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黒猫
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あの青と茜色の壮大な移ろいより広い空など、この世にはないと思っていたが、皇帝はこの湖の空をお気に召されているようだ。
主が広いと言う空を見上げ、その眩しさに手をかざせば、いつの間に用意されたのか、白い日傘が差し掛けられる。こうして徹底的に愛猫を甘やかすことでお気が済むのなら、素直に甘えるのが猫の務めである。
シェルは主の胸に身を擦り寄せた。鋭く光を弾いていたメダルが、日傘の下で翳る。
本来であれば、恋人同士のロマンティックな贈り物となるメダルは、同じように皇帝のお気持ちの表れだったが、最早それだけのものではない。ユングリング兄妹の命運を担保するものであり、それゆえに主従の関係を、飼い主とその猫へと明確に繋ぎ変えるものでもあった。
皇帝の贈り物がもたらすのは、確かに愛されているという身に余るくすぐったさと、それなのに置かれている足元がまるで見えない不安。
(それでも、今はこれをお守りと思うしかない)
そっと握ったペンダントは、主の名を刻んだ名札付きの首輪だ。
その日ユングリングの黒猫は、身動きが取れなくなる皇帝の首輪を、自ら嵌めた。
主が広いと言う空を見上げ、その眩しさに手をかざせば、いつの間に用意されたのか、白い日傘が差し掛けられる。こうして徹底的に愛猫を甘やかすことでお気が済むのなら、素直に甘えるのが猫の務めである。
シェルは主の胸に身を擦り寄せた。鋭く光を弾いていたメダルが、日傘の下で翳る。
本来であれば、恋人同士のロマンティックな贈り物となるメダルは、同じように皇帝のお気持ちの表れだったが、最早それだけのものではない。ユングリング兄妹の命運を担保するものであり、それゆえに主従の関係を、飼い主とその猫へと明確に繋ぎ変えるものでもあった。
皇帝の贈り物がもたらすのは、確かに愛されているという身に余るくすぐったさと、それなのに置かれている足元がまるで見えない不安。
(それでも、今はこれをお守りと思うしかない)
そっと握ったペンダントは、主の名を刻んだ名札付きの首輪だ。
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