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融点
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「本気で仰せなのですか? 男の后を立てるなど、御名を穢すお振る舞い。英名を危うくするならば、ご叡慮であろうとお諌めするのがユングリングの──『建国の五柱』の務めではありませんか」
「陛下には、八人もの皇子がいらっしゃる。今更皇后など、格付けの張りぼてのようなもの。子を産まぬ后でも、ミレニオの血を引いていれば、張りぼての役には立とう」
「後宮に陛下以外の男がいると知らしめるなど、皇統の正統性に、疑いの種を埋めるようなものなのですよ……!」
「ならば偽妃となるがいい」
──偽妃。
強い抑圧の下、服従に狭められてきた生の、最もおぞましい象徴。
紙一重で逃れたその形、後宮に納められた者たちと同化することを求められた恐怖が、ようやく脱出した今また、目の前に降り立ち、シェルに狙いを定めようとしている。
「父上……?」
シェルの存在を否定し続けてきた父が、今また肉体の形すら否定し、自らの生を生きることを否定している。
──何かが軋み、罅が入る、乾いた音が聞こえた気がした。
「五ヵ月も後宮に囚われて、『男』のままでいたのか。陛下は私に、息子が種無しとなり、我が家が断絶する瞬間を見せつけるおつもりなのか? ……お門違いも甚だしい、私にはクリスティーナがいる。何の痛痒も感じぬとはこのことだ」
「……ちち、うえ……」
「騒ぎとなる前に後宮へ戻れ。偽妃となり、『建国の五柱』として忠誠を証明せよ。御心を和らげ、ユングリングの務めを果たすのだ」
「陛下には、八人もの皇子がいらっしゃる。今更皇后など、格付けの張りぼてのようなもの。子を産まぬ后でも、ミレニオの血を引いていれば、張りぼての役には立とう」
「後宮に陛下以外の男がいると知らしめるなど、皇統の正統性に、疑いの種を埋めるようなものなのですよ……!」
「ならば偽妃となるがいい」
──偽妃。
強い抑圧の下、服従に狭められてきた生の、最もおぞましい象徴。
紙一重で逃れたその形、後宮に納められた者たちと同化することを求められた恐怖が、ようやく脱出した今また、目の前に降り立ち、シェルに狙いを定めようとしている。
「父上……?」
シェルの存在を否定し続けてきた父が、今また肉体の形すら否定し、自らの生を生きることを否定している。
──何かが軋み、罅が入る、乾いた音が聞こえた気がした。
「五ヵ月も後宮に囚われて、『男』のままでいたのか。陛下は私に、息子が種無しとなり、我が家が断絶する瞬間を見せつけるおつもりなのか? ……お門違いも甚だしい、私にはクリスティーナがいる。何の痛痒も感じぬとはこのことだ」
「……ちち、うえ……」
「騒ぎとなる前に後宮へ戻れ。偽妃となり、『建国の五柱』として忠誠を証明せよ。御心を和らげ、ユングリングの務めを果たすのだ」
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