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第六話 前編
亀田と猿渡
しおりを挟む「じゃあな~」
校門前で手を振る友人達と別れ、亀田留衣は駅前通りを目指して歩く
同級生の大半は今から部活動に励み、最後の大会へ向けて汗をする時間だ
自分は早くから受験生として扱われる、一般学生
学校内でクラス以外のコミュニティ、居場所があるのは、正直、羨ましい
学年を越えた繋がり、きっと卒業してからも続くのだろう
習い事やアルバイト、それにSNS、クラス以外の居場所を求めるなら他にも多くある
それでも、部活動は羨ましい
学生時代しかできない、期間限定の居場所は中学時代で終わった
高校3年生になって、こんなことを考える自分は少々ネガティブになっている
大人の世界が見え始め、子供の世界に終わりが見えてきた不安が、後悔をしないように毎日を過ごしたい、と願う自分の心に気付けているからだろうか
亀田留衣はアルバイトをしている
それは、家庭に稼ぎを増やしたいという亀田留衣が決めていたことだ
今では学校とアルバイトの両立には慣れているし、大人との接し方も学んできた
最初のアルバイトはリサイクルショップで、すぐに辞めてしまった
その後に弁当屋を長く勤め、今はガソリンスタンドでアルバイトをしている
スマホで時間を確認する
余裕で電車に間に合う時間だった
いつも通り、亀田留衣はそう安心していた
しかし、駅前通りに入る直前で、角に立っていた男から声を掛けられ立ち止まる
「君、亀田留衣くんだろ?」
大学生にも社会人にも見える若さがあり、黒基調ではあるが亀田留衣にも伝わってくるほど、高そうな素材を身に纏っっている。
ただ、顔つきが自分を見下してきてる気がして、苦手なタイプだ
「いえ、違います」
亀田留衣は男の横を避けるように再び歩き出す
後ろから、すぐに歩きついてくる男は、横に並びながら声を掛け続けてきた
「間違いないって、亀田くんだろ?」
「違います、ついてこないで下さい」
「あ、自己紹介しないタイプ?学校から厳しく言われてんだね~。わかったわかった」
「自己紹介されても名前は教えません」
「それでも自己紹介させてもらうよ。俺は、猿渡慎吾。猿渡グループの人間だよ」
亀田留衣は、聞いたことある名前だなと思ったが、無視をした
「別に、君が名前を言わなくても俺が知ってるから良いんだけどさ。君が働いていたバイト先、うちのグループ内の店だから、履歴書の顔写真と防犯カメラの映像で頭に入れてんだよ、亀田くん」
駅前通りで歩く人達は、高校生が大人に付きまとわれているとは思わないのだろうか。
視線を向けてくる人がいない。
それもそのはず、隣を歩く猿渡慎吾は、不自然さを見せてないのだ。
決して顔を覗き込まず、視線を前方かスマホに向けながら歩き、歩調が亀田留衣と全く同じだ
人を避ける時は後ろではなく、亀田留衣の前へ出て避けている
まるで年下を周囲から守りながら歩く年上の先輩、他人からそう見られているかもしれない
亀田留衣は、大人の怖さを改めて思い知らされた
早く改札を潜りたい
この男は危険だ、自分の直感が伝えてくる
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