眠れる石像の献身

音羽夏生

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石像、目覚める

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 食べることに興味はないが、食べなければならないのなら、食べたいと思えるものだけを食べたい。
 一見道理のようでいて、その実ただの我が儘の結実が、『時短魔法大全』に記載された『完璧な朝食の作り方』である。そのスクランブルエッグバージョン──卵料理には数種類のバリエーションがある──が再現された朝食に、アーネストは心身ともに満たされた。

「ああ、美味しかった。ごちそうさま」

 にこにこと上機嫌で口元をナプキンで拭う師の顔を、向かいの席からギルバートは感慨を持って眺める。
 子供の姿で生活してきたせいか、研究以外は能がない浮世離れした無防備さのせいか、アーネストの表情は屈託がなく開けっ広げだ。
 基本的に起伏に乏しく、喜怒哀楽のうち怒りと哀しみをギルバートは見たことがないが、アーネストはうれしいこと楽しいことを素直に顔に出す。成人の姿のその笑顔を見るのは初めてのことで、ただただ眼福としか言いようがない。
 柔らかそうにカールした艶やかな銀髪に縁取られた顔はビスクドールのように精緻に整い、中でも印象的な、謎めいた銀灰色の──研究から離れている時は死んだ魚のような──瞳は、その奥に蓄積された膨大な知識の塔を連想させる。
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