Change the world 〜全員の縁を切った理由〜

香椎 猫福

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第五話 前編

臼井と犬神の能力乱用 8

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遅刻しました、申し訳ありません、と犬神絵美には言って欲しい
既に約束の時間を30分以上過ぎている
ショッピングモールの出入口の外でベンチに座り待っていると、型の古そうな白いジープが目の前に停まった
助手席から降りてくる犬神絵美、それを笑顔で見送る短髪サングラスの男、2人はこちらに見向きもしない
ドアを閉め、手を振り見送る犬神絵美に、男は手を振りながら車を動かす
来客が増え出した駐車場を、案外ゆっくりと気を配りながら進む白いジープ、それを姿が見えなくなるまで、犬神絵美は見送っていた
すぐ後ろに待ち人がいるんですが、と声を掛けたくなるほど臼井誠は後回しにされている
ようやく振り返り、こちらに視線を向けて歩いてきた
その表情に悪びれる様子はない
ジーンズを履いて動きやすい格好の犬神絵美は、活動意欲に満ち溢れているようにも見える


「あら、早かったのね」


「遅刻です」


「女の時間を拘束する男は嫌われるよ」


「別に、好かれようとはしてないので」


2人で店内へ入り、そのままあてもなく歩き進んでいく
平日のショッピングモールはストレスが少なくて好きだ
2人で並んで歩いていても避ける必要がないほど、人が疎らで見通しも良い


「さて、ここで能力とやらを見せてもらおうか」


「昨日説明したとおり、能力を使う瞬間は見えないので、前後の違いをちゃんと確かめてくださいね」


「そうね…じゃあ、まずは店員で確かめさせて。できるんでしょ?」


「はい。あの、まずはって何ですか?一人見せたら十分でしょ」


「たった1人で信用なんかできるわけないじゃん。あんた、自分のキャラ分かってる?そんな地味キャラは、大勢の知り合いがいるわけないでしょ?そこを覆して大勢の知り合いが、こんなショッピングモールに溢れてる様子、それを見せて初めて信用もらえるんじゃん!」


「なぜ店員から?道行く人の方が当たり障りないはずでは…雉本穂希のように、立花桃に関係する出会いがあるかも」


「あんたのような負け組は黙ってなさい。それに、私はまだ能力を信じてない。だから、これをしたら信じるっていう提案をしてるの。それを忘れないように」


犬神絵美がアイスクリーム店の前で止まる
すぐに店員がショーケース越しに接客をしてきたが、犬神絵美はその店員へショーケースの前を指差し、何か文句を言って呼び付けた
まさか、店員をここに連れ出して、自分に触れさせるのか?
臼井誠の予感は当たり、店員がこちらへ来る前に犬神絵美から「すぐ能力をかけろよ」と念を押された
計画もなく、すぐに行動というスタイル
犬神絵美のスピードにこの先もついていけるか心配になる
帽子を被った若い女性店員が犬神絵美のもとへ近寄り、臼井誠に背を向ける格好で2人が軽く屈んだ
その後ろから、すぐに臼井誠が手を伸ばして触れる
「おかえり」と呟いて、離れると記憶に名前が書き込まれた


「終わった?」と犬神絵美が確認する
「はい」と臼井誠が返事をする
「あら、臼井さん」と橋本夏海が驚いている


「あなた、臼井の友達?」


犬神絵美が橋本夏海に確認をとった


「まあ、そんなところですかね。もしかして彼女さんですか?」


橋本夏海はやたら嬉しそうだ


「まさか!金払われても嫌だよ」


そこまでの拒絶に傷付く臼井誠
それを他所に話を続ける犬神絵美
どうやら能力を信じている様子だ


「ところでさ、臼井の友達ならサービスしてくれるよね?」


なるほど、店員から能力を試させる、本当の狙いはこれだ
今から時間が許す限りに繰り返す、犬神絵美の買い物が始まるのだ
立花桃は全く関係がない!
なぜ待ち合わせ場所を此処にしたのか、きちんと聞いておくべきだった
これは犬神絵美による能力の乱用だ
頭を抱える臼井誠を他所に、犬神絵美は「え、無料でトリプルにしてくれるの!?」とはしゃいでいる





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