異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第七章 妖精と 夜空彩る そのきせき

第113話 starry-eyed

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 ユズとリューナが転移し、俺とハヤテの二人きりになった。

 ……せっかくだし、前から気になっていたことを聞いてみようかな? 

「なあ、ハヤテ。ハヤテは、魔皇になる前にはどんなことをしていたか、聞いてもいいか?」

「……うん、いいよ~。とはいっても、今とそこまで変わらないんだけどね~。今日みたいに、空を飛べる魔族で集まって追いかけっこをしたり、誰かにいたずらを仕掛けたり。後は、遊びに使えそうな魔法を考えたり、とかかな~」

「ハヤテも、アオイみたいに魔法の研究をしていたんだな」

 今も料理を研究しているみたいだし、元から好きな事には集中して取り組んでいたってことか。

「まあ、アオイほど専門的にやっていたわけじゃないんだけどね~。……できた魔法も、いたずらに使うものばっかりだし~」

 ……まあ、ハヤテらしいな。

「もしかして、そんな感じで色々な魔法を作ったり、遊んだりしていたら、それに興味を持った魔族が集まってきて、いつの間にか魔皇になってた、って感じなのか?」

「……そうだったら、よかったんだけどね~。……集まっていた友達の一人が、悪い魔族に目をつけられちゃってね~。その友達は、ボクが作ったとある風魔法を、とっても上手に使えたんだけど、その様子を悪い魔族の部下に見られちゃったみたいなんだ」

 ……いたずらに使う魔法として考えたけど、使い方を変えると、すごいことができる魔法、とかだったのかな?

「それでね。その時は、いたずらの為に作った色々な魔法を駆使して、その魔族を撃退したんだ。ボクは競うのは好きだけど、戦うのはあんまり好きじゃなかったから、攻撃用の魔法とかは全然練習してなかったんだよ。……けど、そのことがあってからは、ちょっとずつ練習したんだよ~。ふふん、ボク、偉いでしょ~!」

 最後はちょっと茶化してたけど、戦うのが好きじゃない、と言ったハヤテのことだ。
 楽しくもない、できれば使いたくない魔法を練習するのは、かなりつらかったんじゃないだろうか。

「……そうだな。ハヤテは偉いな」

「えっ! そ、そうだよ~。ボクは偉いんだよ~。……こほん。ただね、その練習した魔法は、ほとんど使わなかったんだよね~。っていうのも、ボクの変わった魔法の噂を聞いて、アオイが会いに来たからね~」

 俺が褒めたのが予想外だったのか、最初はちょっと照れつつ、咳払いで誤魔化してから話を続けた。
 ……たまに不意打ちで褒めたら、また面白い反応が見れるかな?

「って、あれ? ってことは、アオイとは魔皇になる前に会っていたんだな」

「うん! ほかの皆とも、アオイを通じて、魔皇になる前に会ってるんだよ~。アオイはその当時、色々な変わった魔法を探して、あっちこっちに行っていたみたいだからね~」

「その過程で、魔皇の皆と会った、ってことか。……他の皆にも、その時の話を聞いてみようかな?」

 他の皆とも、旅行をする予定だからな。
 どこかでいいタイミングがあれば、話を聞いてみよう。

「うんうん。色々と面白い話が聞けるだろうから、そうするといいよ~。あ、それでね。アオイとは、魔法について色々話している内に仲良くなったんだ~。……ボクが魔法を見せると、たまに暴走してたけど。それで、その時に、アオイに相談してみたんだ。できれば戦わずに、悪い魔族をどうにかできないか、ってね~」

「アオイのことだから、何かいいアイディアを教えてくれたのか?」

「うん! ……とはいっても単純なんだけどね~。ボクが皆を従えたように周囲に知らせて、ちょっかいを出す魔族はこうだよ~、なんて言いながら強力な魔法を使ったんだ。それで、それを見た魔族たちが、ボクたちに手を出すのはやめよう、ってなったんだ~。……アオイから、ボクの魔力は魔界中でもトップクラスだって聞いたからね~。元々魔力には自信があったんだけど、まさかそんなにすごいとは思ってなかったよ~」

 なるほどな。
 ……ハヤテはなるべく戦いを避けていただろうし、アオイに言われるまでは、自分の本当の実力が分かっていなかったんだろう。
 けど、それがわかったことで、圧倒的な力を見せつければ大丈夫、ってなったんだろうな。

