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初光
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『私の愛しいRへ
王冠も帝冠も無意味です。ご自身の意思だけで、答えを導いてください。どのような選択をされても受け入れ、支えます。貴方が幸せになるならば、決してためらわないで。
貴方のGより』
(……選択?)
小さなカードの筆跡は、確かにクリスティーナのものだった。しかし、その意味するところに心当たりがない。
あの貸別荘で別れたきり、連絡どころか消息すらも不明だった妹の手紙としては、あまりに短かすぎる。最も案じていた近況にも触れておらず、筆跡以外のすべてが不自然である。
警戒と緊張に身を強張らせながらも、シェルは目の前に立つ男に問い掛けの眼差しを送った。
導かれた四阿の、石造りの腰掛けを勧められたため、長身をさらに見上げる形となる。
「妹にはいつ会えるのでしょう。貴方は、このカードの内容を知っているのですか」
軍帽の下で、衛兵は軽く頷いた。
「文面は存じませんが、こうして私を遣わしたのはユングリング公女ですので」
「まさか」
同盟国の君主として対応し、動揺は決して見せまいというシェルの決意は、あまりのことに一瞬で吹き飛んだ。
「まさかあの子が、陛下を使者に立てるなど……そのような不敬を申し上げるはずが」
「偽りを言って何になる。──今から大事な取引をしようというのに」
シェルが国賓の仮面を取り落としたのと同時に、衛兵は軍帽を脱ぎ、皇帝の顔になった。
日に輝く白銀の髪に縁取られた、氷の彫像のごとく硬質な美貌があらわになる。
王冠も帝冠も無意味です。ご自身の意思だけで、答えを導いてください。どのような選択をされても受け入れ、支えます。貴方が幸せになるならば、決してためらわないで。
貴方のGより』
(……選択?)
小さなカードの筆跡は、確かにクリスティーナのものだった。しかし、その意味するところに心当たりがない。
あの貸別荘で別れたきり、連絡どころか消息すらも不明だった妹の手紙としては、あまりに短かすぎる。最も案じていた近況にも触れておらず、筆跡以外のすべてが不自然である。
警戒と緊張に身を強張らせながらも、シェルは目の前に立つ男に問い掛けの眼差しを送った。
導かれた四阿の、石造りの腰掛けを勧められたため、長身をさらに見上げる形となる。
「妹にはいつ会えるのでしょう。貴方は、このカードの内容を知っているのですか」
軍帽の下で、衛兵は軽く頷いた。
「文面は存じませんが、こうして私を遣わしたのはユングリング公女ですので」
「まさか」
同盟国の君主として対応し、動揺は決して見せまいというシェルの決意は、あまりのことに一瞬で吹き飛んだ。
「まさかあの子が、陛下を使者に立てるなど……そのような不敬を申し上げるはずが」
「偽りを言って何になる。──今から大事な取引をしようというのに」
シェルが国賓の仮面を取り落としたのと同時に、衛兵は軍帽を脱ぎ、皇帝の顔になった。
日に輝く白銀の髪に縁取られた、氷の彫像のごとく硬質な美貌があらわになる。
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