【完結】后狩り

音羽夏生

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入宮

2

 つまり、后狩りはまだ果たされておらず、シェルを攫ったのは別の理由があると考えるのが妥当である。それを伺うまでは、大人しく過ごして女官たちを煩わせないようにしよう。幸い書棚には、興味深い書籍がずらりと並んでいて、ここを出るまで退屈はせずに済みそうだ。
 そう思っていられたのは、夕方入浴するまでだった。
 手振りで介添えを断ったシェルに、女官は素直に姿を消したが、代わりに二人の男が現れたのだ。後宮で働く男――老年と中年の宦官である。
 東には、宦官が後宮を管理する国があると聞くが、帝国では去勢された奴隷が就く職であり、その立場は女官よりずっと低く、数も少ない。主に力仕事を割り当てられるが、中にはシェルの知らない特殊技能を持つ者もいる。――皇帝を愉しませるべく、去勢された男妾を仕込むのだ。
 宦官たちは、シェルの抵抗を無視して浴槽横の椅子に座らせると、その肌と髪を丁寧に洗っていく。二人がかりで押さえつけられては立ち上がることもできず、小柄なシェルは逆らえない。
 宦官とはいえ男に触れられる嫌悪感に鳥肌を立てながら耐え、全身を磨き上げられた。二人の手が離れた隙に、逃げるように浴室を出ようとしたが、肩を押さえて阻まれる。
 それからは、地獄だった。
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