【完結】后狩り

音羽夏生

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怪物

9

 后狩りの真の目的──十年以上燃やし続けた復讐の炎でユングリングを焼き尽くすために、狩りの獲物は一人では足りなかった。兄妹揃って手中に収めることで、悲願とも言うべき計画は動き始めた。
 シェルが憎き仇敵の息子であることに苦しんだ月日は、あと少しで完全に昇華される。
 憎悪と恋慕の板挟みとなり苛まれたあの痛みは、エーヴェルトに必要なものだった。シェルがユングリングの後継者であるからこそ、このはかりごとは成立するのだ。

「結婚の贈り物が一族の滅亡とは。新妻には早々に嫌われそうね」

 復讐の、もう一つの成立条件──後宮にいるのはクリスティーナだと、いささかも疑うことなく大公が信じること。そのためには世間を騙す必要があり、世間を騙すにはハルディスを欺く必要がある。
 壮大な計画の成就のためには、秘密を知る者は少ないほどいい。それについてはハルディスも同意するところだが、欺かれて面白くないことに変わりはない。弟に向けた言葉が皮肉めくのは、仕方のないことだった。

「幼い頃から虐げ、あまつさえ殺そうとした父親とその一族を討ってやるというのに? 禍根をすべて断ち妻の身を守るのは、夫たる者の務めですよ」
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