【完結】后狩り

音羽夏生

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黒猫

1

 北海帝国の夏は、短くも最も美しい季節である。花々は力強い色彩を備えて咲き誇り、木々はのびやかに枝葉を茂らせる。
 つまり、森の狩猟場は緑豊かで、視界の効かない季節ということになる。
 皇帝とわずかな供回りで行われた狩猟会は、秋の狩猟シーズンに比べれば控えめだが、それでも十分な成果を残した。
 皇帝は馬術も射撃も得意とされ、皇太子時代から狩猟会の覇者として名を馳せている。今回もほんの数時間で、立派な角の牡鹿とよく太った雉二羽を仕留めて戻られ、大層満足気なご様子だった。

「褥から追い出した夫の働きに、褒美はあるのだろうな?」

 称賛と慰労の言葉で出迎えたところを抱き寄せられ、甘えるように問われても、シェルに拒むという選択肢などない。
 皇帝の勇壮さは、寝台でも存分に発揮された。
 その夜シェルは、一晩で十人の妃を相手にされたという逸話を、身をもって知ることになったのである。
 久しぶりに獲物を追い、狩猟と強奪を生業とした祖先の血が喚び起こされたのかもしれない。寝台だけではなく、湯殿でも、居間のソファでも、日が昇っても、皇帝は猛々しくシェルを求めた。
 合間に食事を摂り、ともに短い眠りに落ちながらの伽に果ては訪れず、意識がある間は常に肌のどこかを触れ合わせたまま、夜と朝と昼が過ぎ──また夜になり、朝を迎えた。
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