【完結】后狩り

音羽夏生

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侍童

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 二十年前、ミレニオ王女が皇帝ではなく大公に嫁いだのは、ミレニオとの同盟は締結したいが皇位継承への介入は不要という、帝国側の意思の表れだった。
 ミレニオ王国は、千年の都と謳われる美しい王都を持つ、由緒正しい大陸の要だが、国土は小さく国力も北海帝国の比ではない。どの時代も、後ろ盾となる庇護者を必要としてきた。その座を手に入れることで、いまだ蛮族呼ばわりされる国の格を上げたい帝国と、互いに利害が一致する。
 国策の政略結婚で生まれた、ミレニオ王家の血を引く大公家の嗣子。その婚姻もまた、様々な思惑と駆け引きによって決められ、個人の意思が入る余地はない。外遊に随行するにあたり、落胤騒ぎなどくれぐれも起こさぬように、父からも厳命されている。
 いまだ精通を迎えていないのに落胤騒ぎもないのだが、それだけシェルの体を流れる二つの血には価値があるということなのだろう。

「この国の貴族は、古く尊き血筋に連なる方々です。友情は育みたいと思いますが、妻となる方を決めるのは、私ではございませんので」
「……妻? そんな話が出ているのか?」

 軽口も叩く朗らかさの一方で、皇太子は時々、喉元に白刃を突き付けるような冷ややかさを見せ、態度を急変させる。――普段は隠しているユングリングへの復讐心が、突如噴き上がったかのように。
 今がまさに、その時だった。シェルはこくりと小さく唾を飲む。
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