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第五話 前編
臼井と犬神の能力乱用 5
しおりを挟む「確かに里美は私の姉の名前。どこで会ったって?」
犬神絵美は落ち着いたトーンで聞いてきたが、怒りを堪えているような気もした
「今朝、バス停で声を掛けられました。服装は会社員のような格好で…」
顔の特徴や服装、話し方などを細かく伝えてみた
犬神絵美は視線を少し離れた所へ向けていた
話を聞き終えると「姉は2年前に死んでる」と、臼井誠へというより、自分に言い聞かせているような口ぶりだった
「そういえばさっき電話をしていたけど姉と電話ができるの?」
「はい、不思議なことに。電話番号もないのに通話可能です…電話、してみますか?」
スマホを取り出して、犬神里美の名前が載る電話帳の画面を犬神絵美に見せる
しかし、犬神絵美は、眉間に皺を寄せて画面に顔を近づけるだけで驚かない
遠視なのか?
「あの、一番上に表示されてますけど」
「一番上にあるのは、臼井龍太郎じゃん。五十音順だったら下に表示されてんじゃないの?」
臼井誠はスマホを自分の方へ向け、画面を見る
確かに一番上には、犬神里美の名前が表示されている
まさか、自分しか見えないのか?
そうなれば、この後も不安になってくる
「とりあえず、電話してみます」
通話ボタンを押し、すぐに犬神里美に繋がる
相変わらず、繋がった相手の声を聞くと不思議で不気味だ
この世に居ないのだから、何度電話をしても慣れるわけがない
「どうしました?臼井さん。初日とは言え、ずいぶん電話が多いですね~」
「すみません、あの、大事な要件で電話しました。驚くかもしれませんが」
「はい、いいですよ」
「僕の横に今、あなたの妹がいます」
「それは驚きました。初日なのに、もう私の妹と接触したんですね、凄いです」
なんて呑気な返事だ、臼井誠は肩透かしに合う
「それで、ぜひ妹さんと電話をしてもらいたいのですが」
「あら、それは無理ですよ」
「何故ですか?」
「この通話は臼井さんしかできないからです。画面に表示される私の名前も、他人には見えないようになっていますから」
やはり通話はできないのか、不安が的中した
すると次の瞬間、耳に当てていたスマホを犬神絵美が奪い取り、自分の耳に当てる
耳を澄ませ、声に注意を払っているようだ
「何も聞こえてこない」
「やっぱり」
「は?一回殴って良い?」
耳からスマホを離して臼井誠を睨みつける
「いや、さっき犬神里美さんが言ってたんです。僕にしか分からないみたいで、それ知らなかったんです」
それを聞くなり、犬神絵美は「はい」とスマホを優しく返してくれ、さらに意外な提案をしてきた
「いつもの私なら、既にあんたを何発か殴ってるかもしれない。けど今日は私も色々あってさ、普通でいられないんだよね。こうやって喋ることも珍しいし…だから、最後のチャンス。私からの提案。あんたが姉と電話をして、私と姉しか知らないようなことを聞き出せたら、その電話、信じるかもしれない」
「分かりました」
陽が傾く空を飛行機が通過する
あの世と繋がる電波は乱れてないだろうかと心配した
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