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174話
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あれから特に何事もなく日々は過ぎていき、お医者様から言われた3週間が経とうとしていた。
「皆さん、お昼できましたよ。」
「おぉ、ありがとう、ハル。」
もうすっかり私がギルドに働きに来ている時にお昼を作ることが定番になっていた。職員の皆さんが私が作ったものはお店の味のようだと、毎日のお昼に食べたいと言ってくれたのだ。確かに、私は熊の蔵で働いていたため、お店の味といえばそう言えるだろう。
材料は毎回誰かが買い出しに行ってくれるため、私が買いに行くことはなかった。一度、申し訳ないから私が行きたいと言ってみたところ、アルトさんに絶対にダメだと言われてしまったため、断念した。
「はい、ハル君。いつもありがとね!」
「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます。」
こうして料理と引き換えにお金をいただくことも毎度のことになってしまっていた。当初お金は断ろうとしたのだが、労働の対価だと押し付けられてしまい、こちらが折れる形で外でお昼を買った時の相場の値段の半分をもらう形になった。
「さて、俺達も食べようか。ハル、これを持っていけば良いのか?」
「はい、毎度すみません。お願いします。」
丁度欲しい人に渡し終えた辺りでアルトさんが来てくれる。私は自分の分とアルトさんの分をお盆に乗せてアルトさんに渡す。そして、席へと持っていってくれる。
「今日はコッコの照り焼きか、とても美味そうだ。さぁ、冷めないうちに頂こうか。」
「はい、どうぞ召し上がってください。」
私がそう言うと、アルトさんは照り焼きを一口食べる。これはサリアさんにも認められた一品のため、味に問題はないはずだが、少々不安だった。
「うん、美味い。よくできているな。」
「それは良かったです。それを聞けて安心しました。」
すると、入り口からアルトさんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「すみません、ギルドマスター!少々いいですかー!」
「分かった、今向かおう。すまない、ハル。戻ってきてから食べるよ。先に食べていていいからな。」
「はい、頑張ってくださいね。」
「あぁ、ありがとう。」
そう言ってアルトさんは表へと向かう。そして、テーブルに一人残されてしまった私は言われた通り大人しく先に食べていることにした。一口食べると、想定している味がして一安心する。
「ハル君、ちょっといいかな?」
「ホルンさん、どうしたんですか?」
「いや、ギルドマスターがいないから一緒に食事しないかってな。」
「わ、私なんかで良ければ……。」
「じゃあ、こっちに来てくれる?」
「は、はい……!」
そうして私は自分の料理をもってホルンさんについて行く。すると、そこに続々と職員さん達が昼食をもって集まってくる。私がその光景に少々驚いていると、ホルンさんが話してくれる。
「いっつもハル君はギルドマスターが占領しているから、こうして皆話したかったんだ。かという俺もその一人さ。」
「そ、そうなんですね。」
「さ、座って。食べながら話そうじゃないか。」
♢♢♢♢♢♢♢♢
「いやー、あそこで働いていたからこんなにハル君は料理が上手なのか。」
「ですね、この腕前にも頷けます。」
「そんな、私なんてまだまだですよ。アルトさんの執事の方なんてお菓子まで作れるんですよ。それに比べたら……」
「いやいや、これでも十分ですよ!あ~、やっぱりこんな番を持てるギルドが羨ましー!」
職員の方達と食事をしながらの会話は普段ガルムさんやアルトさんとするものと違うため新鮮で、とても楽しいものだった。
「それにしても、ギルドマスターが本当はあんな風に笑うなんて思わなかったな~。」
「そうね!いつも優しかったけど、ある日 からこう、なんというか……、」
「心から笑うようになった!」
「そう、それ!」
「そうだな、俺も職員の中で一番近くにいるからそれを感じるよ。だから、ハル君には感謝しているんだ。あの人の心の隙間を埋めてくれてありがとう、職員を代表して礼を言うよ。」
「い、いえ、私は礼を言われるような事は何も……!」
私は急にホルンさんに礼を言われて戸惑ってしまうが内心、アルトさんは以前そうだったのかと驚きを隠せないでいた。
「なんだ、一体何を話しているんだ?」
突然声がした方に全員がパッと顔が向く。
「な、ギルドマスター……!?驚かさないでくれよ。そうやって気配を消されると気づけるわけないだろ?」
「アルトさん……!お疲れ様です。」
「あぁ、ありがとう。ハル、こいつらに何かされたら遠慮なく言うんだぞ?」
「えっ……?」
私は何かとは何かと分からずポケッとしてしまうと、ホルンさんがアルトさんに弁明を始める。
「そうやってギルドマスターがハル君を占領するからこうして交流しているんだ。別に嫌がらせとかではない。ね、ハル君?」
「は、はい。本当に何もされてませんよ。むしろ、こうしてお話しできて楽しかったです。」
「そうか、それなら別にいいんだ。じゃあハルを返してもらうぞ?」
そうアルトさんが言うと、私はヒョイと持ち上げられ、アルトさんに抱き上げられる。
「そう言うところだよ……。じゃあまた話そうねハル君。」
「はい、私もまたお話ししたいです。」
私はアルトさんに運ばれながらホルンさんや職員さん達と手を振った。ふとアルトさんの顔を見ると、少し不服気な様子に見えた気がした。そのため、私はこういう時にちゃん気持ちを伝えるべきだと思って勇気を出して首元にギュッと抱きついた。
「ちゃ、ちゃんと私はアルトさんのつ、番、ですから。離れたりなんか、しません。」
「フフッ……、そうか、ありがとう。」
