ルピナスは恋を知る

葉月庵

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52話

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私はあの後、サリアさんとアキラさんに追加してもらった限定メニューの作り方を教えた。業務自体はガルムさん達が迎えに来てくれるまで何も問題はなく進んでいった。

ガルムさん達が迎えに来てくれ、業務からあがろうとした時、サリアさんからジャラッと音のする袋を手渡された。中身を見ると、相当な金額が入っていた。私は、こんなに受け取れないと主張したが、一週間頑張ってくれたし、新しいメニューも増やせたからといって譲ってくれなかった。なので、私は渋々受け取ることにした。

ガルムさん達と合流し、夕食を食べている時はいつものように、雑談をしていた。アルトさんと会ってもらう約束については、食事中に約束した時間帯と場所を伝えた。ガルムさん達をはそれを了承してくれ、宿に戻った。

そして朝をむかえ、私達はいつもより遅くに朝食を済ませ、そのまま約束の地でアルトさんを待っていた。

「ハル君、そう言えば、今日会う人の名前ってなんて言うんすか?」

「あっ……。すみません、伝えていませんでしたね。えと、アルトさんという方です。」

「何?アルトだと?いや、まさかな……」

ガルムさんがアルトさんの名前にピクッと耳を震わせ、反応する。ガルムさんの知り合いの中に同じ名前の人がいるのだろうか。

「おや、ハル。もう来ていたのか。すまない、待たせてしまったかな。」

声のする方へ振り向くと、アルトさんが早歩きで寄ってくる。

「アルトさん、全然待っていないので、大丈夫ですよ。ガルムさん、紹介します。こちら、アルトさんです。……ガルムさん?」

私は今日の目的を早速果たすべく、ガルムさん達にアルトさんを紹介する。ただ、ガルムさんの方を向くと、目を見開いていた。

「なっ……!?まさかとは思ったがお前だったのか。」

「……それはこちらの台詞だ、ガルム。」

「えっ、……あのっ………。」

ガルムさんとアルトさんの間に嫌悪感が漂っており、私は困惑してしまう。

二人が知り合いだったことも驚きだが、こんなに険悪なのは、何か二人の間に何かあったのだろうか。

「は、ハル君。アルトさんとはどういう感じで知り合ったの?」

珍しくレオさんが若干動揺しながら話しかけられる。

「えと、お店で接客している時にアルトさんから話しかけてくれて知り合いました。」

「そうか……。つまりそういう……。」

そう言ってレオさんは頭を抱えてしまう。そんなレオさんを心配しながら、ふと未だ険悪な雰囲気を放っているガルムさんとアルトさんの方を見ると、丁度アルトさんが口を開いたタイミングだった。

「それで、ガルムはハルが俺の所で働くことを許してくれのか?」

「許すと思っているのか?そもそも、ギルド長の手伝いってなんだ。そんな役職などないだろう。」

「ギ、ギルド長?」

えっ、アルトさんがギルド長?確かに冒険者ギルドの裏方の仕事をしていると言っていたが、そんな……。

私は驚きの眼差しでアルトさんを見る。するとアルトさんは肩を竦め、微笑みながら続ける。

「すまない、ハル。萎縮してしまうかもと思って黙っていたんだ。それで役職についてだが、ハルが来てくれるのなら、ギルド長専属秘書として新しく作る。」

「なぜそこまでする。」

ガルムさんがアルトさんを睨みながら言う。

「ハルが好きだからに決まっているだろう。」

!?

不意に好きと言われ、顔が赤くなる。まさか人前でも言うなんて思わなかった。

「ハーレムはどうした。」

「ハルに惚れてから解散した。そのくらいハルのことを好いている。そういうガルムはどうなんだ?なぜハルに固執する、どうせハルに中途半端にマーキングしているのはお前なんだろう?」

えっ、マーキング?ガルムさんが?マーキングって好意を抱いている相手に他の人が近づかないようにするっていう?あるわけない……よね?

「うっ……、俺は……、そ、そうだ、ハルにはまだ借りを返してもらっていない。だからハルに離れてもらうわけにはいかない。」

「「ちょっ!ガルム」さん!!」

ガルムさんの返しにレオさんとウィルさんが驚きと怒りを含んだ表情で声を荒げる。

そう、だよね。ガルムさんが私なんか好きになるなんて、ないよね。あれ?私、期待してたの、かな……?あるわけ、ないのにっ……。

「お前っ……!ふんっ、まあいい。ハルは俺が惚れさせて俺のものにする。せいぜい借りでも返してもらっておけ。ではハル、またな。」

アルトさんは私に手を振って背を向け歩き出した。私は一度に多くの情報が入ってきたことにより、頭が混乱していたため、短く返事をしてアルトさんを見送った。
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