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第六十八話 傷物(7)
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誰も居ない商店街を走り抜けた。すれ違ったのは背を丸め、黄色い目で睨む黒猫だけ。排水溝に流れる水の音と、嫌になるくらいの寒い雨の匂い。自分の白い息を置き去りにして、インナーシャツ一枚で飛び出した彼女を探している。
美容院から歩いても五分しない場所、そこに一秒でも早く行きたかった。普段通らない薄暗い路地裏を抜けて、傘がベージュ色の室外機に当たり、呆気なく折れても気にしなかった。
「はあ、はあ。お願い、ここに居てよ……」
肌色の腰まである石垣に手を置いて、目眩を抑えながら必死に息を吸った。石垣は美容院の椅子くらいの大きさで、キノコの形をしていた。そこに付いている黒い表札には、いつもと変わらず可愛い字体で〈きのこ公園〉と書いてある。
綺麗に整備された石畳が、手入れされた芝生を割いて、丘に向かって登るように続いている。平べったい緑の饅頭のような丘の頂上には、赤い屋根をした巨大なキノコがあった。それは螺旋階段が中にある、二階建ての建物で、でっぷりと太ったように広がる陶器のような色の体には、待ち構えるように大きな木製のドアが付いていた。
こんな時間に来たことは無かったので、虫食いのような丸い窓から滲むように漏れる灯りが、常に点いている物なのかも分からなかったが、中に震える彼女がいることを願って、走ることしか出来なかった。
丸いドアノブに手をかけて、目を閉じて一度だけ大きく息を吸った。
美容院から歩いても五分しない場所、そこに一秒でも早く行きたかった。普段通らない薄暗い路地裏を抜けて、傘がベージュ色の室外機に当たり、呆気なく折れても気にしなかった。
「はあ、はあ。お願い、ここに居てよ……」
肌色の腰まである石垣に手を置いて、目眩を抑えながら必死に息を吸った。石垣は美容院の椅子くらいの大きさで、キノコの形をしていた。そこに付いている黒い表札には、いつもと変わらず可愛い字体で〈きのこ公園〉と書いてある。
綺麗に整備された石畳が、手入れされた芝生を割いて、丘に向かって登るように続いている。平べったい緑の饅頭のような丘の頂上には、赤い屋根をした巨大なキノコがあった。それは螺旋階段が中にある、二階建ての建物で、でっぷりと太ったように広がる陶器のような色の体には、待ち構えるように大きな木製のドアが付いていた。
こんな時間に来たことは無かったので、虫食いのような丸い窓から滲むように漏れる灯りが、常に点いている物なのかも分からなかったが、中に震える彼女がいることを願って、走ることしか出来なかった。
丸いドアノブに手をかけて、目を閉じて一度だけ大きく息を吸った。
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