トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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9章 ※

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「前立腺の場所はわかったな。こうして中からも吐き出して、体を楽にしてやれ」
「いや、できない……したくない、こんなこと……!」
「駄目だ、するんだ。さもないとお前は、また眠れない夜を過ごすことになる」

 上辺だけの約束をしても、一洋にはきっと見破られる。その時何をされるのか――一晩かけて思い知らされ、今またこのような目に遭わされている志貴に、その愚を犯す気力は残っていなかった。

「嫌だ、許してっ。自分で、するなんて……絶対に、嫌……お願い……っ」

 涙を堪えながらの懇願は、か細く掠れていたが、一洋の耳に届いた。しかし代わりに、卑猥で、喉が震えるほど屈辱的な頼み事をしなければならなかった。

「――これから、毎週日曜日の夜、僕の……尻の、穴に、イチ兄さんの、……指、を入れて、……達かせてください……」

 昨夜とは正反対の懇願を、一洋が一方的に宣言したことを、自らねだる形で復唱させられる。導かれた言葉がもたらす酷い恥辱に、眩暈すら感じたが、拒むことはできなかった。
 応えるように、一洋の指が再び志貴の中に埋め込まれる。二人の指でくつろげられた中を、太い男の指が二本でかき回し、容赦なく前立腺を擦り上げる。

「あ、アッ、お願い、許してっ、……もう、出ないっ。出ないからっ!」
「出せなくても達けるだろう。今のお前なら、できるはずだ」

 やさしくも冷酷な声と、執拗な手技の果てに押し上げられた絶頂は凄まじかった。
 搾り尽くされた陰茎は反応しないまま、快楽の源泉から、背筋を電流のような衝撃が走り抜ける。そのまま脳天まで貫き、一瞬視界がぶれるほどの悦楽が全身に散っていく。痙攣する体に呼吸が追いつかず、ひゅっと喉が鋭い音を立てる。

「……あ、あ……はっ、あぁ……」

 射精が済めば減退していく男の快感とはまったく異質の、いつまでも脳が悦楽に侵される感覚。肌に触れる一洋の体温にすら煽り立てられ、快感が細波のように何度も押し寄せる。

「よくできたな、志貴。――お前の体は、甘やかされることに飢えていたんだよ」

 低い囁きを、鼓膜が快感に変換して肌を泡立たせ、全身に行き渡らせていく。反論の言葉は無意味だと悟り、――志貴の心は折れた。
 自身を鎧っていたものを、すべて剥ぎ取られた。もう一洋の前で、自身を取り繕うことはできなくなったのだ。

 年末年始の四日間、そうして『薬』を処方された。手足に絡みつくようにねっとりと重く、滴るように甘い一洋の言葉と愛撫を、体の中に外に、余すことなく擦り込まれた。
 反抗心を根こそぎ奪われ、作り変えるように快楽を注ぎ込まれ続けた志貴の体は、男の淫らな手技に――完全に屈服した。
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