トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

文字の大きさ
225 / 237
19章 ※

8

しおりを挟む
「──自分で確かめたらいい」
「ああ、そうするさ」

 そう言い放ち、テオバルドは浴槽から志貴を連れ出すと、その体を丁寧に拭った。自身の体は適当に済ませながら、志貴の手首を掴んで隣接する寝室に足早に移動する。ベッドの掛け具をはぐったところで、押し倒されるようにもつれ込んだ。
 嫉妬と興奮が、色事に慣れた男から余裕を失わせている。
 そのことに、志貴は仄暗い悦びを感じる。この期に及んで、この美しくしなやかな男が求めるのは自分なのだと確信できるからだ。

(それで、もう十分だ……)

 しかし、物思いに耽っていられたのもそこまでだった。
 テオバルドは志貴の膝裏を掴んで大きく腰を持ち上げると、その下に枕を重ねて固定したのだ。体を二つに折り曲げられた状態で、さらに脚を大きく広げられる。あまりに無防備に秘部をすべて晒す姿勢に、かっと頬に血が上った。

「テオバルド!」
「俺には確かめる権利がある。そうだろ?」

 有無を言わせぬ剛い眼差しは、嫉妬に染められ反論を許さない。

「そう、だけど……ひっ⁈ やっ、やめ、そんなところっ!」

 制止する声が裏返るのも無理はなかった。尻の穴に、ぬるりと濡れて生温かいもの──男の舌が触れたのだ。
 浴室で執拗な洗浄に泣かされながら、男同士の性交では必要なことだと諭されひたすら耐えたが、まさかこんな目に遭わされるとは思っていなかった。妻との営みでも、前戯で女陰をやさしく刺激しても、秘部を舐めたことなどない。
 テオバルドの行為は、志貴の想定の範囲を超えていた。

「はあ、あっ、あぁ、汚い、やめろ!」
「あんなに何度も洗ってやっただろ。──全部味わわせろよ、あんたを。あんたの味も肌のにおいも、俺に染み込むまで教えてくれ。次はしばらくお預けになりそうだからな」

 次などないと、わかっているくせにそんなことを言いながら、テオバルドは穴の上でぬるぬると舌先を行き来させる。その刺激に耐えきれず、敏感な襞が妖しく蠢き始めると、太腿の後ろに手を掛けて、志貴の腰を殆ど垂直に持ち上げた。
 苦しい姿勢に思わず息を詰め、詰るように見つめた先で、テオバルドがニヤリと唇を引き上げる。絡めるように目と目を合わせたまま、尖らせた舌をずぶりと志貴の後孔に挿し入れた。

「ひいぃ! やっ、あ、あぁっ!」

 にゅる、ぬく、と生温かく柔らかいものが、志貴の中に沈んでいく。ぬるぬると敏感な入口を行き来したか思うと、尖らせた先を蠢かし、中の肉を味わおうとする。長いおあずけの果てにやっとありついた肉に、涎を垂らして食らいつく犬そのものの獰猛さだ。

「ひっ、あぁ、あ、やだっ、テオ、……あ……はぁ、あぁっ、んンッ!」

 腰を揺らめかせて逃れようとしても、力強い腕にがっちり押さえつけられ、殆ど身動きできない。なすすべもなく、愛する男の舌が、自らの恥ずかしい穴を出入りする様を見ていることしかできない。

「いや、テオ、これ……もう、いやっ、ぁあ……」
「随分な恥ずかしがりようだな、衛藤にはしてもらわなかったのか」
「こんな破廉恥なこと、誰がっ……あぁんっ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

縁結びオメガと不遇のアルファ

くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

おめでとうが言えなくて

まめなぎ
BL
祝えないのは、最低だからじゃない。 まだ手放せていないからだ。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...