128 / 376
後宮
6
彼女に関する貴族社会の評は、このようなものである。破天荒というだけで悪評となっていないのは、ウルリカの誠実な忠勤と実力、彼女の後押しをしたのが亡きユングリング大公妃、そしてその意を受けたハルディス第一皇女だったことが大きい。
「こうしてお側でお話しできることを楽しみにしておりました、シェル様」
「若輩の身です、どうぞシェルとお呼びください。サンドベリ大公閣下からお叱りを受けてしまいます」
「ご冗談を。本当なら、陛下とお呼びするところですのに」
「それは断じてなりません。ウルリカ様もご存知でしょう」
シェルの扱いについて、後宮では一悶着があった。
皇帝は自ら狩り入れた后を、自身と同様に「陛下」と呼ぶように通達し、それに真っ向から反対意見を述べたのがシェルだったのだ。
皇后冊立の儀で正式に立后し、皇統譜にその名が載って初めて、皇后は誕生する。皇帝と同じ敬称を奉られるのは皇后のみで、皇帝の母であっても妃であれば皇統譜には載らず、皇族とは見なされない。
皇太子であられた頃ならいざ知らず、治天の君となられた御方が、その礎となる皇統の秩序を乱すことがあってはなりません、と箝口布の下からシェルは静かに諫めた。──初夜の翌朝に。
翌朝といっても、二度目に目覚めた時には日はとうに高く、長い初夜と後朝のせいで消耗しきっていたシェルの声に力はなかったが、その主張は受け入れられた。
「こうしてお側でお話しできることを楽しみにしておりました、シェル様」
「若輩の身です、どうぞシェルとお呼びください。サンドベリ大公閣下からお叱りを受けてしまいます」
「ご冗談を。本当なら、陛下とお呼びするところですのに」
「それは断じてなりません。ウルリカ様もご存知でしょう」
シェルの扱いについて、後宮では一悶着があった。
皇帝は自ら狩り入れた后を、自身と同様に「陛下」と呼ぶように通達し、それに真っ向から反対意見を述べたのがシェルだったのだ。
皇后冊立の儀で正式に立后し、皇統譜にその名が載って初めて、皇后は誕生する。皇帝と同じ敬称を奉られるのは皇后のみで、皇帝の母であっても妃であれば皇統譜には載らず、皇族とは見なされない。
皇太子であられた頃ならいざ知らず、治天の君となられた御方が、その礎となる皇統の秩序を乱すことがあってはなりません、と箝口布の下からシェルは静かに諫めた。──初夜の翌朝に。
翌朝といっても、二度目に目覚めた時には日はとうに高く、長い初夜と後朝のせいで消耗しきっていたシェルの声に力はなかったが、その主張は受け入れられた。
あなたにおすすめの小説
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。