ルピナスは恋を知る

葉月庵

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287話

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あっ、頭を撫でられている。やっぱり落ち着くというか、なんというか。安心するな。

ゆるりと瞼を上げれば、眠る前と同じような景色が視界に入る。

「ん?起きたか、ハル。」

「えっ、ガルムさん……!?」

えっ、あれ……!?確か私、アルトさんの膝の上で寝たはずなのに、なんでガルムさんの膝の上で寝ているの……!?アルトさんは……!?

私が部屋の中を見回していると、丁度お茶を淹れていたらしく、カップを持って向かいを見ていた。私の視線に気づいたのか、振り向いて微笑んでこちらに近づいてきた。

「おはよう、ハル。よく眠っていたな。」

「はい、おかげさまで……。あっ、いえ、そうではなく……!起こしてくれなかったんですか……?」

「あぁ。眠気が来ていたのは、それほど疲れていた証拠だからな。騙した感じになってすまないな。」

「そう、なんですね……。」

アルトさんの言うことが正しいのだろうけど……。でも、ガルムさんのこと、出迎えたかったな……。

すると、私が少し落ち込んでいることに気づいたガルムさんがある提案をしてくれる。

「そうだな……、これから温泉にでも行くか?」

「それは良いな。ついでに夕食も食べに行こうか。」

「分かりました。では、準備しないとですね。」

こうして私達は本来の温泉旅行らしく、温泉に行くことになった。準備も終わり、部屋を出て玄関へと向かうと丁度ドレットさんがいて、アルトさんが温泉に行くことと夕食は要らないことを伝えると、楽しんできてねと手を振ってくれた。

今回の温泉旅行では、私のリハビリも兼ねているため、温泉への道中では歩かせてもらっていた。ガルムさんとアルトさんは私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれているため、本来より時間がかかってしまった。お二人と手を繋いだため、私が恥ずかしがっていたのも原因の一つだろう。

「ここですか……?」

「あぁ、そうだ。早速入ってみようか。」

お二人に手を引かれ、施設内へと入っていく。中へ入ると、思ったよりも広く、何か瓶の飲み物を飲んでいる人や椅子に座ってゆっくりしている人がいた。その光景を初めて見るものだから、私の視線は色々な所に彷徨っていた。

「フフッ……、興味深いって感じだな。じゃあ、俺が人数分の会計をしてこよう。ガルムと一緒に少し待っていてくれ。」

「あっ、すみません。ありがとうございます。」

私が少し遅れてお礼を伝えると、アルトさんはニコッと微笑みながら頭を撫でてから会計へと向かった。それを見送ると、ガルムさんが顔を覗き込んでくる。

「ハル、何が気になっているんだ?分からないことがあれば聞いてくれ。」

「あっ、えと、では……、あの人達が飲んでいるあの瓶の飲み物はなんでしょう……?白は牛乳ですか……?他にも茶色やピンクがあって……、」

「あぁ、あれか。そうだな、白いのは牛乳だ。茶色はコーヒー牛乳、ピンクのはイチゴミルク。これは温泉ならではの光景だな。」

「これが温泉ならではの光景……。」

丁度瓶の蓋を開けて傾ける人がいて、視線が釘付けになってしまう。

確かに今時、瓶から直接飲むことなんて、見たことないかも。温泉上がりの牛乳、そんなに美味しいのかな……?す、凄く美味しそうに飲んでいる……!

「ククッ……。」

「……?」

「よし。なら、あがったら飲んでみようか。」

「い、いいんですか……!」

「あぁ。俺も久しぶりに飲みたくなってきたしな。」

そんな会話を交わしていると、タイミングよく会計を済ませたアルトさんが戻ってきた。

「ん?なんだ、嬉しそうだな?ハル。一体どんな話をしていたんだい?」

「えと、温泉からあがったら牛乳を飲もうって話していたんです。温泉ならでは、なんですね。初めて知りました。」

「なるほどな。なら、牛乳のためにも早く温泉に入ってしまおうか。俺も久しぶりだが、あれは格別だぞ?」

「そうなんですね……!楽しみにしてます……!」

アルトさんがこんなに言うなんて、相当美味しいんだ……!

こうして私は期待を膨らませながら、お二人に連れられて、脱衣場まで向かうのであった。
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