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戴冠 ※
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「妹御にかつての護衛、お気に掛かるのはそれだけか」
いつか対峙しなければならない過去だと、覚悟していたことだ。懐かしく思う父の顔など殆ど記憶になく、塗り潰し消してしまうのに、さほど労力は必要ない。
だから心残りはクリスティーナとウルリカのみだと、シェルは言い切りたかった。
父も目の前の人物も、かつて心から慕った相手──その思慕は残酷な痛みをもたらしたが、自らの手で終わらせ、断ち切った。
そう、言い切りたかった。
「帝国に置いていかれたものは多かろう。さきほどから、最も大切なものから目を背けておられるようだが」
言いながら皇帝が触れたのは、自身の首に掛けられているメダルのペンダント。晩餐会で挨拶を交わした時には身につけていなかったそれには、瑠璃の短艇が象嵌されている。
皇帝の胸元で、月光と灯籠の灯りを弾く金色のメダルを、当て擦られてもシェルは直視することができない。
かつて、毎日自分の首に掛けられていたもの──そして皇帝の机の引き出しに、箝口布に包んで置いてきたものだ。
「突然行方をくらましたかと思えば、ミレニオの王太女と結婚、即位。書き置きの一つ、恨み言の一つでも残してくれたらと、何度思ったか知れぬ。──ああ、妃たちの評価表は残してくれたな。あくまでも忠臣でしかないのだと、改めて突きつけられたようで、どれほど憎らしく思ったことか」
「……差し出た真似を……」
いつか対峙しなければならない過去だと、覚悟していたことだ。懐かしく思う父の顔など殆ど記憶になく、塗り潰し消してしまうのに、さほど労力は必要ない。
だから心残りはクリスティーナとウルリカのみだと、シェルは言い切りたかった。
父も目の前の人物も、かつて心から慕った相手──その思慕は残酷な痛みをもたらしたが、自らの手で終わらせ、断ち切った。
そう、言い切りたかった。
「帝国に置いていかれたものは多かろう。さきほどから、最も大切なものから目を背けておられるようだが」
言いながら皇帝が触れたのは、自身の首に掛けられているメダルのペンダント。晩餐会で挨拶を交わした時には身につけていなかったそれには、瑠璃の短艇が象嵌されている。
皇帝の胸元で、月光と灯籠の灯りを弾く金色のメダルを、当て擦られてもシェルは直視することができない。
かつて、毎日自分の首に掛けられていたもの──そして皇帝の机の引き出しに、箝口布に包んで置いてきたものだ。
「突然行方をくらましたかと思えば、ミレニオの王太女と結婚、即位。書き置きの一つ、恨み言の一つでも残してくれたらと、何度思ったか知れぬ。──ああ、妃たちの評価表は残してくれたな。あくまでも忠臣でしかないのだと、改めて突きつけられたようで、どれほど憎らしく思ったことか」
「……差し出た真似を……」
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