トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

文字の大きさ
91 / 237
8章 ※

7

しおりを挟む
 言うなり布団を跳ね除け、うつ伏せに押さえつけられた。腰だけを引き上げられ、ベッドとの隙間に丸めた布の塊を詰められる。さきほど脱がされた寝間着かと思ったが、肌に当たる乾いた感触から、背後の一洋が脱いだものだと知れた。

「何するの!」
「これが空になるまで、今夜は存分に達かせてやる。男が気持ちよくなれるのは、ここだけじゃない」

 これ、と言いながら撫でられたのは、散々搾り取られたところだ。また弄り回されるのかと怯え、慌てて逃れようとしたが、鍛え抜かれた軍人であり、柔道家でもある男を前に、志貴は非力な子供同然だった。
 しかも、逃げられないならせめて、と懸命に腰をベッドに押し付け、前に触られないようにと足掻く志貴を嘲笑うように、濡れた指が触れたのは双丘の狭間――無防備な後孔だったのだ。

「ひっ! あ、あ、アッ、あぁ……」

 まだ身の内に燻る愉悦に緩んでいたそこは、具合を計るように揉まれて、ひくりと蠢く。それを確かめた指先がそっと中に押し入っても、嫌がるそぶりも見せずに呑み込んでいく。
 そんな場所を弄られたことなど、これまでの人生で一度もない。それなのに志貴の体は、体内に一洋の指を受け入れる衝撃と生理的な不快感を、甘い悦びへと変換していた。
 潮を噴くという未知の体験が、快楽の感度を歪めてしまったのかもしれない。中を探られて生まれるのは、陰茎を触られる快感とはまるで違う、むず痒いような、それだけに腹の奥に響く、重く鈍い肉の悦びだ。
 そんなものに感じ入り、また濡れ始めている自らの肉体に恐れを感じ、少しずつ奥に押し入り暴こうとする指を払おうと、志貴は腰を振りたくる。その様は艶めかしく、男の指を深々と咥え、もっともっとと貪欲に肛悦に狂う淫乱と何も変わるところはなかった。

「はあぁ……ぁあ、んうっ、……あぁう……」

 逃れようとする自らの動きのせいで指が当たる場所が変わり、中の粘膜が引き絞られる。まざまざと感じる一洋の指の形、そして深まる愉悦に怯え、志貴は悲鳴じみた声で叫んだ。

「抜いてっ」
「何を」
「ゆ、……アッ! ゆびっ」
「誰の指をだ?」
「イチ兄さんの、指……あぁぁっ」
「俺の指を、どこから抜くんだ」

 「言わないとわからないぞ」と意地悪な声が促す。
 一洋は、徹底的に剥ぎ取ろうとしている。志貴が自らを取り繕うために作り上げ、身に付けた鎧を、すべて。無力な子供が泣きながら自分の胸に飛び込んでくるのを、待ち構えているのだ。
 そして追い詰められた志貴に、抗う術は残されていなかった。

「……くの、僕のっ、……肛門から……」
「志貴の尻の穴から、俺の指を抜けばいいのか」

 脳を焼く羞恥に押し潰されそうになりながら、どうにか小さく頷いたが、一洋はにべもなく言い捨てる。

「はっきり言うんだ。俺が言った通り、してほしいことを声に出してみろ」

 あまりの淫らさと絶望に、目の前が真っ暗になった気がした。それでも従わなければ、一洋は志貴のそこを――男に指を入れられて悦ぶ穴を、弄ることをやめないだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

おめでとうが言えなくて

まめなぎ
BL
祝えないのは、最低だからじゃない。 まだ手放せていないからだ。

処理中です...