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悪童の流儀(1)
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どこからかひらひらと舞い降りたその言葉を、何となく嬉しく思えないのは何故だろう。
自分が看護人失格なのか、ジェイムズが病人失格なのか、もはや考えるのも虚しい。
「誘いに乗っていたら、今ここにいるはずがないだろう。詳細については午後の打ち合わせで話すおつもりだったようだから」
「…君は、それでいいのか」
一瞬前の激情を放り出し、レジナルドの痛みを計るように、秘密を訊ねるように声を潜めたジェイムズは、やはり貴族なのだと思う。
一族の誇りの源、由緒ある地所を奪われ、ホテルに改装されてしまう。その言動は規格外だが真の貴族である彼には、耐え難いことに違いない。
しかしレジナルドにとって、旧ケイリー伯爵邸は痛みと寂寥感を生み出しこそすれ、昔日の面影を偲んで惜しむ対象にはなり得ない。
何でもないという風に首を振ると、ジェイムズは重ねて訊ねてくる。
「何と言って断ったんだ」
「旧ケイリー伯爵邸より君が大事だと言ったんだよ」
デュシュッド氏はジェイムズと旧ケイリー伯爵邸を秤に掛けるような言い方をしていたから、結果的にはそういうことだろう。
自分が看護人失格なのか、ジェイムズが病人失格なのか、もはや考えるのも虚しい。
「誘いに乗っていたら、今ここにいるはずがないだろう。詳細については午後の打ち合わせで話すおつもりだったようだから」
「…君は、それでいいのか」
一瞬前の激情を放り出し、レジナルドの痛みを計るように、秘密を訊ねるように声を潜めたジェイムズは、やはり貴族なのだと思う。
一族の誇りの源、由緒ある地所を奪われ、ホテルに改装されてしまう。その言動は規格外だが真の貴族である彼には、耐え難いことに違いない。
しかしレジナルドにとって、旧ケイリー伯爵邸は痛みと寂寥感を生み出しこそすれ、昔日の面影を偲んで惜しむ対象にはなり得ない。
何でもないという風に首を振ると、ジェイムズは重ねて訊ねてくる。
「何と言って断ったんだ」
「旧ケイリー伯爵邸より君が大事だと言ったんだよ」
デュシュッド氏はジェイムズと旧ケイリー伯爵邸を秤に掛けるような言い方をしていたから、結果的にはそういうことだろう。
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