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17章
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何事もないように、テオバルドは車の方へ歩き出す。おそらく久しぶりに訪れたであろう両親の墓を、振り返ることもない。
敬愛する両親にやっと恋人を紹介できて、積年の肩の荷が降りた――そんな晴れ晴れとした風情で、心なしか足取りも軽く見える。
――彼の目的は、絶対にそれだけではない。
ブナ林の広場での口づけは、褒美ということを差し引いても、いつもより長く執拗で官能的な、互いの情欲を許される極限まで炙り出すものだった。執拗というより縋りつかれるような、切迫した重苦しさを感じた。
それが一転、墓地では祝福を乞う厳かさで、唇を結び合わせた。どちらにも共通するのは、離れがたいという一点だけだ。
テオバルドは何かを隠している。
そう確信しても、志貴には、朗らかに明るい顔をした男を、この惨劇の場所で問い質すことはできなかった。これ以上、彼の負った傷を抉りたくなかった。
一見、何も変わらない。二人の関係が、これまでとは少し形を変えたことも、どちらかが言い出さなければ表出することはない。
逢瀬のような遠出も、終わってしまえば、それぞれの暮らしに戻るだけだ。何も変わらない。――そう取り繕うために、二人は普段の自分を演じ続ける。
飼い主と犬という役を。
敬愛する両親にやっと恋人を紹介できて、積年の肩の荷が降りた――そんな晴れ晴れとした風情で、心なしか足取りも軽く見える。
――彼の目的は、絶対にそれだけではない。
ブナ林の広場での口づけは、褒美ということを差し引いても、いつもより長く執拗で官能的な、互いの情欲を許される極限まで炙り出すものだった。執拗というより縋りつかれるような、切迫した重苦しさを感じた。
それが一転、墓地では祝福を乞う厳かさで、唇を結び合わせた。どちらにも共通するのは、離れがたいという一点だけだ。
テオバルドは何かを隠している。
そう確信しても、志貴には、朗らかに明るい顔をした男を、この惨劇の場所で問い質すことはできなかった。これ以上、彼の負った傷を抉りたくなかった。
一見、何も変わらない。二人の関係が、これまでとは少し形を変えたことも、どちらかが言い出さなければ表出することはない。
逢瀬のような遠出も、終わってしまえば、それぞれの暮らしに戻るだけだ。何も変わらない。――そう取り繕うために、二人は普段の自分を演じ続ける。
飼い主と犬という役を。
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