抱きついていて顔は見えなかったが、声色が少し明るくなっていたため、こうして良かったと思うのだった。
「皆さん、お昼できましたよ。」
「おぉ、ありがとう、ハル。」
もうすっかり私がギルドに働きに来ている時にお昼を作ることが定番になっていた。職員の皆さんが私が作ったものはお店の味のようだと、毎日のお昼に食べたいと言ってくれたのだ。確かに、私は熊の蔵で働いていたため、お店の味といえばそう言えるだろう。
材料は毎回誰かが買い出しに行ってくれるため、私が買いに行くことはなかった。一度、申し訳ないから私が行きたいと言ってみたところ、アルトさんに絶対にダメだと言われてしまったため、断念した。
「はい、ハル君。いつもありがとね!」
「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます。」
こうして料理と引き換えにお金をいただくことも毎度のことになってしまっていた。当初お金は断ろうとしたのだが、労働の対価だと押し付けられてしまい、こちらが折れる形で外でお昼を買った時の相場の値段の半分をもらう形になった。
「さて、俺達も食べようか。ハル、これを持っていけば良いのか?」
「はい、毎度すみません。お願いします。」
丁度欲しい人に渡し終えた辺りでアルトさんが来てくれる。私は自分の分とアルトさんの分をお盆に乗せてアルトさんに渡す。そして、席へと持っていってくれる。
「今日はコッコの照り焼きか、とても美味そうだ。さぁ、冷めないうちに頂こうか。」
「はい、どうぞ召し上がってください。」
私がそう言うと、アルトさんは照り焼きを一口食べる。これはサリアさんにも認められた一品のため、味に問題はないはずだが、少々不安だった。
「うん、美味い。よくできているな。」
「それは良かったです。それを聞けて安心しました。」
すると、入り口からアルトさんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「すみません、ギルドマスター!少々いいですかー!」
「分かった、今向かおう。すまない、ハル。戻ってきてから食べるよ。先に食べていていいからな。」
「はい、頑張ってくださいね。」
「あぁ、ありがとう。」
そう言ってアルトさんは表へと向かう。そして、テーブルに一人残されてしまった私は言われた通り大人しく先に食べていることにした。一口食べると、想定している味がして一安心する。
「ハル君、ちょっといいかな?」
「ホルンさん、どうしたんですか?」
「いや、ギルドマスターがいないから一緒に食事しないかってな。」
「わ、私なんかで良ければ……。」
「じゃあ、こっちに来てくれる?」
「は、はい……!」
そうして私は自分の料理をもってホルンさんについて行く。すると、そこに続々と職員さん達が昼食をもって集まってくる。私がその光景に少々驚いていると、ホルンさんが話してくれる。
「いっつもハル君はギルドマスターが占領しているから、こうして皆話したかったんだ。かという俺もその一人さ。」
「そ、そうなんですね。」
「さ、座って。食べながら話そうじゃないか。」
♢♢♢♢♢♢♢♢
「いやー、あそこで働いていたからこんなにハル君は料理が上手なのか。」
「ですね、この腕前にも頷けます。」
「そんな、私なんてまだまだですよ。アルトさんの執事の方なんてお菓子まで作れるんですよ。それに比べたら……」
「いやいや、これでも十分ですよ!あ~、やっぱりこんな番を持てるギルドが羨ましー!」
職員の方達と食事をしながらの会話は普段ガルムさんやアルトさんとするものと違うため新鮮で、とても楽しいものだった。
「それにしても、ギルドマスターが本当はあんな風に笑うなんて思わなかったな~。」
「そうね!いつも優しかったけど、ある日 からこう、なんというか……、」
「心から笑うようになった!」
「そう、それ!」
「そうだな、俺も職員の中で一番近くにいるからそれを感じるよ。だから、ハル君には感謝しているんだ。あの人の心の隙間を埋めてくれてありがとう、職員を代表して礼を言うよ。」
「い、いえ、私は礼を言われるような事は何も……!」
私は急にホルンさんに礼を言われて戸惑ってしまうが内心、アルトさんは以前そうだったのかと驚きを隠せないでいた。
「なんだ、一体何を話しているんだ?」
突然声がした方に全員がパッと顔が向く。
「な、ギルドマスター……!?驚かさないでくれよ。そうやって気配を消されると気づけるわけないだろ?」
「アルトさん……!お疲れ様です。」
「あぁ、ありがとう。ハル、こいつらに何かされたら遠慮なく言うんだぞ?」
「えっ……?」
私は何かとは何かと分からずポケッとしてしまうと、ホルンさんがアルトさんに弁明を始める。
「そうやってギルドマスターがハル君を占領するからこうして交流しているんだ。別に嫌がらせとかではない。ね、ハル君?」
「は、はい。本当に何もされてませんよ。むしろ、こうしてお話しできて楽しかったです。」
「そうか、それなら別にいいんだ。じゃあハルを返してもらうぞ?」
そうアルトさんが言うと、私はヒョイと持ち上げられ、アルトさんに抱き上げられる。
「そう言うところだよ……。じゃあまた話そうねハル君。」
「はい、私もまたお話ししたいです。」
私はアルトさんに運ばれながらホルンさんや職員さん達と手を振った。ふとアルトさんの顔を見ると、少し不服気な様子に見えた気がした。そのため、私はこういう時にちゃん気持ちを伝えるべきだと思って勇気を出して首元にギュッと抱きついた。
「ちゃ、ちゃんと私はアルトさんのつ、番、ですから。離れたりなんか、しません。」
「フフッ……、そうか、ありがとう。」
抱きついていて顔は見えなかったが、声色が少し明るくなっていたため、こうして良かったと思うのだった。
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