ルピナスは恋を知る

葉月庵

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246話 アルト視点

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なっ……!?ハルの両親だと言ったのか……!?っ……!あれは、ハルの父親……!?なら、隣にいるのはそういうことなのか……!

そこまで考えを巡らせていると、隣のハルの異変に気づく。俯いていて顔は見れないが、呼吸がかなり浅くなっている。ガルムも同じタイミングで異変に気づき、互いに視線を合わせて何となく意思疎通をする。そして、俺がハルの視界から、ハルの両親が見えないように隠し、ガルムがハルの背中を安心させるようさすった。

「余は、まだ用があるため戻る。あとは親子水入らずに過ごすと良い。近衛隊長は余の警備をせよ。」

ん?あの龍人、ここに残るのか?そのための人員変更か。全く……、面倒なことだ。

俺もこうして龍人を見るのは初めてだったが、この龍人から感じる気配は強者のそれだった。おそらく、一対一だと俺よりも、ガルムよりも強いだろう。

指示された人員が移動し、俺達とハルの両親、龍人と複数の警備がその場に残った。そして、しばらくの沈黙の後、静寂を破ったのはハルの父親だった。

「いやー、それにしても、久しぶりだね、ハル。その野蛮な獣人達に何かされなかったかい?」

チッ……、お前たちの方がハルに酷い仕打ちをしたのだろうが……!

俺はハルの父親をキッと睨みつける。俺がハルを隠しているため、自然と目が合ったからだろう、ヒィッ、と情けない声が小さく聞こえた。すると、鼻を鳴らしてハルの母親が口を開く。

「全く、情けない。……あなた達がソレの番なのね?なら、話は早いわ。ソレを私達によこしなさい。元はと言えば、私達のモノよ?」

「誰が……!」

ガルムがいち早く反応し、さらに睨みを利かせる。それに反応した父親が小さな声で母親を止めようと声をかけ始める。

「ほら、そんな言い方は止めようよ。」

「ふん、別に取り繕っても仕方ないじゃない。結局、アイツが私達の元に来たら、生活が保証されるのだから。貴方もそれを望んでいるのでしょう?」

「そ、それは言わない約束じゃないか。」

クソッ……!そういうことか。前回といい今回といい、ハルを何だと思っているんだ!

「ふん、貴方っていつもそうね。取り繕ってばかり。まぁ、いいわ。ほら、聞いているんでしょ?早く私達の元に来なさい。」

「……!?ハル……?」

すると、今まで隠していたハルが一歩一歩前へと踏み出し始めた。体の震えは前にも増して悪化しており、呼吸も荒くなっている。さらには冷や汗も酷くかいている。

「……行かなきゃ。早く行かなきゃ、また、殺されてしまうかも……。ヤダ……、ヤダ……!ガルムさんとアルトさんに会えなくなる……!早く、しないと……!」

ハルは心の声を小さく漏らしながら、ゆっくりと進み始めると、母親は当たり前だとでも言うように、高圧的に話し続ける。

「そうよ。早くこっちに来なさい。私の手を煩わせないで。」

俺は正常な考えができなくなっているハルの前に出て肩を掴み、訴えかける。

「ハル、しっかりしろ!ハル!」

「っは、っは……!ヤダ……、やめて……!離して……!早くしないと、またっ……!」

「っ……!」

ここで初めてハルの顔を見たが、虚ろな目で瞳孔が開ききっていた。さらに、焦点が上手く合っておらず、恐怖で涙していた。その姿を見ると、心が痛くなった。ハルは俺の制止を振り払ってさらに前へとヨロヨロと進んでいく。

クソッ……、ハルには申し訳ないが、一旦意識を失わせて冷静にしなくては……!

「っ……!」

その瞬間、視界の端で龍人が動く気配がした。マズイと思い、急いでハルを抱き寄せ守る。そして、視線を戻せばガルムが龍人の手を掴んで止めていた。龍人は不快そうな顔をしてガルムに問いかける。

「何をする。」

「それはこっちのセリフだ……!」

「何って、そやつが正常な状態に見えないから、意識を失わせようとしただけだが?」

「それは俺達がやるから、お前の手出しは必要ない。」

そうだ、ハル……!

慌ててハルを確認すると、腕の中で相変わらず"嫌だ、嫌だ"と言いながらもがいており、とても苦しそうだった。

「すまない、ハル……!」

「っ……、」

俺はハルの首に的確に手刀をいれ、意識を失わせる。力が抜け、俺の腕に収まってくれたことに一先ず安堵する。俺はハルを抱えて立ち上がり、龍人に向かい直る。

「見ての通り、このままでは面会も何もないだろう。今日はもう帰る。」

「ふむ……、許可しよう。」

許されなくとも、意地でも帰ったが、まさか、こんなにあっさりと許可されるとは……。何か裏があるのかもしれないが、早くこの場をされるのなら、どうでもいい。
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