達に旅行に誘われてる、っておじいちゃんに言ったら、ぜひ行ってこい! って言われてね。おじいちゃんは、昔あちこち旅行に行ってたみたいでね。その時に色々と見聞きしたことがいい経験になったみたいなの」

「そうだったんだな。……確かに、ユズにとってもいい経験になるかもな。その経験が双六とかに行かせそうだし」

 魔界版の双六を作る上でも、魔界に行くって言うのはかなりいい体験ができそうだし。
 ……けど、なんだか違和感があるような?

 と思っていると、

「あ! もう皆揃ってるんだね~。それじゃ、さっそく転移で移動しようか!」

 と、ハヤテが来るなり皆が転移させられた。



 そして転移して先の光景は……

「……谷?」

 周りは山に囲まれ、あたりには低木や草木、色とりどりの花が生い茂っていた。
 景色がいいし、風が気持ちいいし、観光にうってつけな場所だな。
 流石は、ハヤテが悩みに悩んだ場所の一つだ。

 ただ、明らかに小さな家が点々と建っているのがすごく気になるな。
 ……ハヤテが入るにしても、小さすぎるよな。

「うわー! すっごーい! いい景色ー! ……けど、あの小さい家は何だろう? ねえ、ハヤテちゃん。今日の旅行は山の方に行く、って聞いてたけど、ここはどこなの?」

 俺だけでなくて、ユズも旅行先は知らないみたいだな。
 ……俺は、山ってことも知らなかったけどな。

 それを聞いたハヤテは、いたずらが成功したような表情で

「ふっふっふ~。ここはね、魔界にある妖精の谷って言われている場所だよ!」

 と答えていた。
 ……妖精か。

 異世界と言えば比較的定番な存在だよな。
 この世界では、魔界に存在していたんだな。

 ……どんな存在か気になるし、早く会ってみたいな。

 なんて思いつつユズを見ると、硬直していた。
 そして、ギギギという効果音が鳴りそうな感じでハヤテの方を見ると

「……ハヤテちゃん。今、魔界、って言った?」

 とハヤテに質問していた。
 ハヤテはにんまりとした表情で

「そうだよ~! ふふふ。山の方に行くとは言ったけど、人間界とは言ってないからね~。ユズ、魔界へようこそ!」

 とユズに告げていた。

 ……ああ、違和感の正体はそれだったのか。
 そういえば、魔界に行くのは覚悟ができてから、って言っていたな。

 その証拠に、

「ええー! いつかは行ってみたいと思っていたけど、急すぎるよー!」

 というユズの声が、妖精の谷に響き渡った。
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