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終幕後03 アーヴァイン大司教の活躍
15. リリーの結婚と地方貴族の諍い 6
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リリー回です
蛇足かなと思いましたが、アーヴァイン編のヒロインなので
____________________________
嘘みたいだわ……。
リリーは心の中で呟く。
正装に身を包みながら、今日という日を迎えられた幸せを噛みしめる。
アーヴァイン大司教が見合いを勧めてきてからの一年は怒涛のように過ぎ去った。
相手のイライジャは、大司教が薦めるだけあって好青年だった。
その出自から自信の無いところはあったが、他人を慈しみ思いやりのある言動は、人柄の良さを表していた。
下位貴族である男爵家の娘であるリリーが、高位貴族である伯爵家に嫁ぐのは、作法や知識の差があり過ぎてそのままでは伯爵夫人として不足だった。
だから結婚相手同様アーヴァイン大司教の橋渡しで、アーキン侯爵家の養女になった。
一年間、みっちりと高位貴族に必要な知識を身に着けながら、婚約者との交流を続け愛を育んだ。カーティス家の家業である北方貿易に関しては、市井で暮らしていたイライジャが、歴代当主の誰よりも上手く経営してみせており、将来安泰だ。
不祥事によって傾いた家は、ファーナム伯爵家との和解で、あっという間に元に戻り、さらには大きな黒字を叩き出した。当主の誠実な領地経営の実績と継嗣の手腕の賜物だった。
結婚の当日を迎え、リリーの心の中に不安はなく、これからのことで胸がいっぱいだった。
馴染みのあるギーラン大聖堂が、人であふれかえり、日ごろの静謐な雰囲気は吹き飛んでいたが。厳かな佇まいも空気も相変わらずだ。
緊張しならが一歩一歩、前に進み婚儀が始まった。
アーヴァイン大司教の声が聖堂内に朗々と響く中、幸せに小さく涙を零す。
多くの人たちに祝福されながら、人生最大の幸せを感じる。
そしてその幸せは生涯に渡り続くことを感じていた。
「イライジャ様、これからもよろしくお願いします」
最後の客が帰り、ようやく結婚の一連の儀式が終わった街屋敷は、本来の住人だけになり静けさを取り戻していた。
伯爵家の街屋敷にしてはややこじんまりとした新居は、しかし家格に相応しい調度を揃えている。
不祥事を起こした長男の住居を、使いまわすのは嫌だろうという舅の計らいにより、新たに家を建てたのだ。
王宮に近く貴族街の中でも一等地に構えた屋敷は、リリーの養父母である侯爵家から見ても立派な建築だった。必要以上の贅沢を好まず、身の丈にあった生活を良しとする性格のカーティス伯爵は、息子夫婦の新たな門出のために、惜しげもなく金を使った。
かなり無理をして建てたのではと心配すれば、花嫁修業をしている一年の間に、前年までの赤字を取り戻したから大丈夫だと、舅であるカーティス伯爵は微笑んだ。
実際のところイライジャが跡を継がずとも、結婚したときに最後のまとまった金を渡すために、少なくない額の金を用意していた。父親としてできることは、母子が安心して暮らせるための配慮と、資金援助しかできなかったからだ。その他の教育や生活といったものは、嫡子の代わりにとって必要な事であり、血を分けた子を純粋に気遣ったものではないことを、父であるカーティスは誰よりも理解している。
その資金を使えば、屋敷を整えることなど簡単なことだったのだ。
蛇足かなと思いましたが、アーヴァイン編のヒロインなので
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嘘みたいだわ……。
リリーは心の中で呟く。
正装に身を包みながら、今日という日を迎えられた幸せを噛みしめる。
アーヴァイン大司教が見合いを勧めてきてからの一年は怒涛のように過ぎ去った。
相手のイライジャは、大司教が薦めるだけあって好青年だった。
その出自から自信の無いところはあったが、他人を慈しみ思いやりのある言動は、人柄の良さを表していた。
下位貴族である男爵家の娘であるリリーが、高位貴族である伯爵家に嫁ぐのは、作法や知識の差があり過ぎてそのままでは伯爵夫人として不足だった。
だから結婚相手同様アーヴァイン大司教の橋渡しで、アーキン侯爵家の養女になった。
一年間、みっちりと高位貴族に必要な知識を身に着けながら、婚約者との交流を続け愛を育んだ。カーティス家の家業である北方貿易に関しては、市井で暮らしていたイライジャが、歴代当主の誰よりも上手く経営してみせており、将来安泰だ。
不祥事によって傾いた家は、ファーナム伯爵家との和解で、あっという間に元に戻り、さらには大きな黒字を叩き出した。当主の誠実な領地経営の実績と継嗣の手腕の賜物だった。
結婚の当日を迎え、リリーの心の中に不安はなく、これからのことで胸がいっぱいだった。
馴染みのあるギーラン大聖堂が、人であふれかえり、日ごろの静謐な雰囲気は吹き飛んでいたが。厳かな佇まいも空気も相変わらずだ。
緊張しならが一歩一歩、前に進み婚儀が始まった。
アーヴァイン大司教の声が聖堂内に朗々と響く中、幸せに小さく涙を零す。
多くの人たちに祝福されながら、人生最大の幸せを感じる。
そしてその幸せは生涯に渡り続くことを感じていた。
「イライジャ様、これからもよろしくお願いします」
最後の客が帰り、ようやく結婚の一連の儀式が終わった街屋敷は、本来の住人だけになり静けさを取り戻していた。
伯爵家の街屋敷にしてはややこじんまりとした新居は、しかし家格に相応しい調度を揃えている。
不祥事を起こした長男の住居を、使いまわすのは嫌だろうという舅の計らいにより、新たに家を建てたのだ。
王宮に近く貴族街の中でも一等地に構えた屋敷は、リリーの養父母である侯爵家から見ても立派な建築だった。必要以上の贅沢を好まず、身の丈にあった生活を良しとする性格のカーティス伯爵は、息子夫婦の新たな門出のために、惜しげもなく金を使った。
かなり無理をして建てたのではと心配すれば、花嫁修業をしている一年の間に、前年までの赤字を取り戻したから大丈夫だと、舅であるカーティス伯爵は微笑んだ。
実際のところイライジャが跡を継がずとも、結婚したときに最後のまとまった金を渡すために、少なくない額の金を用意していた。父親としてできることは、母子が安心して暮らせるための配慮と、資金援助しかできなかったからだ。その他の教育や生活といったものは、嫡子の代わりにとって必要な事であり、血を分けた子を純粋に気遣ったものではないことを、父であるカーティスは誰よりも理解している。
その資金を使えば、屋敷を整えることなど簡単なことだったのだ。
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