異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
115 / 161
第七章 妖精と 夜空彩る そのきせき

第108話 的はともだち、(でも)こわくないよ

しおりを挟む
 クッキーを食べ終わったところで、ちょっとした疑問が湧いた。

「なあ、リューナ。このクッキーって結局、魔力の塊みたいなものなんだよな? 妖精や魔族は魔力から栄養を補給できるみたいだけど、俺たち人間族はどうなんだろ?」

「それでしたら、魔力が多く含まれている食材と同じ作用になると思います。この場合、栄養にはならず、魔力が回復するようです。また、不要な魔力は放出されるため、健康にも問題はないようですね」

「あ、先に言われちゃった~。人間界に魔界の食材を輸出する時、魔力が多く含まれていても問題ないかを検証したことがあるんだ~。……大体は、アオイがやってくれたけどね~」

「それって、いくら食べても太らないってこと!? 体重を気にする人には、夢の食べ物だよ!」

 不足した魔力が回復し、それ以外はすべて放出されるから、本当にゼロカロリーってことか。
 それは、かなりの人に需要がありそうだな。

 けど、

「ハヤテ。これ、なるべく秘密にした方がいいんじゃないか? ……下手すると、妖精たちがずっと食べ物を生成する羽目になるかもしれない。さっきユズが言ったみたいに、食べても太らないっていうのは、人間族には需要がありすぎると思うんだ」

「……そうみだいだね~。それじゃあこの旅行が終わったら、リューナと一緒に魔皇の皆に相談してみるよ! ……この子たちが将来、お金を稼ぐのに使えるかな、って思ったんだけど、難しそうだね~」

「……そうかもな。まあけど、それも皆に相談してみるといいんじゃないか? もしかしたら、何かいいアイディアが出るかもだし。いいアイディアが出るかはわからないけど、俺もちょっと考えてみるよ」

「わたしも! 妖精さんたちの役に立ちたいもん! それに、他の妖精さんが作った食べ物も食べてみたいな! ……いくら食べても、太らないし」

「ふたりとも、ありがとね!」 

「ありがと~! おれいに、これもど~ぞ!」

 と言いつつ、今度はチョコチップクッキーを作り出した。
 こっちもありがたくもらい、さっそく食べてみると、やっぱり本物と遜色そんしょくなく、おいしかった。

 ……本当にすごいな。



 その後も

「まあ、ボクは魔族だから、太るとか全然ないんだけどね!」

「ふとるって、なに~?」

「ええー! 魔族ってなんだかずるいー!」

「ずるい、ですか? ……魔族に対してそう言ったのは、ユズ様が初めてだと思います」

 なんて感じの会話をしていると、少し遠くから複数の声が聞こえて来た。

「あっ! みんなもおきたみたい~」

 小妖精はそう言うと、パッと消えた。
 ……かと思ったら、

「つれてきたよ~」

 と、大勢の小妖精と数人の中妖精がパッと現れた。
 さっきこの子に注意した中妖精もいるな。
 小さいから数えづらいけど、小妖精だけで五十人くらいいそうな気がする。
 
 ……って、なんでこんなに大勢を連れて来たんだ?

「きょうは、なにしてあそぶの~?」

「風魔皇様、今日もよろしくね! 他の人たちもよろしく!」

 あれ?
 まだ、妖精たちには遊ぼうって伝えていなかったと思うんだけど。

 ……あ。
 そういえば、遊びにきたの? って質問に、そんな感じかな、って俺が答えてるじゃん。
 
 ……今日は予定があるからまた今度、とかにならなくてよかった。
 
 そして、それを聞いたユズが、

「わー! 妖精さんがいっぱいー! うん! みんなであそぼー!」

 と、すごく嬉しそうにしていた。

「けど、こんなに大勢で遊ぶって言っても、何がいいんだろ? ハヤテ、ここに来た時はどんな遊びをしてるんだ?」

「う~ん、そうだね~。よく飛行魔法を使った追いかけっこをしてるけど、それは難しそうだよね~。後は……、あっ! それなら、的当てとかどうかな~?」

「……的当て?」

 それって、ボールとかを的に向かって投げるやつ、だよな?
 むしろ、こんな大勢でやるものじゃないと思うんだけど……。

「なあハヤテ。それ、この人数でやるには多すぎないか?」

「う~ん。それもそうだね。じゃあ、半分に分かれて、片方はボクと追いかけっこにしよう! それで、ハクトとユズが狙う側、リューナがそれを見守る、って感じかな~」

 ……ん?
 俺と、ユズだけ?

