【完結】后狩り

音羽夏生

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侍童

17

 強い圧迫と、口を塞がれ呼吸を止められたつらさに、シェルの顔が苦悶に歪む。その間も、口の中の生き物は傍若無人に動き回り、シェルの舌に絡みつこうとする。嫌悪感から必死に避けようとするが、そのたびに舌の裏に入り込み、口蓋を撫で擦り、堪えきれずに浮いた舌を悠々と嬲る。
 ちゅぷ、くちゅ、と湿った水音が耳を打ち、別の生き物に舐め溶かされる錯覚に陥ったシェルの眦に、じわりと涙が溜まっていく。

「ふ、んぅっ」

 苦しさのあまり呻きが鼻から洩れ、鼻で呼吸できることを思い出したのと同時に、締め付ける力が緩んだ。塞がれていた口も解放され、目を瞑ったまま、目の前のものにくったりと凭れて肩で息をするシェルの頬を、大きな何かが撫でる。
 びくっと竦んで見上げた先には、皇太子の顔。その胸に縋る形で息を整えていたことに気づき、あまりの不調法にシェルは蒼白となった。

「……あ、殿下、申し訳ございません……っ」
「すぐに言いつけを破る悪い口は、こうしてやる」

 身を起こす前に背に腕が回り、そのまま引き寄せられた。見つめ合う顔が再び近づき、茫然としながらも深い氷青の目を見ていられず、シェルはぎゅっと目を瞑る。熱い息が頬を掠めたかと思うと、次の瞬間には唇を熱で塞がれていた。
 見えなくても、今度はわかる。――唇が、重なっている。
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