トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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2章

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・アメリカ軍は、ソロモン諸島の上陸作戦については相当の犠牲を払ってでも作戦を続行する覚悟を決めている
・ソロモン諸島に上陸した部隊が一ヵ月戦闘継続の事態になれば、アメリカ軍は強力な増援部隊を派遣するだろう

 その一週間後には、次の報告がなされた。

・アメリカ西海岸のサンディエゴ軍港から、大船団がオーストラリアに向け出航
・それらの貨物は一六万三千トンに及び、主として沿岸砲、敵前上陸用快速艇である
・別にニューオリンズより出航した四隻は、長距離飛行が可能な海軍飛行艇を積載
・アメリカ軍は太平洋諸島の占領計画を策定――その戦力を当面太平洋方面に集中することになるため、大西洋方面が手薄になる恐れからイギリスから非難の声あり

 日本軍が占領する南洋のソロモン諸島は、アメリカからオーストラリアへ向かう途上、日本軍の南方戦線の南端に位置する。つまり桐機関は、両軍が相見える戦場と戦闘規模を事前に報告しており、それはマドリードの公使館を経由して母国に打電されていた。
 アメリカ軍による大反攻の、予告電文だった。

 アメリカ軍が大量の兵力や物資を送り込んでも、それを戦場となる島へ揚陸できなければ意味はない。島に駐留する日本軍は海岸線を死守し、艦隊が敵の輸送船を叩く。敵の動きを正確に予測し事前に備えがあれば、完勝とはいかないまでも、三ヵ月前のミッドウェー海戦の敗北から多少なりとも失地回復し、国際的な日本の国力への評価を保つことができる。
 それは実際の戦場だけではなく、外交という名の戦場でも非常に重要なカードだった。日本軍は精強と思われているからこそ、取引相手として旨みがあり、スペインも外相を通じてテオバルドと彼の率いる諜報網を斡旋してくれたのだ。

 なのに朗報はいつまで経っても届かない。大本営は、今年五月の珊瑚海海戦から自軍の戦果を水増しするようになっており、中立国にいて他国の報道に接することができ、その事実に気づいた志貴たちは、すでに大本営発表を信用しないようになっていた。他国の報道による自国の戦果は、アメリカ軍を相手に大勝利と言えるものではないことを伝えていた。

「兄さんは、駐在武官が長いでしょう。掴んだ情報が握り潰されている、そう感じたことはない?」
「まだ始まったばかりだ、焦るには早い。それに正直、俺も梶さんの情報は信用しきれないところがある」
「――イチ兄さん、何か知ってるの」
「いずれバレることだろうから教えるが、梶さんにはまだ黙っててくれ」

 一月前、本国の軍令部から一洋宛に電信があったという。発信者は軍令部次長で、駐スペイン公使から送られた情報についての照会だった。梶から送られる情報の信憑性と工作員の素質について、意見を求められたのだ。
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