「ハクトは大丈夫だけど、ユズは魔力弾を撃てる~? 難しいなら……。う~ん、ウォーターボールを撃ちだす魔道具でも大丈夫かな? 今日は持ってきてる~?」

「今日もいろんなおもちゃを持って来たから、もちろんあるよ! けど、的はそんなにいっぱいないから、順番待ちになっちゃうんじゃないかな?」

「うん? ……ああ、そっか! それなら大丈夫だよ~! 的はこの子だちだからね! それで……」

 えっ。

「ハ、ハヤテちゃん? 的って、どういうこと? こんなかわいい子たちを的にするなんて、かわいそうじゃないの?」

「ま~ま~、話は最後までちゃんと聞いて。 まず、これはいつもこの子たちの訓練も兼ねてやってるんだ~。魔物によっては、何かを飛ばしてくるのもいるからね~。それに魔力弾なら、もしこの子たちに当たっても吸収しちゃうから、安心なんだよ! ウォーターボールも、おもちゃのやつなら痛くはないし、今は夏だから大丈夫かな~、と思ってね」

 なるほどな。
 この世界、特に魔界は身近に魔物がいるから、それに対する

 それを聞いたユズが、
 
「そ、そうだったんだね。ハヤテちゃんが急に悪い子になったと思っちゃった。けど、この子たちの為に考えてやってることなんだね! ……けど、やっぱりちょっと躊躇ちゅうちょしちゃうかな。一方的に撃たれるって、怖くないのかな?」

 なんて言うと、

「こわくないよ~」

「むしろたのし~!」

「にげるのとくい~!」

「あててみて~!」

 と、小妖精たちから一斉に声があがった。

 それを聞いた俺とユズはどうしようか? と思ったけど、みんなやりたそうにしてるし、とりあえずやってみよう、ということになった。

 それと、俺もユズが持って来たウォーターボールの魔道具を使うことにした。
 ……こっちなら、水鉄砲で遊んでる感じで撃てそうかな、と思って。

 問題ないとわかってても、魔力弾を撃つのは、この子たちを攻撃するみたいになって、撃つのを躊躇しちゃうだろうしな。



 というわけで、的チームと追いかけっこチームをわけ、時に入れ替わりつつ妖精たちと遊んだ。

 最初はやっぱりちょっと遠慮がちにウォーターボールを撃っていたけど、皆避けるのが上手くて、段々とそれもなくなっていった。
 それに、当たったとしても、

「あたっちゃった~。つぎは、もっとうまくよける~」

「つめたくて、きもちいい~」

 なんて言っていたり、

「おおあたり~」

 と言いながら、ピカピカ光る子がいたり、みんなもそれを真似しだしたりして、皆で楽しんでる感じだったからな。



 そんな感じでおそらく二時間くらい遊んでいると、段々と小妖精たちが眠そうにしだした。

 そんな様子を見たハヤテが、

「皆、今日は魔力をいっぱい使ったからね~。途中から、光ったりしてたみたいだし~。……う~ん。今日のお遊びはこれくらいかな~?」

 と言っていた。

 それを聞いた小妖精たちは、まだあそびたい~、なんて言っていたけど、

「私ももっと遊びたいけど、ちゃんと休むのも大事だよ! またハヤテちゃんに連れてきてもらうから、その時はもっといっぱい遊ぼうね!」

 と、ユズが言ったり、中妖精に説得されたりして、それぞれの家へと戻っていった。

「妖精さんたちと遊ぶの、とっても楽しかったー! けど、なんだかお腹がすいてきちゃったな」

 それを聞いたハヤテが、

「時差を考えると、今はお昼くらいだからね~。……それよりもユズ。また、一緒に遊びに来てくれるの?」

 と、期待を込めた目をしつつ、ユズにそう質問した。

「うん! また妖精さんたちに会いたいからね! ……けど、今度からは、ちゃんと行先いきさきは教えてよね!」

「わ~い! それじゃ、そろそろお昼にしようか~。というわけで、転移するよ!」

「えっ! ハヤテちゃん、行先……」

 というわけで、お昼をとるためにどこかに転移させられた。

______________________________________
魔力で作られているので、カロリーゼロです(本当のやつ)。
食べた物を小説に描写したので、カロリーゼロです、とかならないかな……。

あ、異世界で食事をした後元の世界に戻ったら、カロリーは世界を超えられないため、カロリーゼロです()。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...