【完結】后狩り

音羽夏生

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初光

18

 シェルは可能な限り冷たく声を作り、不快感を表した。

「無礼です、手を離してください。崖まで十分遠いでしょう」
「御身に万が一にも何かあっては、我が命はありません。どうぞご容赦を」

 国賓が不興であると態度に出しているのに、衛兵は意に介さず手の力も緩まない。その力強さが意思のこわさを表しているようで、シェルは後退ろうとした。

「手を離しなさい、一人で歩けます」
「本当に一人で歩けると?」

 尊貴なるミレニオ国王と、招待国の衛兵。
 圧倒的な身分差を盾にこの場を乗り切ろうと強気なシェルの言葉に、衛兵は揶揄を込めて口調を改めた。

「黒猫が気ままに一人で散歩を楽しみたいと言うなら、邪魔はしない。だがそれは、俺の庭の中での話だ」
「……貴方は、誰なのですか」
「──失礼、今は名乗る価値もない者です。どうぞこちらへ、陛下」
「私は部屋に戻ります」

 あくまで衛兵で通すのは、国交に支障を来すつもりはない──つまり私的で、表沙汰にしたくない行動ということになる。ならば国賓の立場であしらい、随員の目がある館内へ戻れば、それ以上の接触はできないはずだ。
 足早に歩き出したシェルを四阿へ誘導するように、衛兵は立ち塞がった。

「どうぞ、しばらくお付き合いください。──ユングリング公女の伝言をお知りになりたいのであれば」
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