異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
121 / 161
第七章 妖精と 夜空彩る そのきせき

第114話 ハイ キング

しおりを挟む
 そして次の日。

 今日は登山をする日だったな。
 ちなみに、魔皇の城にある俺の部屋には、いつのまにかリューナがベッドを設置してくれていた。

 ……物置とか休憩部屋のつもりで、ここに泊まるつもりはなかったんだけどなぁ。
 転移の魔道具もあるし、魔皇たちの別荘に泊まってる感じがして、落ち付いて寝れる気がしなかったからだ。

 まあ、そう思いつつも、普通に熟睡してしまったわけだけど。
 ……リューナが設置してくれたベッドの寝心地が、すごくよかったからだろうな、うん。

 リューナに濡れ衣を着せつつ部屋を出ると、部屋の前にはそのリューナが立っていた。
 ……あ、えっと、ごめんなさい。



 俺の様子を見て、頭に疑問符を浮かべたような表情をしたリューナだったが、気にしない事にしたらしく、朝食ができました、といつもの食事場に案内してくれた。

 そして、部屋に入ると、既にハヤテとユズが座っていた。

「あっ! ハクトがやっと来たー。ちょっと聞いてよー。朝からハヤテちゃんがひどいんだよー!」

 ……朝からハヤテが絶好調だったんだな。
 本当の意味でもここはハヤテの城だし、何か仕掛けたんだろうな。

「まあまあ。それで、何があったんだ?」

 とりあえず、ユズに何があったかを聞いてみた。

「えっとね。まず私が目が覚めると、自分の部屋じゃない、知らない天井でびっくりしたんだー」 

 あ、俺の、知らない天井が取られた。
 ……いや、そもそも俺のじゃないし、元ネタは異世界の話でもないけど。

「けど、頭が冴えてきたら、そういえば魔界に来てたってことと、昨日はいつの間にか寝ちゃったことを思い出したんだ。そこまではよかったんだけど、その後がひどいんだよー!」

 お、ここからが本題だな。

「急に扉が開いたかと思うと、ハヤテちゃんが、ユズ~、大変だよ~! なんて言いながら飛び込んできたの。それで、何を言い出すかと思ったら、ハクトが悪い魔族に連れていかれちゃった~、なんて言うんだよ!」

 朝になってから、ユズがこの城で寝ているからいたずらに使えそうだ、って気づいて、いたずらを実行したんだろうな。
 かなり設定が雑な気がするし。

「何か変だなーって思って、他の魔皇はどうしてるの? とか、ハクトって転移の魔道具を持ってたし、もう逃げてるんじゃないの? とか質問してたら、ハヤテちゃんの返事が段々と怪しくなってきたんだ」

 それで、ユズはハヤテのいたずらに気づいて、ハヤテに文句を言った、って感じかな? と思ったら、

「それで、これはハヤテちゃんのいたずらだ、ってわかっちゃったんだ。……全くもう! どうせいたずらを仕掛けるなら、ちゃんと考えてからやってほしいよねー」

「う~ん、そうだね~。ユズの言う通りだよ~。今回は反省点しかないし、次は頑張るよ~!」

 ユズが怒るとこ、そっちなんだ。
 ハヤテもなんか反省してるし、次頑張るって言ってるし、謎のやりとりだ。

 そんな感じで二人で騒いでいると、リューナがいつの間にか朝食を並べ終わっていた。
 それを見た二人は、

「あ、ご飯の準備ができたよ。リューナさん、今日もありがとー!」

「ありがとね~」

 と言い、すぐに食事に取り掛かっていた。
 ……うん、俺も食べるか。 

 あ、今日の食事も朝からおいしかったです。
 ごちそうさまでした!



