【完結】后狩り

音羽夏生

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怪物

3

 それにしても、皇帝が狩りに出掛けて不在の隙を狙い、離宮で留守を守る皇后を強引に訪ねるなど、ハルディスの情報収集力と行動力には舌を巻くしかない。皇帝の動向についてなら、一国の諜報機関をはるかに上回る精度である。

「シェルを我が皇后、クリスティーナを皇后付きの祭司として召し上げます」

 この姉の前でこれ以上の茶番は無用と判断し、エーヴェルトは勅を発する口調で告げた。

「ミレニオ王家の血を引く皇后が信仰する宗教を、帝国は尊重する。その姿勢を見せるために、皇后専用の礼拝堂を建てるつもりです。ミレニオには、帝国での地位を高める好機を与えますが、シェルの立后に異議を挟むことは許さない。娘ではなく息子を皇后とすることで、皇帝の婚姻は何者にも左右されず皇帝の意思のみにて決まり、ユングリングを娶ってもその血を皇統に入れるつもりはないと、内外に知らしめるのです。──シェルにもクリスティーナにも、子を成すなど許さぬことも」

 ただ命と身分を保証するだけで、ユングリングへの復讐には、お気に入りのシェルもその妹も含まれている──母妃と弟妹を殺したユングリングへの憎悪の深さに、ハルディスはわずかに目を見開いた。
 しかしそれは驚愕や同情を抱いたからではなく、弟の冷徹さを小気味よく感じたためだった。
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