「それで、何度かそうやって魔族を追っ払っている内に、いつの間にか魔王、今の魔皇って呼ばれるようになったんだ~。……ただね。魔皇になったら、仲良くしたいと思った魔族にも、友達じゃなくて部下になる、なんて言われることが増えちゃんたんだ~……」

「……ハヤテとしては、あんまり魔皇にはなりたくなかったのか?」

 ハヤテの性格からして、立場を気にせず、自由奔放じゆうほんぽうに動き回れる方がしょうに合ってそうだからな。

「う~ん。ボクは偉いんだぞ~、って言えるのはちょっと嬉しかったかな。それに、守りたいと思った友達を悪い魔族から守れるから、なったことは後悔してないよ。それとね、部下になりたいって魔族には、いたずらを仕掛けて相手を呆れさせたりしたんだ~。そうしたら、部下じゃなくて友達になってくれた魔族もいるんだよ~」

「……まあ、ハヤテらしくていい方法かもな」

 そして、自分がちょっと不自由になってもいいから、大切な人たちを優先する、か。
 ヒカリの手伝いとかの時には積極的に動いていたし、それもハヤテらしいな。

「ふふ~ん。……それにね。魔皇になったから、ユズやハクト、他も色んな人に会うことができたからね~。だから今では、魔皇になってとってもよかった、って思ってるんだよ~」

「そっか。俺も、ハヤテと会えてよかった、って思ってるよ。……たまに、びっくりさせられるけどな」

「これからも期待しててね~」

「期待はしたくないなぁ……」

 なんて会話をしながら星を眺めていると、ハヤテが、

「……けど、そっか~。ハクトのおかげでもあるんだよね~」

 なんて、ぽつりとつぶやいた。

「ん? 何が俺のおかげなんだ?」

「人間界で、色んな友達ができたことだよ~。それに何より、ユズともっと仲良くなれたこと、だよ」

「偶然が重なっただけ、って気もするけど、そういってくれるなら、俺も異世界に来た甲斐があるな。……まあ、気づいたら目の前にソフィアがいたんだけどな」

「そうなの!? そういえば、ハクトがこの世界に来た時の話は聞いたことがなかったよ~。詳しく聞きたいな~」

「ああ、いいぜ。さっきも言った通り、この世界に迷い込んで、気づいたらソフィアが……」

 と、俺がこの世界に来てから、ハヤテと出会うまでの話をすると、

「あははっ、ソフィア、おもしろ~い! けど、そのマイペースさがソフィアっぽいね~」

 なんて感じで盛り上がった。

 そして、話が一段落したところで、ハヤテがおもむろに

「……ねえ、ハクト。ボクね、もっと色んな人と、楽しくお話ししたり、遊んだり、時にはいたずらをしたりしたいって、ずっと思ってるんだ。もちろん、魔界だけじゃなくて、人間界の人たちとも、だよ。けど、昔人間界で聞いたときは、魔族が怖いかも、って言われちゃったんだよね。……ハクト、ボクのこの願いは、夢物語みたいなものなのかな~?」 

 なんて、いつものような明るさを感じられない声で言った。

「いや、そんなことはないと思うぞ。……もちろん、仲良くできない人もいるとは思う。けどな、それは魔族だからとか、そういうのより、相性が悪いってことの方が多いと思うんだ」

 こっちの世界でも、そういう雰囲気の人はたまにいたし、元の世界では言わずもがな、だな。

「実際、俺がこの世界に来てから仲良くなった人たちは、エルフやドワーフ、魔族に天使、種族じゃないけど王女もいるんだ。それに、さっきは妖精たちとも仲良くなれた。……だから、お互いが仲良くしたいと思えれば、他はそんなに関係ないんじゃないかな」

「……そっか。ハクトがそう言ってくれるなら、できそうな気がして来たよ~」

「それに、これから俺の試練を達成する為に、色んな人たちに協力してもらうつもりなんだ。もちろんハヤテにも手伝ってもらうから、その過程で色んな人と出会って、仲良くなれるんじゃないか?」

「……うん、そうだね。それなら、ハクトにはもっと色んな人と知り合ってもらわないとだね!」

「ま、まあ、ほどほどにな」

 ハヤテは、すっかり元の調子に戻ったみたいだな。よかった。

 ……前もそうだったけど、ハヤテはあんまり考えていないようで、すごく色々と考えているんだよな。

 それからは、他愛のない会話をしながら、俺が眠くなるまで、二人で星を眺めていた。
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