后狩り

音羽夏生

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偽妃 ※

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 皇后をこんな形で拘束するなど、死罪に当たる不敬であり、尋常ではないことは明らかだ。後宮の掟も箝口布が外されていることも、構っている余裕はなかった。

「無論、断種でございます」
「…………陛下は、……その必要は、ない、と……」

 震える声を一顧だにせず、冴え冴えと冷徹な目付きで女官長は答えた。

「後宮の者たちは、医官、宦官は勿論、妃も女官も、みな何かを奪われてここにおります。貴方様だけが何も失わずに、女の最高の御位に座るおつもりなのですか」

──また、だ。
 覚悟を問われているのだ。
 後宮に残り皇后となる地獄と、ご叡慮に背く地獄。どちらを選ぼうと、それが地獄である限り、相応の覚悟と犠牲が必要なのだ。
 シェルには迷いがあり、後者を選んでも覚悟がなく、今日に至るまで自分の初恋にも思い至らなかった。
 その迷いを糾弾するかのように、犠牲を強いられ後宮の住人となった者たちが、シェルに覚悟を強いる。
 しかもそれは、御旨だという。

『我が妻は四ヵ月の間よく努め、ついに真の皇后となる準備が整った』

 昼下がりのお言葉が蘇る。
 雄の生殖機能を封じ、女体の如く感じるように躾けられたのも、この日のため。名実ともにシェルを、子を成さない皇后──そしておそらく、ユングリングの血脈を絶やす偽妃にするためだったのだ。
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