Change the world 〜全員の縁を切った理由〜

香椎 猫福

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第五話 前編

臼井と犬神の能力乱用 6

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改めて、耳にスマホを当てる


「もしもし、犬神さん?」


「はい…どうされました?」


なんだか明るさがなくなったな、と感じた


「妹さんがこの電話を信用するためには、犬神さん姉妹しか知らないことを僕が聞き出す必要があります。協力してくれますか?」


「はい、いいですよ」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


犬神絵美へ視線を向けると、臼井誠へというよりスマホをじっと見ている
膝に置いている両手はまるで祈るように組まれていた


「さっき、あなたが妹の絵美へ電話を渡した時、久しぶりに声を聞けました。怒っている声でも、私が知っている絵美の声に違いはありません。あ、ちなみに私、こう見えて成仏してますから」


笑う犬神里美の声に、あの一瞬の暗さは妹に会いたくても会えない、悲哀の表れだった
それは、死後にも愛情が消えることはないと教えてくれている


「…そうだ、犬神さん。犬神さんの言葉を妹さんが聞けるように、復唱させてください。ぜひ、電話の言葉を届けたいです。今の言葉も」


「…いい人ですね、臼井さん」


「いえ、ただの気まぐれです」


「そうですね、死期が近いですから」


怒りをぐっと堪える
とりあえず、犬神絵美へ今のやりとりを伝えた
感動してくれるかと思ったが、リアクションは無い、静かに了承するだけだ
無理もない、犬神絵美からすれば、まだ信用できない状況だ


「じゃあ、犬神さんが思い付くエピソードを教えてください」


しかし、犬神里美から応答がない


「もしもし?犬神さん?」


「すみません、臼井さん。どうやら、私から生前の話をすることはダメみたいです。まるで、成仏してないように捉えられてしまうみたいです。できることは、妹の絵美から一つだけ、質問を受け付けることです」


今の話を犬神絵美へ伝え、臼井誠は仕方なく「分かりました」と応えた
犬神絵美は下を向いて深く考え込みはじめた
彼女の立場になって考えれば、なかなか信じることは難しい状況だ
しかし、何か直感でもあるのだろうか
すごく前向きに、この状況に付き合ってくれている
犬神絵美を味方にする最後のチャンスだ
失敗はできない
ただ、自分は何もできることがない
姉妹のやり取りを見守ることだけだ
犬神里美が答えられなければ、電話は終わり、犬神絵美は自分を殴り、二度と話もできないだろう
先ほどより、辺りが薄暗くなっている
そしてここで、ようやく犬神絵美が口を開く


「小さい頃、泣いていた私に、姉さんがよく与えてくれたもの。それを答えて」


なんだそれは
なぞなぞ?
臼井誠は愕然とする
そんな質問を最後のチャンスにしていいのだろうか
しかし、もう時間がない
意を決して、犬神里美に質問を投げかける
なぜか彼女は笑った


「どうしました?」


「ごめんなさい、あまりにもビックリして、懐かしくて…そうですか、絵美はそんなことを大切にしてくれているんですね…知りませんでした。臼井さん、答えは、苺味の飴です。白い袋に入った、三角形の飴。それをよく、2人で食べていました」


臼井誠は、犬神里美の言葉をそのまま、犬神絵美へ伝える
ついに外灯が灯されるほど暗くなり、周囲の民家は部屋の明かりをつけ始めた
結局、忘れられた公園には誰も来ずに静かなまま
臼井誠には、一人の女性の涙を隠すにはちょうどいい暗さに思えた


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