そこにある愛を抱きしめて

雨間一晴

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第二十四話 分岐点

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「俺。親にさ、せっかく良い高校入ったんだから、良い大学行けって言われたんだけどさ。なんか違うなって思っててさ」

 私も何のために大学に行くのか分からないし、成績が良ければ尊敬されて、いじめられなくなるだけ。

 良い大学、良い会社に入れば、良い人ばかりとは限らない。会社でいじめられない保証なんて無いし、頭の良し悪しに関わらず、自分のために平気で他人を傷付けれるのが人間だ。私はそんな人々しか知らなかった。

「それでさ、何か自分を変えたくて、初めて美容院に行ったんだよね。美容師の人にさ、相談してみたんだよ。そしたら、学生のうちに気分転換で髪を染めてみたら、何か見方も変わるかもね。って言われてさ、そしたら何か全部が新鮮に見えてきたんだよ」

 何だか、怪しい宗教の勧誘のように、瞳を輝かせているのを横目で確認して、溜め息を鼻から流しながら試験勉強を続けた。

「それで俺、美容師になろうって思ってさ。専門学校に行こうと思うんだ」

「はあ。それで、そんな話を私にして、何になるんですか?」

「委員長、頭良いじゃんか?その美容師に会ってもらえないかな?」

「……何でですか?」

「その美容師が、専門学校でも先生してくれるみたいでさ。特別講師的な。結構有名な人らしいんだよ。それで、頭の良い委員長に判断してもらいたいんだよ。俺が、その専門学校に行くべきかを」

「はあ。自分で決めて下さいよ」

「うーん。もういい、はっきり言う!委員長にも変わってほしいんだよ!いつも悲しい顔して、黙々と勉強してるじゃんか。死んだ目でさ。俺もそうだったから分かるんだ。でも、俺は解放された気分になれたんだよ、その美容師と会って。いつか、俺も人を前向きに出来るような美容師になりたいって、初めて夢を持てたんだよ」

「何言ってるのか分かりません。押し付けられても困ります」

「頼む!騙されたと思って行ってくれ!行けば必ず分かるから。これ、紹介状!住所書いてあるから。あと、お金も俺が出すから!」

 その人は、机の上に一枚のカードと、一万円札を叩き付けるように置いた。

「ちょっと!そんな自分勝手に、困ります!」

「頼む!」

 机に打ち付けるように、深々とお辞儀をする姿に、休み時間の教室が少しざわついた。

「わ、分かりましたから、それ止めて下さい。あと、お金は自分で出します、じゃないと行きません」

「行ってくれるんだな!ありがとう!絶対行って良かったって思うから!」

「はあ。変わらないと思いますけど……」

 そうして、何となく予約した美容院。自分が店長になるとは、その時は夢にも思っていなかった。
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