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入宮
13
「──ここ数日、俺を避けているな」
「そのようなことは、決して」
後ろめたさに、お顔を見られず目を逸らすことはあっても、避けるようなことはしていない。講義のお供を仕り、身の回りのお世話も言いつけられた御用もすべて承り、つつがなく務めを果たしてきたつもりである。
それでも不審に思われたのは、ひとえに自身の至らなさのせいだ。シェルは自己嫌悪に唇を噛み締め、深々と腰を折った。
「私が至らず、殿下にはご不快な思いを……」
「そんなに俺に触れられるのが嫌だったのか」
謝罪を遮り、皇太子は冷たく続ける。
「顔もまともに見たくないほど、断りなくお前に口づけた男を許せないか」
「滅相もないことでございます」
仰天するあまり、謝罪の途中でシェルは顔を跳ね上げた。まさか、未熟な自分の態度が、そのような誤解を招いていたとは。
申し訳なさに頭をいっぱいにしながら、シェルは言葉に偽りがないことを証明するために、真っ直ぐに皇太子を見つめた。
「殿下がお望みでしたら、触れていただくのに何の支障もございません」
「嫌がる者に無理強いする気はない。だからもう怯えるな」
「あの、本当に嫌ではございません」
畏れ多くも皇太子の言葉を遮り、シェルは懸命に弁明した。
「殿下に、その、……口を吸っていただいて、私は殿下のお役に立てる体になりました」
「……何のことだ」
面食らったように、皇太子が長椅子から身を起こす。
「そのようなことは、決して」
後ろめたさに、お顔を見られず目を逸らすことはあっても、避けるようなことはしていない。講義のお供を仕り、身の回りのお世話も言いつけられた御用もすべて承り、つつがなく務めを果たしてきたつもりである。
それでも不審に思われたのは、ひとえに自身の至らなさのせいだ。シェルは自己嫌悪に唇を噛み締め、深々と腰を折った。
「私が至らず、殿下にはご不快な思いを……」
「そんなに俺に触れられるのが嫌だったのか」
謝罪を遮り、皇太子は冷たく続ける。
「顔もまともに見たくないほど、断りなくお前に口づけた男を許せないか」
「滅相もないことでございます」
仰天するあまり、謝罪の途中でシェルは顔を跳ね上げた。まさか、未熟な自分の態度が、そのような誤解を招いていたとは。
申し訳なさに頭をいっぱいにしながら、シェルは言葉に偽りがないことを証明するために、真っ直ぐに皇太子を見つめた。
「殿下がお望みでしたら、触れていただくのに何の支障もございません」
「嫌がる者に無理強いする気はない。だからもう怯えるな」
「あの、本当に嫌ではございません」
畏れ多くも皇太子の言葉を遮り、シェルは懸命に弁明した。
「殿下に、その、……口を吸っていただいて、私は殿下のお役に立てる体になりました」
「……何のことだ」
面食らったように、皇太子が長椅子から身を起こす。
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