 ということで、今日登る予定である山の麓まで、転移で来た。

 近くで見ると、思ったよりも頂上まで距離がありそうだな。
 これは、休憩しながら登った方が良さそうだな。

 休憩に関しては、リューナがテントとかを用意してくれているのかな?
 なんて思っていたんだけど……。

「ふー、疲れたー! ハヤテちゃん、今どの位登ったの?」

「え? ……う~ん。全然気にしないで登ってたよ~。今はお城だし、戻ったら空を飛んで確認してみるね~」

 ということで、転移で魔皇の城に戻り休憩をとっていた。
 転移って、便利だよね。

 そして、転移休憩のおかげもあってか、俺もユズもバテることなく、頂上まで登り切ることができた。

「ついたー! 自分の足でここまで登ったっていうのは、すごい達成感があるよー!」

「思ってたよりも大変だったね~。やっぱり、元々の山から変えて正解だったよ~」

「でしょー! 私たちにはこれくらいが丁度いいよー。ねっ、ハクト!」

「ああ、そうだな。俺たちは初心者だし、ハヤテたちと違って、普通の人間だしな。それと、リューナも、細かいサポートありがとうな。冷たい飲み物とかぬれタオルとか、そういったものがあったから道中も快適だったし」

 ……普通の人間と言った辺りで、ハヤテから、え~、なんて聞こえたけど、聞こえなかったことにしよう。

「いえいえ。それに、私も皆さんと山登りができて、楽しかったです」

「そっか。それならよかったよ」

 休憩も兼ねて頂上からの景色を堪能した後は、昼食を取ることにした。

「それで、今日のお昼はなにー? ……まさか、この絶景を無視してお城で食べる、なんてことはないよねー?」

「ふっふっふ~。そんなもったいないことはしないよ~。というわけで、じゃ~ん!」

 そう言うと、ハヤテは収納魔法でバスケットを取り出した。

「ちゃんと用意してあるよ~! しかも、なんと! 今回のお弁当はボクが作ったんだよ~!」

「本当!? ハヤテちゃん、昨日も料理を作ってたし、どうしちゃったの?」

「ふふ~ん。今回は、いつものボクとは違うんだよ~。今だけはハヤテ上魔皇、とでも呼んでもらおうかな~」

「それなら、この旅行が終わったらハヤテちゃんは退位しちゃう、ってこと? 大変だ!」

「え? ……そういうことじゃないよ~! む~、ボクのご飯あげないよ~」

「あははっ、ごめんごめん! ハヤテちゃんがせっかく作ったご飯だし、食べたいよー」

 と、そんなやりとりをしつつ、お昼をいただいた。

 サンドイッチにおにぎり、唐揚げ、玉子焼き、サラダなどなど、ピクニックでは定番な料理がたくさんだった。
 それと、肉巻きおにぎりなんてのもあって、これ本当に全部ハヤテちゃんが作ったの? 本当にー? なんて、ユズにジト目で見られていた。
 それに対して、ハヤテはボソッと、たまたまいたヒカリに手伝ってもらった、ボクがメインで作ったのは唐揚げと肉巻きおにぎりだけだよ~、なんて白状していた。
 ハンバーグといい、お肉系を作るのが好きなんだな。

 ……というか、それ以外はヒカリが作ったって言ってたけど、ハヤテよりもヒカリの方が、色々な意味で上魔皇って肩書に相応ふさわしいな。



「おいしかった~! ヒカリさんの料理もおいしかったけど、ハヤテちゃんが作った唐揚げも、このお肉を巻いたおにぎりも、どっちもおいしかったよー」

「ふっふっふ~! そうでしょ! これも、ボクが色々と研究して編み出した味なんだよ~。どっちもリューナのお墨付きなんだからね~」

「そうですね。どちらも、とてもおいしかったです。流石はハヤテさんですね」

「確かに、どっちもとってもおいしかった。……唐揚げは結構好きで色々な所で食べるんだけど、この唐揚げが一番おいしかったかも」

「本当!? それなら、ボクの唐揚げは異世界の人たちでも敵わない、ってことだね! わ~い!」

 ……流石に、それは言い過ぎだと思うけど。

そして、食事の片付けが終わり、

「それじゃ、少し休憩したら下山しよっか~。楽しかったし、また登山したいね~」

 と、ハヤテがすごく楽しかったーという感じの笑顔で言った。

「そうだね! ……けど、また同じくらいの高さの山でお願いね! それで、山を下りたら妖精さんの所に顔を出すの? まだ。遊ぶ時間はあるかな?」

「登りの時間を考えますと、下山した頃には日が沈む時間ですね」

「う~ん。じゃあ、帰りは転移で帰ろっか! もう登山は楽しんだし」

「そうだね! 早く妖精さんたちに会いたいし!」

 ……まあ、いいんだけどさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...