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第一話 前編
臼井と神 2
しおりを挟む臼井誠の正面から、見下ろすようにして立つ女性は微笑んだまま、次の言葉を続けようとしない
黒髪に白い肌、目鼻口が大きく、一度会ったら忘れなさそうな、まさに美人だ
三十代あたりだろうか、もう少し若くも見える
スーツ姿と姿勢の良さがまるで秘書のようだ
外周りの営業というより、社長室の前に居そうなイメージが浮かぶ
自分には一生関わることのないはずのタイプ、それだけがハッキリしていること
「あなたは、神を信じますか?」
秘書タイプの怪しい女性がまた口にした
臼井誠はイヤホンを片側だけ耳から外して応える
「僕の神様は、アプリの中にいます」
女性は大きな目をさらに開ける
臼井誠は怒られると思った
「あなた、もう神様とつながっているの?」
「はい?」
違っていた
「もう」とはどういう意味か
女性は臼井誠の言葉を受け止めてくれた
それが分かった
そして、興味を持ってきた
それも次に分かった
この女性は新興宗教の勧誘員、間違いないはずだ
ただ、かなり洗脳が強め、危ない精神を持ち合わせているのかもしれない、と予想している
洗脳が強めな危ない精神を持ち合わせている怪しい秘書は、臼井誠の隣に座ってきた
嫌だった
ただの女性なら嬉しいが、洗脳が強めで精神が危なくて怪しいさを隠さずに言葉にして神を勧誘してくる秘書だから、嫌だ
「その、神様について教えてください」
明るい顔で真横から言われると、自分の隣に座っているのは十代の少女ではないのか、と錯覚しそうだ
「神様って言っても、音楽の神様です。僕の中ではね。エリック・クラプトンって知りませんか?」
「いいえ」
「ジェフ・ベック、ジミー・ペイジと並ぶ、世界三大ロックギタリストです」
「そうですか」
「クラプトンは息子を亡くしているんです」
「貴方も死にますよ?」
「その息子を想って作った曲があって…え、今なにか言いました?」
「はい、貴方はもうすぐ死にます」
「え、あの…それも宗教的な話ですか?」
「いいえ、貴方は死にます。だから私が神様を紹介するために派遣されたんです。あ、私、こう見えて人間じゃないんですよ?」
「……あ~……え~っと」
バス、まだかな
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